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週刊ヴェルデ

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短めのエッセイを、週一回を目標に更新。
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#日本美術史

鳥文斎栄之という男~鳥文斎栄之展@千葉市美術館から

鳥文斎栄之という男~鳥文斎栄之展@千葉市美術館から

浮世絵で美人画、といえば誰が思い浮かぶか?
この質問に対し、多くの人は歌麿の名前をあげるだろう。
バストショットで捉えられた女性たちの様々な仕草や表情は、まさに彼の観察眼の賜物、とも言えようか。
歌麿が数多くの画家の中でも抜きん出た存在となっているのは、このバストショット、つまり「大首絵」を取り入れ、美人画の新たな境地を切り開いた「パイオニア」としての功績もあるだろう。
そんな歌麿と同時期に活躍し

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上野に若冲に会いに行った話

上野に若冲に会いに行った話

「甘かった……」
 東京芸術大学美術館の地下二階、若冲の<芍薬群蝶図>の前で、私は苦い思いを噛みしめずにいられなかった。

若冲と言えば、鶏。
そのイメージは、私の中に強く根付いていた。
しかし、『日本美術を紐解く 皇室の至宝』展の展示室に飾られていた数点の中で、まず私の目に入り、そして圧倒したのは、この<芍薬群蝶図>だった。

 若冲の作品の実物を見るのは、今回が初めてではない。
 が、記憶とは

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永徳と等伯(メモ)

永徳と等伯(メモ)

長谷川等伯について書きたいと思い、メモを書き出してみたら、そのライバル狩野永徳について、ふと思い付くことが出てきた。

狩野永徳は、ご存知、絵師集団・狩野派の四代目頭領にして、信長・秀吉に仕えた絵師。
「天下一の絵師」と言っても過言ではない。
何が、彼をそうなさしめたのか。
もちろん本人の才能もあった。
幼い頃から、次代を担う「ホープ」として期待を寄せられ、最高の教育のもとに、才を磨いた。
狩野家

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川瀬巴水展内覧会へ

川瀬巴水展内覧会へ

今日は、SOMPO美術館の川瀬巴水展の内覧会へ。
「新版画」については、先日、吉田博を知ったばかりであまり詳しくなかったが、それだけに余計内容の濃さに圧倒された。
新版画とは、一言で言えば、江戸時代の浮世絵技術のリバイバル。江戸時代と同じく、版元を中心に、絵師、彫師、摺師の分業で制作する。
しかし、伝統をただ守るだけではない。
絵師の方で洋画の技法を取り入れたり、摺る際には、バレンの跡をあえて残す

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『教養として知っておきたい名画BEST100』9月10日発売!

『教養として知っておきたい名画BEST100』9月10日発売!

執筆協力させていただいた、『教養として知っておきたい名画BEST100』(永岡書店)の献本が到着!

発売は、9月10日から。

私にとっては初めての紙の本。
何もかも、初めて尽くしと言って良い。
良い仕事をすれば、それが新しい仕事を連れてきてくれる。
どうか、今回の仕事が次の機会につながりますように

立ちはだかる壁に対して、何をする?~広重の場合

立ちはだかる壁に対して、何をする?~広重の場合

緊急事態宣言に伴い、美術館や博物館の多くが休館になった。

今日から開催されるはずの、「北斎と広重」展も、明日からは見られない。

何でこんなことに……。

(ちなみに私のいる図書館は、期間中のイベントは全て中止だが、他は通常通り……正直イラッと来るが、その苛立ちを書く方に向けていきたい)

北斎の「富嶽三十六景」を中心に据えながらも、同時代に生きた後輩絵師・広重の視点から展覧会の流れを組み立てて

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