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タナコフスキー
2016年11月6日 23:52
古代中国の歴史書『魏志倭人伝』には、当時の日本列島の住人の風貌について、こう書かれている。 黥面文身、と。 「黥」の部首は「黒」である。魚偏の「鯨」ではない。これは「墨」を表している。「黥面」とは顔に、そして「文身」とは身体に、入れ墨があることをいう。 つまり、卑弥呼の時代の日本人は、全身に入れ墨を施していたということになる。その理由は明確ではないが、魏志倭人伝にはサメやウミヘビなどの
2016年5月29日 23:40
葛城の古い神、「すべてを一言で言い放つ神」とされた一言主(ひとことぬし)を起源とする。その名のとおり、やたらとコメントしてくる妖怪だ。 とりあえず、一言、なにかを言わずにはいられないらしい。頼んでもいないのに、とりあえず口をはさんでくる。 現代の記号化社会において爆発的な増殖を示し、インターネット、特にソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で頻繁に遭遇することが知られている。
2016年3月4日 22:48
初めは「摺衣(すりごろも)」かと思った。 しかし、忌まわしき邂逅の場から立ち去って、しばらく経つのに、心中のざらつきは治まることを知らなかった。 そこで、はたと気がついた。 これは「疫病神」だ、と。 疫病神とは、祟りや穢れといった不穏なものを身に纏うものの名である。 忌まわしき黒い靄のようなものが、ねっとりと渦巻きながら、その身体を覆い包んでいる。その霧に触れた者は、同じように
2016年1月19日 12:48
賑やかな人混みのなかで、一瞬静寂が走ることがある。妖怪「依り耳」がそっと近寄り、耳を支配した瞬間に他ならない。依り耳は、取り憑いた人間の客観的な判断力を奪う。依り耳に憑かれた人間は、言葉の内容ではなく、その言葉を発した人間が誰なのかによって、物事を判断するようになる。その歴史は古い。古代ギリシアの時代に、アリストテレスが『弁論術』の中で、聴衆を説得する方法として挙げたのが以下の三要
2015年6月5日 00:10
美女から生えた無数の腕。その指先からキラキラと光を反射する細い糸が伸び、周囲の人々にまとわりつく。まるで人形浄瑠璃のように、見えるか見えないかという脆弱な糸で人々を意のままにあやつろうとする。それが浄瑠璃蜘蛛である。ひたすらに、周囲を支配することを欲する妖怪である。その糸に捕らえられた犠牲者が、その意に従わないときは、激昂とともに激しく叱責する。極端な場合、異なる意見や自由な感想すらも