小さい本

本と音楽が好きな2000年生まれの男です。 3年前から一貫して体調が優れず、職場のストレスと重なったため適応障害を発病し、2023年末に退職。現在は無職です。

小さい本

本と音楽が好きな2000年生まれの男です。 3年前から一貫して体調が優れず、職場のストレスと重なったため適応障害を発病し、2023年末に退職。現在は無職です。

マガジン

  • 長編小説「インフルエンサー」

  • 短編小説・ショートショート

    短編小説とショートショートをまとめてます。文章の練習で書いてます!

最近の記事

「ダサい」という言葉の素晴らしさ

現代の若者は感情表現において「ヤバい」や「エモい」、「エグい」など3文字で表すことが多いように思う。 このことが指すのは、言葉の単純化や抽象化が進んでいるということだ。 また、それをいわゆる知識人と呼ばれる人々が批判的に論じることもある。 確かに、あらゆる感情を一つの言葉に集約してしまうことが相互理解を困難にしたり、人間の複雑な思考そのものをより単純化してしまったりするのではないかと、負の側面を想像することができる。 でも、ここではそのような言葉の単純化と抽象化の是非に

    • 自己愛と自己批判と自己肯定と自己否定

      自己の二文字を含む熟語として、現代で最もよく耳にする言葉は自己肯定感だと思う。 自己肯定感を上げようというムード。 それは個性が大切だ、みたいな現代の風潮と確かにマッチしている。 ネガティブはやめて楽しくいこうぜみたいな言葉の響きもあって、そうはなれない人の願望としても、自己肯定感を上げたいという言葉はよく使われる。 でも、僕は自己肯定感だけで自己ということを考えるのはかなり危険だと思っている。 単一の視点から物事を捉えることの危うさという一般論も一応挙げておきながら、僕

      • 大江健三郎と村上春樹

        僕の読書遍歴においては世界文学の占める割合が非常に大きい。 それは確実に村上春樹の影響だ。 人の哀しみや心の震えを美しく物語化している村上春樹という作家に僕は心酔していて、彼がなぜそのように物語るか、つまり作家としてのか彼がどのように形成されていったのか知りたくなったのだ。 海外の作家においては、村上春樹は好きな作家や評価している作家を実名でよく挙げてくれるし、翻訳までしてくれるから、僕の好みに合った作家も見つけやすかった。 例えばフィッツジェラルド、マッカラーズ、チャン

        • 村上春樹はロマンチストだからノーベル賞を受賞できない

          村上春樹今年もノーベル賞を受賞できず、というニュースに対して残念がるファンがいる一方で「当然だ!できるわけない!」と意見する方々もたくさんいる。 ただ、受賞できないだろうと意見する人には2つの人種があると思う。 「村上春樹のファンとして」そう思っている人と「村上春樹に批判的な読書好き」としてそう思っている人の2つ。 そして、僕は前者の分類に属している。 僕はめっちゃ村上春樹のファンだ。 ここで自身が村上春樹ファンであることをハルキストと表現するのは適切ではない。 なぜな

        マガジン

        • 長編小説「インフルエンサー」
          3本
        • 短編小説・ショートショート
          5本

        記事

          恥知らず

          僕は未だに働くことができず、アルバイトすらしていない。 それは健康上の致し方ない理由によってではあるけれども、そう捉えているのは僕自身だけかもしれない。 無職のまま親の遺産で日々を過ごし、特に禁欲的でもない生活を送っているので、僕のことを恥知らずの社会不適合者であると捉える人がたくさんいることを想像する。 社会的な適合度で言えばこれまでもこれからも僕は大いに不適合なのだろうと自分でも思う。そして、僕のことを恥知らずだと捉える白い目についても、反抗的に見返すことはとてもでき

          まだ死んでない

          数週間前から再び鬱の症状が出てきて、薬を服用することで何とか耐え忍んでいる。 数日前友人達とご飯を共にした際には、鬱の持つ衝動的な暗いエネルギーが体の奥深くから溢れ出るのを感じ、その場の楽しい会話によって気を逸らすことで何とかそれを抑えていた。 ただ、時間を経て衝動の恐怖は薄れてゆき、笑って解散することのできる多幸な時間となった。 談笑の時間をある友人が写真に収めていて、そこに写る僕の表情は生き生きとしていた。まだ僕は死んでいないし、これだけ鮮やかに生きているのだと客観的

          まだ死んでない

          6月2日 体調が戻ってしまった

          ほんの数日前までは体調が改善傾向にあったから、そろそろバイトを始めようと思っていたのに昨日今日で結局体のだるさがぶり返してしまい、途方に暮れている。 本当に自分がクソすぎる。カスみたいな体だ。何もできない。悔しい。精神的に前向きになっても体調が追いつかない。どれだけポジティブになろうと努めても、体は痛く、重い。食欲もない。 やはり断薬していた心療内科の薬を再び服用するのが良いのだろうか。 体調が悪くても、最低限動くことができたのは薬のおかげだったのだろう。 今月からバ

          6月2日 体調が戻ってしまった

          5月30日 僕は死んでいたかもしれないと仮定した

          9ヶ月の間、僕はただ家に引き篭もる生活をしていた。 去年の8月末に適応障害で休職し、12月末には退職することになり、今の今まで僕は何もしていなかった。 3年前から原因不明の体調不良に悩まされていたという背景あっての適応障害だったので、適応障害が治った時に一度綿密な検査をしてもらおうと決意した。 そして、僕の病状には外傷性動静脈瘻という名前がつくこととなった。それに対するカテーテル治療を行ったのが今年の1月で、その治療は初めて僕の病状に対して効果的に作用し、若干ではあるが体

