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覚書

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わたしが消えたくなった夜のための
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独白

独白

 あなたに手紙を書けたらいいのに、と思う。

 わたしが時間をかけて書いた文章のほとんどは、誰でも見れる場所に投げ込んでばかりいる、だってこの言葉を、同じくらいの深度で受け止めてくれるひとが、いつ、どこにいるかわからない。たった一人のために丁寧に宛てた言葉をひとに贈っているうち、わたしの熱量を上回って受け取ってもらえることは自分が期待するほどあることではない、と感じることが増えた。だからやっぱり、

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たからもの

たからもの

 なにかの拍子に自分の幼少期を思い出すと、訳もわからず鼻先がつんとして涙目になる。自分の手が映る主観の記憶もあるけど、大体浮かぶのは、外から見たちいさいわたしの姿だ。想像が生んだ景色かもしれないし、親が撮ってくれたビデオを繰り返し観ていたおかげで染み付いた景色かもしれない。当時のわたしは人と遊ぶとき、楽しんでいた記憶があまりなくて、いつも泣かないように我慢していた気がする。だいじょうぶだよ、と言っ

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廃れたものに惹かれる

廃れたものに惹かれる

 道を歩いているときに物が落ちているのを見つけると、いつも写真を撮ってインスタのストーリーに載せてしまう。

 もう、どう頑張ってもごみとして処理されるしかないような物たちに、なぜこんなにも心を動かされるのだろう。無機質でありながら、生々しさがある。雰囲気が似ているのだ。人の気配を感じる、がらんどうの廃墟の矛盾と。物に命が宿っている最期の瞬間を痛烈に感じる。   
 人間でいうなら、瞳から光がだん

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