【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】手足のしびれと鍼灸
千葉市内、千葉駅すぐ、女性と子ども専門鍼灸院『鍼灸 あやかざり』です。
いつも【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】の記事をお読みいただき、ありがとうございます。
今回、取り上げるテーマは『手足のしびれ』です。
ピリピリした電気が走るような感覚、なんとなくジワジワとした感覚、感覚が麻痺して力が入らなくなるなど、その程度はいろいろですが、手や足がしびれたように感じた経験は、意外と多くの方にあるのではないでしょうか。
このようなしびれはどうして起こるのか、その原因と治療方法についてみていきましょう。
なお、本編の中では、しびれの症状に対する鍼灸によるアプローチについてもご紹介していきます。
1.手足のしびれとは
しびれとは、からだのどこかで感覚が部分的もしくは完全になくなった状態で、感覚が弱くなるだけの場合もあれば、まったく感じなくなる場合もあります。
あわせて、からだの内側からチクチクしたり、ピリピリしたり、などの違和感を感じることもあります。
手足のしびれと聞いてすぐ思いつくのは、長時間正座をしたり、肘枕で寝てしまったあとの状態で、誰もが一度は経験していると思います。
正座で足がしびれるのは、ひざ裏を圧迫したことによりひざから下の血液の流れが悪くなることが関係しています。
それに加えて、皮膚に近い部分の神経が直接圧迫されているため、神経が通常とは異なる信号を脳に送ります。
それが、しびれとして感じられるのです。
ひじ枕で寝てしまったあとの腕のしびれも、その原因は上記と同様です。
いずれの場合も、一時的なもので、しばらく時間が経てば自然に消えます。
こういったしびれは、放置しておいてもすぐに解消することから問題ありませんが、きっかけが思い当たらないのに急にしびれたり、いつまでたっても消えないときは、その背後に治療が必要な病気が隠れている可能性がありますので、一度、医療機関を受診するようにしましょう。
2.しびれが起こる原因
ここでは、まず、現代医学の面から、しびれの原因を考えてみましょう。
からだの表面の刺激を脳に伝えるまでの間に何らかの障害があるとしびれが起こります。
そのため、手足のしびれがあるからといって原因が手や足にあるとは限りません。
しびれの現れ方は、障害の起きた場所によって違ってくるので、原因となる病気を探る際の参考となります。
①末梢神経に異常があるとき
手足のしびれを訴える人の中でもっとも多い原因です。
末梢神経はそれぞれからだの特定の場所につながっており、いわゆる神経の枝のようなもので、からだの片側の一部にしびれが現れることが多いです。
ただし、全身の末梢神経が障害される病気の場合には、全身に症状が現れます。
原因となる主な疾患には、手根管症候群、肘部管症候群、ギヨン管症候群、大腿外側皮神経麻痺、腓骨神経麻痺、足根管症候群、糖尿病やリウマチ、ビタミンB1欠乏による脚気、があげられます。
②脊髄や神経根に異常があるとき
脊髄や神経根は末梢神経の幹にあたる部分です。
そこに異常が起きると、体を動かすときに両手両足の全体やからだの広い範囲に電気が流れるような激しい痛みを伴ったしびれが現れます。
病気によっては、進行に伴って片側から全体へと、しびれが広がっていく場合もあります。
原因となる主な疾患には、頚椎症性脊髄症、頚椎症性神経根症、腰部脊柱管狭窄症、腰椎変性すべり症、腰椎分離すべり症、頚椎・腰椎椎間板ヘルニア、椎間板ヘルニア、変形性脊椎症、ビタミンB12欠乏、があげられます。
③脳に異常があるとき
からだの片側のしびれや痛み以外に、ろれつが回らない、吐き気がする、物が二重に見えるなどの症状が現れます。
