【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】身近な万能薬「ドクダミ」の世界
千葉市内、千葉駅すぐ、女性と子ども専門鍼灸院『鍼灸 あやかざり』です。いつも【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】の記事をお読みいただき、あり
がとうございます。
鍼灸と同じ、東洋医学の仲間のひとつに漢方薬があり、その材料として様々な植物が使用されています。
これまでの記事でも、東洋医学的にみる植物の効能として、バラ、モクレン、紫蘇、菖蒲などを紹介してきました。
今回とりあげるのは、「ドクダミ」です。
現在放送中、朝の連続テレビ小説『らんまん』は、植物学者・牧野富太郎氏をモデルとした主人公・槙野万太郎の物語ですが、毎週のタイトルに植物の名前が使われていることはお気づきでしょうか??
「バイカオウレン」、「キンセイラン」、「ジョウロウホトトギス」など聞きなれない植物が続いていましたが、先週(5月8~12日)のタイトルは「ドクダミ」、聞いたことのある名前ではないでしょうか?
「ドクダミ」はペットボトルの健康茶にも含まれているように、日本では古くから民間薬として利用されています。
そこで、今回は、身近な万能薬「ドクダミ」の世界をご紹介していきます。
どうぞ最後まで、お楽しみください!!
1.「ドクダミ」の名前の不思議
「ドクダミ」は、都会でも地方でも、日本中どこでも場所を選ばず、見かける草です。
漢字では蕺または蕺草と書きます。
蕺草というのは中国名そのままで、じゅうさいと読みます。
その名前の由来には諸説ありますが、毒を抑えることから「毒嬌み(どくだみ)」とされたという説がよく知られています。
中国名の別名である魚腥草(ぎょせいそう)は「ドクダミ」の花期から果実期にかけての全草を指しています。
腥の訓読みは「なまぐさい」ですので、「ドクダミ」の独特のにおいを魚臭に例えた名前です。
日本で生薬として使われている「ドクダミ」は花を含む地上部分だけで、「十薬(じゅうやく)」と呼ばれます。
この名前の由来も諸説ありますが、一説には「ドクダミ」の薬効の多さから名づけられたとされており、江戸時代に貝原益軒が著した『大和本草』にもその名が記されています。
同じような理由で十役(じゅうやく)、重薬(じゅうやく)と表したり、医者殺(いしゃごろし)と言われることもあるそうです。
日本では薬草として知られている「ドクダミ」ですが、中国南部の雲南省・貴州省・四川省やベトナムでは、和え物や炒め物、スープなどにして食べる習慣があり、生薬であると同時に食材の野菜としても利用されています。
「ドクダミ」の呼び名はご紹介したもの以外にも時代や地方によってさまざまなものがあり、身近に親しまれてきた薬草であることがわかります。
最後にひとつ、とてもおもしろい呼び名をご紹介します。
それは「地獄蕎麦(ジゴクソバ)」です。
土の浅いところに根を張張り巡らせて5~7月に花を咲かせる様子が、同じ頃に咲くソバの花と似て非なることから付いた名前と言われています。
この名前では、なんだか恐ろしい植物を想像してしまいますが、どんなに抜いても増える様子や、独特の強烈なにおいをうまく表しているとも言えますね。
2.「ドクダミ」の効能
「ドクダミ」は古来から薬草として東洋医学や民間療法の中で使われています。
2-1.東洋医学的な効能
東洋医学的な性質、効能は次のとおりです。
【性質と味】
辛、微寒
【関連する臓腑経絡】
肺・腎・膀胱経
①清熱解毒(せいねつげどく):
熱を取り除き、解毒することで、肺化膿症の解消に効果的です。
②消癰(しょうよう):
皮膚の化膿症に対しては、内服や外用で用いられます。
③利水通淋(りすいつうりん):
利尿を促して、熱を伴う膀胱炎の排尿痛や排尿困難、尿の混濁の解消に効果的です。
風邪、内臓疾患、皮膚の炎症をはじめ、全身の様々な症状に効果のある「ドクダミ」ですが、もともとからだの水分が不足している陰虚の体質の方には利尿作用が逆効果となるため不向き、また、子どもに対して使わない方がよいとされています。
詳しくは、漢方薬局で専門家の先生に相談をしてみるとよいでしょう。
2-2.現代の研究による効能
現代の研究では、以下のような効能があることいわれています。
①抗菌作用:
ブドウ球菌や、溶連菌、肺炎球菌など、比較的身近な病気の原因となる細菌に対して抗菌作用があります。
②抗ウイルス作用:
ドクダミの煎じ液にはウイルスの増殖を抑える作用があります。
③抗アレルギー作用:
ドクダミの揮発油には著名な抗アレルギー作用があることから、
④抗がん作用:
マウスの実験で、ドクダミの注射液に腹膜がんを抑制する作用が認められています。
⑤利尿作用:
尿を出しやすくする、利尿作用があります。
これまで研究が重ねられてきたことで、成分と効果の関係も少しづつわかってきています。
葉に含まれるクエルチトリンや花と実に含まれるイゾクエルチトリンには、強心作用、利尿作用、毛細血管強化作用があり、特に高血圧や脳内出血の予防に効果があります。
全草に含まれる精油のにおい成分にはデカノイルアセトアルデヒドやラウリンアルデヒドが含まれており、カビの増殖を阻止する効果があります。
鼻を刺激する独特のにおいが健康に役立つ、というのは驚きですね!
