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2020年4月の記事一覧

樹上の猫は消えたのか?Did the cat on the tree disappear?

『猫を棄てる』(村上春樹著)が一冊の本になりました。一冊の本になる前から文藝春秋の誌上で読んでいました。今回一冊の本になり再読しました。一人の読者としても、いろいろと考えさせられました。それを書くことが「感想文」になればと思います。何といってもタイトルです。自他ともに認める猫好きの村上さんが「棄てる」のです。そして「父親」について語るのです。これまでも村上さんのお父さまについては、村上さんのスピー

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永沢さんには、なれないよ。I can't become Nagasawa san.

『ノルウェイの森』(村上春樹著)の後半のところで、先輩の永沢さんが主人公の僕に忠告します。

「自分に同情するな」「自分に同情するのは下劣な人間のやることだ」

20代でこの忠告を読んだ時、時代も私も元気だったからか、永沢さんの潔さに惹かれていたからなのか、「異議なし!」と賛同しました。それから私も年を取り(時代のことはわかりませんが)元気がなくなってきて、穏やかさを求めるようになりました。そして

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それぞれ生きるのに忙しいけど、ときには、お互いが愛おしくなる。 Each is busy living, but sometimes they love each other.

『うらなり』(小林信彦著)という小説を読んだことがありますか? 『坊っちやん』(夏目漱石著)の登場人物の一人、うらなり(英語教師・古賀)を主人公にした小説です。『坊っちやん』で語られた、さまざまな事件や人間関係を、うらなりの視点から語り直しています。そして、うらなりの後日談も語られています。ご興味のある方は、ぜひご一読ください。この本には「創作ノート」も収録されているので、創作裏話も興味深く読むこ

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その後、坊っちやんは大丈夫? After that, is Bocchan all right?

親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりして居る。

この1行目(夏目漱石『坊っちやん』)を知らない人は少ない。

ご存知、坊っちやんは四国辺のある中学校で数学の教師として赴任するが、いろいろあって東京に帰ってくる。この小説の大半は、そのいろいろを語っている。あだ名に負けない個性的な登場人物たちが、それぞれに絡み合い、さまざまなドラマを演じる。まるで講談のように、まるで落語のように…。読者は老若男女を

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自分の弱さは好きですか? Do you like your weaknesses?

私はとても弱い。

『羊をめぐる冒険』村上春樹著
物語の終盤で、語られる言葉。
「俺は俺の弱さが好きなんだよ。苦しさやつらさも好きだ。(中略)どうしようもなく好きなんだ。(後略)」

初めて読んだ二十歳のころよりも、今の私の、心に染み入る。自分の弱さを見つめて、受け入れることが、他者への理解につながると信じたい。

今こそ世界が利他主義へ向かうことを願う。

I'm very weak.

"A

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この本は私を何度も助けてくれる。This book helps me many times.

『人生は苦である、でも死んではいけない』岸見一郎著。
成功に代わる人生の目標とは? その答えが書かれている。
今を生きにくい、すべての人へ。

"人生は苦である、でも死んではいけない(Life is hard, but you must not die)," by Ichiro Kishimi.
What are the goals of life instead of success? The

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