名前をつけてやる
いつのまにか、自分の名前を好きになっているな、とふと思った。ハンドルネームではなく本名のことである。
好きというとなんだか照れくさい気もするので、気に入ってるというほうが丁度かもしれない。
というのも、19,20くらいまではあまり好きでなかったというか名前が少しばかりコンプレックスであった。
割と同名の方をたまに見かけたり耳にしたりするので極めて珍しいだとか珍奇だとかという訳ではないのだが、それでも形式(パターン?)的にはあまりポピュラーでもなく、言うなればもう少し詳しく書くと本名にたどり着いてしまう可能性がグンと上がる、というくらいには少ない方なんであろう。
で、その名前の何が嫌だったかというと「ひびき」だ。
男性の典型的な名前を適当に思い浮かべて、発音してみていただくと分かるのだけど、締まりがある。はっきりしている。
しかし、一方でおれの名前というのは締まりがない。さすがにここに本名を書く勇気がないので読んでくださっている方の想像に委ねるが、なんというか、発音した時にどうしても腑抜けてしまうというか、ブーブークッションに引っかかったような、擬音で表すとするならば、
「ポヘェ」
という感じになってしまうのである。
今書いていて気づいたのだけれども、女性の名前でこの形式のものってないのかもしれない。少なくともおれは今まで見たことも聞いたこともない。
その締まりの無さがとにかくずっと嫌で口には出さなかったものの、小学5,6年くらいから思春期の初め辺りの頃は「もっとかっこいい名前にしてくれれば」などと本気で思ったりもした。親泣かせである。
しかし、年を重ねていくといつしか「そんなことは些細な事だ」と気づき、いつの間にか気にもしなくなる。寧ろその名前の形式やひびきのおかげで覚えて貰いやすかったり、名前を基にして、親しみを込めたあだ名で呼んでくれる人も出てくる。ありがたい事だと思う。
けれども、こうして好きになれるまでに至ったのは、おれの好きな人たちが名前を呼んでくれる時の「ひびき」が好きだから、というのが大きいのかもしれない。
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