2-3.女性にうれしい効能
これまでご紹介してきた様々なドクダミの効能は、以下のような女性の悩みに対して効果的です。
お手軽に楽しみたい方は市販のドクダミ茶で、より専門的に興味を持った方は近くの漢方医の先生に相談をしてみてくださいね。
①便秘を解消して、快便を目指す
②体内の毒素を排出してデトックスをする
③デトックス、殺菌効果により美肌を目指す
④高血圧を予防する
3.「ドクダミ」の身近な利用方法
ここでは、昔から伝わっている利用方法をいくつかご紹介します。
①ドクダミ茶:
全草を乾燥させたのち、煎じてお茶にします。
便通の改善、整腸作用、利尿作用、高血圧の予防などに効果が期待できます。
②入浴剤:
乾燥した葉を湯舟に入れて入浴剤とします。
あせも、湿疹、すり傷の治癒に効果が期待できます。
③外用薬:
生薬を火であぶってやけどや切り傷の患部に貼ります。
また、生の葉を揉んで出てきた汁をニキビや水虫、あせもの患部に貼ります。
④虫よけ:
花をアルコール度数の高いお酒に漬け込んで成分を抽出したもの(ドクダミチンキ)を吹きかけます。
かゆみ止めとしての利用も可能で、虫刺されには直接塗ります。
「ドクダミ」の民間療法としては、原爆が投下された広島でのエピソードも有名です。
爆心地の近くで被曝して生き残った人々は、焼け野原に再生した「ドクダミ」を煎じて飲み続けました。その結果、放射線による症状が回復し生き延びることができた、というのだです。
医学的な根拠はまだ解明されていませんが、「ドクダミ」の薬効には確かな有効性があるようです。
ただし、お困りの症状がある方で「ドクダミ」を試してみたいと思った方は、自己判断で試してみる前に、必ずお近くの医療機関や漢方薬を扱う漢方薬局に相談してくださいね。
4.まとめ
筆者の鍼灸院『鍼灸 あやかざり』は千葉市内千葉駅近くに所在しています。
近隣は高層ビルが立ち並び、アスファルトで固められた道路ばかりが目立ちますが、よく見ると側溝の脇や駐車場の片隅に「ドクダミ」を見かけます。
街の片隅でやっかいもの扱いされがちな「ドクダミ」ですが、鑑賞用に品種改良された園芸品種もあります。
●ヤエドクダミ:花(中心の黄色い部分)の周囲にある総苞片(そうほうへん:葉の一種)が八重になっています。
●斑入り(フイリ)ドクダミ:葉に赤や黄色、白、薄黄、ピンクの縁取りが入っているのが特徴で、カメレオンとも呼ばれています。江戸時代に日本で品種改良されたものがヨーロッパに渡り、その後日本に逆輸入されました。
園芸用の栽培方法を調べてみたところ、ヤエドクダミも斑入りドクダミも繁殖力は原種と変わらないので、鉢植えがよいとされていました。
また、繁殖を繰り返すうちに普通のドクダミに『先祖返り』することもあるそうです。
「ドクダミ」の生命力は想像をはるかに超えているようですね!
このように、身の回りにあるいろいろなものを東洋医学的にみていくと、鍼灸ほかにも、身近なところに自然治癒力を高めるヒントがたくさんあることに気づかされますね。
それでは、鍼灸でからだも心も元気になりましょう!
鍼灸 あやかざり
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参考文献:『東方薬草新書』、『薬用植物辞典』、『植物図鑑』