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Vol.5:オンライン販売や電子書籍台頭が原因ではなく、何もしないのが原因
毎年多くの本屋が閉店したことで約1000万店までになった。
全盛期の半分以下である。
本屋が無くなっている原因としてよく言われるのが、“オンライン販売”や“電子書籍の台頭”である。他には、“読書離れ”などがある。
確かに原因の“ひとつ”ではあるが、“全て”ではない。
こうした要因が、『悪』であるかのように言われるが本当にそうだろうか。
僕はそうは思わない。むしろ良いと思っている。
消費者(読者)にとって、選択肢がいくつかあることは望ましいからだ。
オンラインで注文すれば、最短で翌日には届くし、電子書籍ならスマホでも読めるので、早いし荷物にならない。
読書離れと言っているが、昔の人は良く本を読んでいて今になって読まなくなったということはない。
元々読まない人は読まないし、読む人は読むのだ。
時代の変化に合わせて便利になることは良いことではないか。
本屋が減っているのを、時代や環境の変化のせいにするのは間違っているのではないだろうか。
もちろん業界の構造問題も原因と言えるだろう。
それに、外部要因のせいだとあれこれ言ったところで現状は変わらない。
では、多くの本屋が閉店に追い込まれる原因はどこにあるのだろうか。
多くの本屋を訪問した僕が思う最もな理由は、本屋自体が“何もしなかった”ということだ。
実際に本屋の経営者や店長に伝えると、「何も知らないやつが勝手なことを言いやがって」と何度も言われた。
具体的に何をやったのかと聞いても本の陳列や棚替え、雑貨の扱い、カフェの併設と言われる。
いわゆる『どこの本屋でもやっている』ことである。
そうなると、お客の立場からすると“その本屋に行く意味がない”のである。
POPなどで本の紹介をしたのか?
顧客のニーズに合わせた本を扱ったのか?
イベントなどを実施したのか?
SNSなどを使って顧客獲得の発信をしたのか?
上げればきりがないが、閉店した本屋が“やっている”というのは、今すぐできる目に見えるものだけであり、その本屋に来てもらうためのものではなかったのだ。
それであれば当然であると言えば当然である。
仮に、やったにも関わらずAmazonや電子書籍の台頭、業界の構造による低い利益率が原因というのであれば、全ての本屋が赤字になり、日本から本屋が無くなっているはずである。
現に、紀伊國屋書店は連結・単体で過去最高売上と利益を出しているし、大垣書店も増収増益となっている。
それだけでなく“独立系書店”と言われる個人経営の本屋は、毎月に6~10店舗オープンしている。
外部要因を知りながら始めようとするのはとてつもない覚悟が必要となる。
挑戦したからこそ生き残ることができ、挑戦することをしなかったから潰れたと言えるのだ。
つまり、閉店に追い込まれたのは“何もしなかった”からだと言える。
僕は、本屋に対して文句を言いたいわけではない。
無くてはならないと言われる本屋にして欲しいとう願いがあるのだ。
全国の書店を回った僕だからこそ、本屋には特別な思い入れがあるのだ。
頑張って生き残ってほしいと思うのだ。
「本屋が無くなっても困らない」という人が、「本屋はやっぱり必要だよね」と言えるような本屋が増えて欲しいと思う。
本屋がオンライン販売も異なる一番の違いは、【目的の本以外の本と出会い】があることだ。
そうして出会った本から新たな興味や知識を得ることができ、人生の転機になることもある。
また、本屋は本を通じて、人と人を繋ぐ役割も担っている。
そして、地域社会に対して様々な価値も提供している。
本を読むことの大切さであったり、人生を変えるような本との出会いが体験できる場作り、独自の取り組みによる差別化など、本屋としてやるべきことを真剣に考えてやることが生き残るための最善策ではないだろうか。
そうした本屋を私も応援するので、迷った時や困った時は「助けて」と声をかけてください。
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