          5月30日 僕は死んでいたかもしれないと仮定した

          知らない個人を断罪する権利

          サカナクションのボーカル、山口一郎さんがYouTubeで視聴者と対談していて、今日のそれでコメント欄がとても荒れてしまっていた。 対談相手の方が話した内容に倫理的な問題が含まれていたからだ。 僕は対談相手の倫理性に関して確かに思うことがあったけれど、それを敢えて言語化したいと思わなかったし、ましてや一般論としての正当性でその方を断罪したいとは思わなかった。 その方が果たさなければいけないであろう責任、問題に私たちは関与するべきではないと僕は思うし、一郎さんもそのようなこ

          知らない個人を断罪する権利

          SNSの醜い扇動者

          僕は大谷翔平選手のファンなので、通訳の水原一平氏による違法ギャンブル事件を聞いて、当然の如くいたたまれない気持ちになっていた。 プロスポーツに必要とされる集中を、しかも彼ほどのエリートになるために必要な極限の集中を、大きく阻害されてしまうようなスキャンダルに彼が巻き込まれてしまうなんて。 水原氏がこの騒動に火をつけたことによって、大谷翔平選手も違法ギャンブルへの関与が疑われてしまうことになり、憶測によって彼の非が語られ、悲観的な去就を予測する、侮蔑的な論がSNS上で多く交

          SNSの醜い扇動者

          3月8日 死にたいほどの苦しみでも愛したいから生きる

          僕は病気のせいで職を失うことになった。 両親も10年以上前に亡くなった。 今の僕には生産的なことが何もできない。でも、それでもこれまでの短い人生の中で今が1番幸せなのだと思う。 治るかわからない病気を抱えていることで、生きたくないと強く思っている。 死にたいくらい苦しい。でも、僕と繋がりのある人たちが生きるこの世界が愛おしい。 生きるにつれて哀しみは溢れるばかりで、人間であることの素晴らしさは日に日に失われていくような気もするけれど、身近に溢れる愛情は美しくて温かくて、そ

          3月8日 死にたいほどの苦しみでも愛したいから生きる

          2月29日 いつ、どのように死ぬか

          はっきり言ってこれ以上僕の体調不良が改善されないのならば死にたい。しんどいもう。 まあこう書いたからと言って別に今すぐにでも身を投げ出そうとは思っていない。 頭が病的にネガティブになっているわけでもない。 正常で明晰な思考のもとで、この苦しみから逃れられないのなら死ぬしかないと合理的に判断しているだけだ。 解決の見えない苦しみがどれほど苦しいか。 僕はそれを受け入れようとしてきたけれど、上手くいかなかった。僕にとっての生きる意味は自分を成長させ、その余剰によって誰かの

          2月29日 いつ、どのように死ぬか

          2月28日 カテーテル治療が効かなかった

          体調不良の根本的解決のために、2回目のカテーテル治療を行ったが効いていないっぽい。 となると、もうどうしようないのかな。 僕はただ普通に、元気に暮らしたいだけなのにそれすら叶わない。 死にたいとは全く思っていないけれど、このまま生きたくないとは切実に思っている。 僕のやりたかったことは生活のためのお金を稼ぎながら空いた時間に読書して小説を書くことだった。 しかし、何をするにせよある程度の根性と健康と、精神的な余裕が必要だと思う。 だが、僕にはストレスに対するキャパシ

          2月28日 カテーテル治療が効かなかった

          2月25日 明日2度目のカテーテル治療

          体調不良を抱えるようになってから3年以上が経つ。 体調不良の発症直後は体が動かず、震えが止まらない、吐き気を催し、息ができない、そんな状況だった。 僕はその時から胸の中央部に痛みと違和感を抱えている。 今思い返すと体調がおかしくなった直前に胸の周辺を激しく動かしていてブチッ、ジュワーという感覚を味わっていたから、何かしらの出血があったんじゃないかと思う。 ここ最近になってMRIを撮ったら、外傷性動静脈瘻という病名がついて、僕はようやく自分の症状に納得することができた。

          2月25日 明日2度目のカテーテル治療

          2月20日 内容ではなく見え方

          情報端末の普及に伴って読解力が低下しているという話を巷で聞くことがある。 YouTubeのコメントの中で、話の要点を掴んでいない意見がグッドボタンで称賛されていたのを見てあー確かにと思ってしまった。 動画の出演者が別の出演者に怒っているシーンについてのコメントでの論議だ。 一見すると怒っている人とそれに冷静に反論している人という見え方になってはいる。しかし、何に怒っていて、それにどのように反論しているかという内容を聞くと、怒るに至った筋の方が正しく、反論はその筋からズレ

          2月20日 内容ではなく見え方

          長編小説「インフルエンサー」第三章

          第三章   この章では、これまでの俺の言葉から紡ぎ出された彼の華麗なる姿に対して、いくらかの留保を与えるかもしれない。なぜなら現時点においてのあなたは恐らく、彼の完成された人間性を信じているだろうから。しかし、一方であなたは疑ってもいるのかもしれない。俺が説明し、あなたが実際に目撃したインフルエンサーとしての彼は、本当の彼だったのかと。非の打ちどころのない聖人のような人間がいるなんて、あまりにもリアリティがなさ過ぎるし、本当の彼には裏があったに違いないと。もし、そのような疑い

          長編小説「インフルエンサー」第三章