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「書店における理想の棚」=「プロレス王のプロレス」
「もっと間引いた方がいい」
ビジネス書担当になった頃、店長にそう言われました。
当時の私は「たくさんの本を置けばお客さんの目に留まる率も上がる」と考えていました。ゆえにほぼ棚差しにし、ギュウギュウに詰めていたのです(指一本入れられる隙間は作りましたが)。
でも店長いわく「入ってきた本を漫然と置くだけではつまらない」「数を絞って面陳したり、並びに関連性を持たせたりする方が結局売れる」とのこと。
当たり前じゃないかと思いますよね? でも実行できているお店は多くない。簡単じゃないからです。
人手不足の時間不足。しかし入荷量は増えている。売れていないものを機械的に抜き、空いた場所へ補充分と新刊を詰める。外した本は取次に返すか、その手間すら惜しんでストッカーへ放り込む。
一応これで最低限の品出しを終えたことになるのです。先発投手が5回を投げたようなもの。本当は満足しちゃいけない。でも忙しさゆえについ習慣化してしまう。
一方、プロレスリング・ノアの後楽園大会でおこなわれた拳王 vs 鈴木みのるは真逆でした。まさに「技を間引いた」一戦だったのです。
みのる選手が25分を超える激闘のなかで出したのは、エルボー、キック、アームロック、そしてスリーパーホールドぐらい。これだけで1488人を大熱狂の渦へ巻き込んでしまう。
なぜそんなことができるのか?
たぶん、どの技にも魂を込め、一度たりとも雑に選んでいないから。長年のキャリアで磨きに磨きをかけたがゆえの自信と説得力を備えているから。
書店における理想の棚も同じかもしれません。じっくり吟味した良書やいま紹介したい本だけを並べれば十分。大型書店でそれをやるのは現実的には難しい。でも多少なりとも近づけることはできるはず。
仕事を見直すいいキッカケをいただきました。みのる選手、やはりあなたはプロレス王です。ありがとうございました。
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