脳出血や脳梗塞、脳腫瘍などが考えられ、命に関わる危険が伴うことがあるようです。
このような症状がある場合は、迷わずに一刻も早く、医療機関を受診するようにしましょう。
上記①~③の病気には当てはまらず、猫背や不自然な姿勢が続いた場合などでしびれが長引くこともあるほか、精神的なストレスが原因となる場合もあります。
3.現代医学によるアプローチ
まず、検査を行い、原因となる病気がみつかる場合には、まず、その病気の治療をおこなうことが最優先となります。
3-1.検査
●X線検査 : 骨や関節に異常がないかを確かめます。
●神経伝導検査 : 神経の刺激の伝わり方を調べます。
●筋電図検査 : 筋肉が緩んでいる時と刺激を受けて収縮する時の状態を調べます。
●MRI検査 : 脳や脊髄の状態を画像で確かめます。
●血液検査 : 糖尿病やビタミン欠乏症など、しびれの原因となる病気を鑑別します。
3-2.治療
しびれの原因となっている病気の治療では、入院や手術を要し、しびれや痛みを軽くするために原因を取り除くための処置がおこなわれることがあります。
外科的な処置が必要でない場合には、日常生活を送りながら、投薬治療、運動療法等の対処療法を行うことが多いようです。
【しびれや痛みに用いられるおもな薬】
●消炎鎮痛剤 : 炎症をしずめて痛みを抑えます。
●ビタミン剤 : しびれや痛みの原因が末梢神経障害の時、神経の働きを助けます。
●末梢循環改善剤 : しびれや痛みの原因が血流の低下にある時、手足の血流を改善します。
●神経の過敏性を抑える薬 : 傷ついた神経が過剰に反応することでことで起こるしびれや痛みを抑えます。
【日常生活での対処法】
●温める :
血流がよくなり症状が軽くなることがあります。
ただし、感覚が麻痺していると熱さを感じにくいためやけどに注意が必要です。
●からだを動かす :
ウォーキングや軽い体操などの全身運動を行うと血流がよくなります。足に合った靴を選ぶのも大切です。
また、手のしびれに肩や首のストレッチが効くこともあります。
痛みを感じない程度に腕を伸ばしたり、首を動かしてみてください。
●よくない姿勢を直す :
姿勢を直すだけでかなり症状がよくなることもあります。
よくない姿勢は内蔵の病気の原因にもなりますので、日ごろから意識して姿勢をよく保ちましょう。
●ストレス解消 :
なにかしらの心配ごとで症状が悪化している場合もあります。
しびれに対して不安がある場合には医療機関に相談し、診察を受けたうえで、日常生活では必要以上に心配しないように心がけてみましょう。
4.鍼灸によるアプローチ
「手足のしびれはマッサージではなく、鍼灸による治療も可能なのか?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、手足のしびれの症状も鍼灸によるアプローチが対応可能な症状の一つです。
その効果は、世界保健機関(WHO)も認めています。
参考リンク:公益社団法人 全日本鍼灸マッサージ師会
先にご紹介したような一般的な治療を受けている方の中には、『繰り返し、何度も手足のしびれに悩まされている』、『一時的には良くなるが、だんだん効果を感じなくなってきた』、『湿布は皮膚がかぶれて痒みがでるので使用することができない』、『長期間、慢性的に症状を抱えているので、対処療法ではなく根本から治したい』と考えていらっしゃる方も多いかもしれません。
また、あちらこちらの病院や民間療法を渡り歩き、現代医学的に様々な検査を行っても原因が明らかにならならず、自分にあった治療法がみつからないために、症状を抱えながら日々を生活している、という方も中にはいるかもしれません。
一方、鍼灸施術による手足のしびれの治し方は「症状が起こっている東洋医学的な根本の原因」をみつけだし、それを正すことによって、手足のしびれの症状を取り除くとともに、手足のしびれをおこさない身体づくりをしていきます。
