ハードボイルド書店員が「町の本屋さん」に置いてほしいもの
都内某所の書店へ行きました。
店内をゆっくり回るうちに、ふと読みたい本を思い出しました。
著者は「犯罪」「罪悪」「コリーニ事件」などで知られるフェルディナント・フォン・シーラッハ。刑事事件弁護士のキャリアを活かした作風と落ち着いた文体が特徴です。
オススメをひとつ挙げるなら、戯曲形式の↓でしょうか。
旅客機をハイジャックし、サッカースタジアムに墜落させて7万人の観客を殺害しようと目論むテロリスト。しかし緊急発進した空軍少佐が独断で同機を撃墜し、7万人を救う代わりに乗客164人を犠牲にする。彼は罪に問われるべきか?
一見「トロッコ問題」に近いテーマですが、もう少し事態が込み入っていて判断が難しい。ふたつの結末が用意されているので、それらを叩き台にしてぜひ自分なりの判決を出してみてください(私の見解は読書メーターのレビューに書いています)。
話を戻しましょう。シーラッハの本はどこかなと文芸書コーナーをチェックしました。しかし見当たらない。新刊・話題書の棚にも置いていない。ようやく気づきました。外国文学の単行本が1冊もないことに。
ショックでした。
チェーン店ですが、広さは典型的な「町の本屋さん」。おそらく文庫とコミック、雑誌、あとは文具が売り上げの中心でしょう。しかし独特の品揃えで勝負するセレクトショップ系はともかく、通常の業態で外文ゼロは珍しい。潔いと感じる反面、やっぱりもったいない。ファンは確実にいますから。
たとえば文芸書の棚の隅に「ハヤカワ・ポケットミステリー」のコーナーをしれっと設けてはどうでしょう? 大型書店ですらあまり置いていないシリーズなので購買層を広げるチャンスです。
もし↓を仕入れてくれたら、私が買いに行きます。
72歳のフィリップ・マーロウ。減らず口と長いものに巻かれない性格は健在なのでしょうか? 気になる方はぜひ。