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週刊ヴェルデ

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短めのエッセイを、週一回を目標に更新。
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#読書日記

徒然日記~原田ひ香さん『ランチ酒』

最近、原田ひ香さんの『ランチ酒』シリーズを写経しているが、やはり彼女の短編には20枚シナリオの手法に通じるものがあるような気がする。
主人公・祥子の職業を「見守り屋」に設定し、職業も年齢も様々な人と出会い、数時間の間、間近に接し、彼らとの抱える問題や、これまでの時間の積み重ねを垣間見する。
それは時に主人公自身の抱える過去(妊娠したのをきっかけに結婚したものの、うまく行かず、最終的には娘を置いて離

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大島真寿美『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』~クリエイターを目指す人へのオススメ本

大島真寿美『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』~クリエイターを目指す人へのオススメ本

今更ながら、大島真寿美の直木賞受賞作『渦』を読んでいる。
人形浄瑠璃の作者(つまりシナリオライター)の話なのだが、主人公や彼を取り巻く人々の浄瑠璃や芝居の仕掛けに賭ける熱量に圧倒されるばかりである。
文字通り「三度の飯よりも浄瑠璃が好き」で、芝居の内容について話し出したら止まらない主人公・半二。
「近松門左衛門の後継は自分」と決め込み、しかし、肝心の作品は一行も書けずに、鳴かず飛ばずの日々を過ごす

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英語多読日記 ~ハローキティとプーさんと・・・

“What Is the Story of Hello Kitty?“(7323語)読了。

https://www.amazon.co.jp/What-Story-Hello-Kitty/dp/1524788392

ハローキティについて、意外と知らなかったのだなあ、と実感。
そういえば、昔、留学する前に、当時のペンフレンドに「お土産何がいい?」と聞いたら、「ハローキティのグッズが欲しい」と言わ

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短編ブーム到来

 小説というと、長編ばかりに手を伸ばしてしまう傾向が強い。
 (今読んでいる深緑野分さんの『スタッフロール』もそうだが) 
 が、時々、短編を集中的に読もうか、と思いつくことがある。
 短編にこそ、技が詰まっている―――小説の書き方やエッセイ本を開くと、そんな言葉が頻繁に出てくる。
 オー・ヘンリー、サキ、モーパッサン、モーム、芥川龍之介、志賀直哉、向田邦子、星新一……
 星新一さんのショートショ

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奥泉光『死神の棋譜』

こんなにも私は物語を求めていた。
自覚したのは、奥泉光の『死神の棋譜』の60ページを過ぎたあたりである。
本を手に取ったのは、『このミス』の最新版がきっかけだった。
美術書の出版に向け、画家とその作品についての原稿を書くことが、ここ2ヶ月の優先事項で、図書館では、700番台の美術書のコーナーをうろついては、一行でも使える箇所がないか、と本を漁っていた。
おかげで、何かの別のものを、と思った時、これ

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