
難病退職者の視点で読む「女の国会」~社会問題を小説で描く難しさ(ネタバレなし)
45才公務員👉無職・ぼっちおじさんの「ありのこ」です。
2023年に潰瘍性大腸炎という病気(=難病)のため国家公務員を退職に追い込まれました。
〇〇省勤務ではなく出先機関に20年以上勤務していた事務系公務員でした。
今は無職・無収入です。
少ない資産お金をはたいて、あり余る時間を使って新川帆立センセイの「女の国会」を読みました。
せっかくなので「女の国会」を取り上げたいと思います。
・新川帆立「女の国会」アマゾンで高評価、ネットでも高評価
アマゾンの評価は全117件で★4.1(2024年12月6日現在)
かなりの高評価です。
ネット上でもほぼ良い評価・感想で溢れています。
私はひねくれものなのであえて、肯定的ではないことを書いてみようかと思います。
別に「女の国会」を批判するのではなく肯定的な感想はネットに溢れているので別の視点を提示したいと思います。
・新川帆立「女の国会」のテーマ~令和の社会派ミステリー小説?
「女の国会」で取り上げているテーマとしてパッと思い当たるのが「政治の世界は女性が圧倒的に少なく不利」「セクハラ」「ジェンダー問題」あたりだと思います。
政治的には左派が好みそうな問題ですが、私自身は無党派層であることは先に書いておきます。
著者は「元カレの遺言状」でデビューした作家さんですが「女の国会」では社会問題を取り上げています
「元カレの遺言状」とはかなり違った印象を受けました。
「女の国会」は「社会問題+ミステリー」で構成されています。
これは完全に個人の感想ですが「かなり社会問題に振り切った」ように感じます。
さらに個人の感想ですが「ミステリーはオマケ」のようにすら感じました。
別に社会問題に振り切った(ように感じた)ことを批判しているのではありません。
かなり昔「社会派ミステリー小説」が大流行した時代もありました。
社会派ミステリー小説=社会問題を扱ったミステリー小説
くらいに思っておいてください。
昔の社会派推理小説だってすべて「社会問題:ミステリー=1:1」のバランスだったわけではありません。
社会問題に重点を置いた作品もあれば、ミステリーに重点を置いた作品もありました。
「女の国会」をもし社会派ミステリー小説だとすると「社会問題に重かなり点を置いたミステリーの形をとった小説」だと感じました。
・1950年代 松本清張「点と線」~社会派ミステリー小説の時代
たとえば松本清張「点と線」。
いまだに「社会派ミステリー小説の金字塔」と言われる作品です。

この「点と線」を持ち上げて「女の国会」をこき下ろそうという訳ではありません。
2作品が社会問題として取り上げているテーマを比較したいと思います。
松本清張「点と線」で取り上げられている大きな社会問題は「官庁の汚職」です。
「汚職=悪いこと」に反対する人はほとんどいない。
どんな官僚が優秀であっても汚職をして良いなんて人は皆無です。
汚職はどこまでも言ってもどんな人にとっても悪です。
こういう「どこまで行っても悪」をテーマにして社会派ミステリー小説を書いたのが松本清張「点と線」だったと思います。
・2024年 新川帆立「女の国会」~女性だけがひどい目に合っているのか問題
たとえば新川帆立「女の国会」では
・女性の国会議員が少なすぎる
・女性たちがひどい目に合っている男社会である(政治家・秘書だけではなく女性の政治記者も描いている)
を社会問題として描いています。
私は「女性の国会議員をもっと増やすべきだ」「女性の人権を守られるべきだ」と思います。
しかし「女性の国会議員を増やせば政治は絶対に良い方向に向かうのか?」「女性だけがひどい目にあっているのか?」と聞かれるとYESと断言できません。
「汚職は少しでもなくすべきですよね?」「汚職を少しでもなくせば行政は良くなりますよね?」と聞かれればYESと答えられるのに。

「女の国会」について1つの例を挙げておきます。
「女の国会」では政治記者視点のパートがあります。
記者たちが男性有力政治家にくっついて行動するシーン。
キャバクラみたいなところで女性記者がセクハラを受けても周りの男性記者は助けてくれない。
やはり、誰も守ってくれないんだな、と思った。
冷たい塊が胃の奥に沈むようだった。
男は男の話しか聞かない、男の人が何か一言でも言ってくれたら、相手は変わるかもしれない。
少なくとも、こちらは救われた気持ちになる。
だが大多数の男性にとって、この手の話題は触れたくないのだろう。
セクハラは悪いことです。
そして私はおじさんなので女性の気持ちがわかりません。
それらを前提に書きますが「これって男性だけの問題なの?」と思います。
セクハラから広げて考えてみたいと思います。
男性記者たちが黙っている大きな理由は「その有力政治家の機嫌を損ねたら取材に応じてもらえなくなるかもしれない」からだと思います。
男性記者だって楽しているわけではない。
夜中まで有力政治家にひっついて大変な訳です、男性記者だって。
そんな大変な思いをしているのに相手に機嫌を損ねて「今後はお前の取材は受けない!」となるリスクを取れる人がどれほどいるのか?
道徳的には助けてあげるのが正しいですよ、もちろん。
「じゃあ、似た状況で手を差し伸べる女性はどれほどいるんですか?」という話です。
自分がマイナスを食らうかもしれない。
こんな時に弱者に手を差し伸べる「人」ってかなり少ないでしょ。
それって男女関係ないですよね。
で、ここからは私の実話です。
私は潰瘍性大腸炎(難病)患者なので弱者だと思います。
・で、お子持ちさまママは難病患者の私を助けてくれましたっけ?くれませんでしたよね?