東洋医学的には、「気候、季候、食事、疲労、ストレスなど、何らかの原因で、体内循環が停滞、または身体を十分に栄養したり温めたりすることができないために、手足のしびれの症状がひきおこされる」と考えて治療にあたります。
5.東洋医学における手足のしびれとは
東洋医学の専門用語では、皮膚のあたりが麻痺することを『麻木(まぼく)』といい、手足がしびれることを『四肢麻木』といいます。
また、皮膚の正常感覚の欠如、しびれを『肌膚麻木』、麻痺のことを『不仁』といいます。
では次に、この『麻木』のおこる原因を、東洋医学的に分類してみていくことにしましょう。
5-1.外気の影響によるもの(風中経絡型)
ゾクゾクした寒気や背骨のこわばり、身体の冷えや寒気を感じた後から、急激にしびれを感じるようになった。
このタイプの場合には、外気の冷えや寒さが人体に影響を及ぼし、体内の気血がスムーズにめぐらなくなることで、しびれの症状を発症しやすくなります。
しびれの特徴としては、しびれの部位があちこち移動しやすい、あるいは同じ部位に固定しつづける、どちらもあります。
また、発症と同時に、軽い顔面麻痺や皮膚表面のこわばり、手足の冷え、寒気や喉の痛み、鼻づまり、鼻水、咳などの、一種の風邪症状を伴うことが多くみられ、風邪症状がなくなったあともしびれの症状が残り続けることが、このタイプの特徴です。
5-2.肉体疲労・体力低下によるもの(気血両虚動風型)
虚弱体質・過労・大病・大怪我などの原因で、身体に疲労がたまって体力が衰えてしまうと、身体を正常に機能させるために必要となるエネルギーや、身体を栄養したり、隅々まで温めたりするために必要な血が不足してしまう状態(=気血両虚)となり、しびれの症状が出やすくなります。
このタイプの特徴としては、以下の症状を伴うことが多くみられます。
・手足に力がはいりにくい
・脱力感がある
・息切れしやすい
・元気がない
・疲れやすい
・ちょっとした身体への負荷で汗が出やすい
・目のかすみ
・動悸がでやすい
5-3.血流の悪さが原因となるもの(気滞血瘀、瘀血気滞型)
精神的プレッシャーや焦ることが多い、あるいは、デスクワーク作業などで同じ姿勢を長時間続けることが多い。
こういった精神的なストレスによる身体の循環停滞が長引くと、体内の血流が悪くなり、血液の老廃物(=血瘀、瘀血)が蓄積しやすくなります。
また、打撲・捻挫等の怪我、筋腫・腫瘍などの内臓疾患などの病気の場合にも、血液が停滞して、体内に血液の老廃物(=血瘀、瘀血)が蓄積しやすくなります。
こういった老廃物は、体内の気血の巡りを邪魔して、気血がスムーズにめぐらなくなることで、しびれの症状を発症します。
症状が軽い場合はしびれの程度に変化がみられ、しびれが出たり出なくなったり、しびれの部位が変化したり、軽い痛みを伴うことがあります。
そして、仕事や勉強に集中している時は症状は気にならないが、緊張から解放された後、一日の終わりや繁忙期が終わった頃にしびれが辛くっなってくるといった感じが多いです。
症状が重くなってくると、しびれは常に同じ部位に継続して感じられるようになり、するどい痛みを伴うようになり、夜間にしびれが悪化しやすくなります。
5-4.激しい感情変化がきっかけとなるもの(肝陽化風型、肝火生風型)
顔面は真っ赤で汗が吹き出し、頭から湯気が出そうなほどカーッとするような怒りの感情を伴う出来事があった後から、しびれの症状を感じるようになった。
このタイプは、急激な感情変化(主に怒り)が原因となり、身体の中に余分な熱(=火)が生まれて、それが気血の巡りを停滞させて、しびれの症状をひきおこす、と考えられます。
このタイプの場合には、しびれの他、手足に細かい震え(=振戦)を伴うことがあり、胸のあたりが不快で熱つく感じ、イライラ感が目立つことが、その特徴です。
