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「自愛。人間これを忘れてはいかん。結局、たよるものは、この気持ひとつだ。いまに、私だって、偉くなるさ。なんだ、こんな家の一つや二つ。立派に買いもどしてみせる。しょげるな、しょげるな。自愛。これを忘れてさえいなけれあ、大丈夫だ。」
──太宰治/「新樹の言葉」 より。
124号室通信:最終号
退院前夜である。
2ヶ月と1週間の初・入院生活だった。
その様子はnoteやTwitterでことごとく書いてきたので深く振り返りもしないけれど、ささやかながら色々な出来事があったし、色んな人とも出会ったし、色々なことを考えたりした。
最後の日といっても別に特別なことがあるわけでもないし、おれも特別なことをする気はない。特別な感情を抱くことだって特にはない。
ご飯を食べて、薬を飲んで、スマホを眺め
セミファイナル・イブ
明日退院かぁ、とぼんやり歯を磨いてたら今日は土曜日なんで、もう一日ある事を忘れていた。
長い入院生活で曜日感覚などというのはすっかり皆無なんである。宇宙飛行士や半年間ほど洞窟で暮らす実験をしてた人はこんな感じなのだろうか。いや、足元にも及ぶまい。
今日も入院生活最後の一冊になるであろう本を読んだり、スマホを眺めたり、中庭に出たりした。
最後の最後になると本当にやる事もなく、ただ泊まっているだけみ
いつか今日を振り返る日がくるだろうか
朝。朝食を食べてから少しばかりぼんやりして荷物の整理をしたり軽く掃除のような事をしたり。
ひととおり済んで水を汲みに行ったら、ロビーでスマホから昭和歌謡やらフォークソングやらを流してる人がいたので、おっ、となり、近くの椅子に座って聞き耳を立てる。アン・ルイス「グッド・バイ・マイ・ラブ」谷村新司「昴」かぐや姫「22才の別れ」。気づけば水を2回も汲みに行くくらい聴き込んでしまった。カラオケに行きたい。
エアコンの風に吹かれて
退院が決まった。
昨日、主治医からそれを告げられる。ははぁ、さいですか、ありがとうございます、とペコペコしつつ診察室を出ると、入る前とはなんだか病棟の空気が変わったような。いや、というよりは自分の感じ方が変わったんであろう。
些細な言葉や些細な出来事で、自分が立っている場所や環境の見方であったり感じ方であったりというのはガラリと変わるものだ。
病棟に戻ってベッドにゴロリと寝転がって、天井をしばし
まあ要するに、出会いと別れ。
今日またひとりふたり退院していった。
おふたりとも入院してしばらく経った頃に話しかけてくださり、お世話になった方なので、やっぱりどこか寂しさもひとしおなのである。
そのうち1人は手書きのメッセージをくれた。驚きであるし照れくさくもあるのだが、こんなどこの馬の骨かもわからぬような人間に律儀に手書きのメッセージまで、、、と思うと有難い。一生持っておこうと思った。
退院していったおふたりともに次どこかで