5-5.暴飲暴食の繰り返しによるもの(風痰阻絡、湿熱欝絡型)
食べすぎや飲みすぎを繰り返しているうちに、しびれの症状が出るようになった、またはしびれの症状がひどくなった。
このタイプは、日ごろからの暴飲暴食、夜間の飲食などを繰り返しているうちに胃腸への負担が増し、胃腸の働きが弱まって体内で老廃物(=痰飲、湿熱)が作られやすくなります。
それが、とあるタイミングで、外気の冷えや暑さの影響を受けることから、気血の巡りを停滞させてしびれの症状をひきおこした、と考えられます。
このタイプの場合には、しびれの他、手足に細かい震え(=振戦)を伴うことがあり、かゆみを伴うことがあるほか、足のほてりを感じることがあります。
6.手足のしびれに対する鍼灸の施術例
次に、鍼灸による手足のしびれに対する施術例をご紹介したいと思います。
一度の施術で使うツボは1つです。施術時間は休憩含めておおよそ1時間程度です。
なお、鍼をする前には、あらかじめ詳しく問診をする必要があり、しびれの症状だけでなく、他にもある様々な身体の症状(随伴症状といいます)、その人の体質、その時の体調、施術をする時の季節、天気なども考慮する必要があります。
その上で、その人の身体全体の状態(脈、舌、顔色、身体の熱冷のかたより、身体の緊張、手足ツボの反応など)から、トータル的にみて、最も原因にふさわしいツボを選び鍼をします。
そのため、しびれの症状、原因が同じでも、その時々で使用するツボも変えることが必要となります。
では、以下に足のしびれに対する施術の一例をご紹介します。
【患者】40代前半女性、身長150cm程度、体重50kg後半
【初診】202X年10月X日
【主訴】右大腿後面のしびれ
【問診】
初診日の一週間前から、右の太ももの後ろ側あたりに、違和感を感じるようになり、しびれたような感じがする。
友人から坐骨神経痛かもしれない、と言われて心配になり、来院をした。
症状が出た頃に、風邪症状や寒気を感じたことはない。
しびれはピリピリした感じというよりは、違和感があるという感じがする。
家事や自分の好きなことには集中することができており、ふとした瞬間や寝る前などに症状を感じやすい。
症状が出てから、症状の範囲や強さは変化していない。
入浴、散歩、時間帯(朝、昼、夕)、食事、睡眠による症状変化はな。
普段から寝る時間が遅く、早く布団に入ってもなかなか眠気がこない。
食欲は普通程度。排便は便秘がちで、数日に一回程度、少量しかでないことからすっきり感があまりない。
性格は少し神経質でいろいろなことが気になりなりやすいと自分で思う。
【診断と治療方針】
問診、および身体全体の状態を診て、今回のしびれの原因は、以下の証が混在する状態であると診断。
・肝鬱気滞
・外気の冷えの影響(下半身を中心)
・脾虚傾向
従って、身体に入った冷えをとりながら、余分な体の緊張を取り除き、下半身の巡りをよくするように治療を行う。
【日常生活での注意点】
・適度に運動する。
・下半身を冷やさないようにする。
【経過】
初診 施術直後、下半身全体が暖かくなり、太もものしびれが気にならなくなった。
2診 鍼を受けた後はだるさもなく、太もものしびれは違和感程度が残っている程度。
3診~ 太もものしびれは気にならなくなった。本人が体質改善を希望しており、現在も治療を継続中。
7.まとめ
今回は手足のしびれについて、症状ごとのタイプや原因、治療方法をとりあげました。
東洋医学においても、手足のしびれに対して鍼灸によるアプローチが可能なことはご理解いただけたでしょうか。今回はここまでとなります。
それでは、鍼灸でからだも心も元気になりましょう!
鍼灸 あやかざり
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