私は20年以上国の出先機関に勤務していました。
そのうち15年以上潰瘍性大腸炎患者として過ごしました。
(国家公務員になってから潰瘍性大腸炎を発症したということ)
役所なので男女平等です。
本当に男女平等でした。
女性から見れば不十分なのかもしれませんが、お子持ちさまママにはちゃんと配慮していました。
ここで問題が生じます。
お子持ち様ママに配慮すれば、誰かほかの人たちがその分を被らないといけない。
簡単に言えば「仕事量が増える」ということです。
(本当は単純に仕事量が増えるだけではなく、周りはもっと大変な目に合います。話が複雑になるのでここでは触れません)
ここで「配慮すべき人」の間に無言の争いが起こります。
お子持ちさまママVS潰瘍性大腸炎患者の争いです。
で、勝つのは毎回お子持ち様ママです。
「女性の人権=ものすごく大切」なのでしょう、きっと。
こっちは独身ですよ。
結婚すらしてません。
難病患者だと相手の人生に責任が持てなかったり・・・いろいろあってずっと独身で子供もいません。
そんな難病患者に対して手を差し伸べたお子持ち様ママは何人いたでしょうか?
あ、1人いました。
15年でたった1人。
笑っちゃいますよ。
「私がそのお子持ち様ママのせいで食らった負担=100」だったとします。
100(以上)返してくれたお子持ち様ママはたった1人だけ。
この1人はマジで立派です。
敬意を表します。
その他のお子持ち様ママは100を返してくれませんでした。
つまり私に負担を与えたけど、与えっぱなしで終わりです。
せいぜい返してくれても10くらいです。
ケタが違うだろうと(苦笑
だって下手に私にちゃんとお返ししようとしたら自分にマイナスが返ってくる可能性がありますからね。
子育てを理由に難病患者に押し付けいた方が楽ですもんね!
これってセクハラを黙って見殺しにしていた男性記者たちと一緒でしょ?
自分がマイナスを食らうかもしれない。
こんな時に弱者に手を差し伸べる「人」ってかなり少ないでしょ。
それって男女関係ないですよね。
夫が子育てに協力してくれない、だから男が悪い?
私には関係ありません、夫婦で話し合ってください。
私は難病患者だったこともあり、結婚歴はありませんから。
(生涯独身なのは難病のせいだけだとは思いませんが、大きな理由ではあります)
私が勤めていた組織では妊娠・出産・育児で女性が退職したという話を20年以上聞いたことがありません。
しかし難病患者(潰瘍性大腸炎)の私は退職に追い込まれました。
このことを私と一緒に仕事をしたお子様ママたちはどう思っているでしょうか?
何も感じてないでしょうね、どうせ。
1人を除いて。
何か感じるような人たちならこっちが負担した分のお返しをしてくれたでしょうから。
5とか10ではなくせめて50は返してくれたでしょう。
結局、女性だっていざとなったらセクハラに黙り込んでいた男性記者たちと一緒です。
男女は関係ない。
大多数の人はそんなに高い道徳を持っていないのです。
さらに念押し。
「子無し奴隷から見た子持ち様:産休クッキー問題の深層」というnote記事を書いています。
この記事の一部をもう1度ここで載せておきます。
・ある難病患者が退職に追い込まれる お子持ち様たちはだれも退職しないのに(2005年~2023年 本当の話)
私の経歴を書いておきます。
国家公務員として出先機関に勤務していた2005年に潰瘍性大腸炎を発病します。
働いていたら前ぶれもなく急に病気になりました。
潰瘍性大腸炎は原因不明の難病です。
そして2023年に潰瘍性大腸炎のため退職に追い込まれます。
44才。
まったく今後の当てがない状態です。
15年以上潰瘍性大腸炎患者として役所勤めをしてました。
病状は良くなったり悪くなったりします。
病状が悪くなったときは私がかなり配慮される側に回りました。
この点はほんとうにほんとうにほんとうに周りの方々に感謝しています。
しかーーーーーーーーーーーーーし!!!!
15年以上の潰瘍性大腸炎患者だった全期間を振り返ると
私がお子持ち様に配慮した総量>>>>>私が潰瘍性大腸炎患者として配慮された総量
だと思います。
配慮を数値化してみると、です。
私が思いっきり配慮されたのは15年以上の期間のうち5年くらいだと思います。
下手をすれば5年に満たないかもしれません。
(休職期間を含みますが、休職期間は1年未満です)
500倍くらい私が配慮した方が多いように思います。
あくまで体感であり、自分に甘いかもしれませんが。
私が難病患者として配慮されるよりも私がお子持ち様たちに配慮する方が500倍多かった
どう考えてもステキなくらい収支が合ってませんよね?
お互い様ですか、これ?
お子持ち様に配慮していたときの私は病状がマシなだけで配慮が必要な人間ですよ。
でもね、、、やっぱりお子持ち様が配慮すべき最上位に君臨してるですよ。
子持ち様たちに配慮した難病患者が44才で退職に追い込まれます。
難病持ちの44才おじさんが当てもなく退職に追い込ました。
「人生詰んだ」です。
あ!
言い忘れてましたが私は「ぼっち」です。
結婚歴もありません。
彼女も子供もいません。
一人っ子なので兄弟姉妹もいません。
孤独死まっしぐらです。
ほんとうにステキな残りの人生ですよね(最上級の皮肉)。
他方、私が難病を抱えながら配慮した(ということは私もマイナスを食らう)お子持ち様たちで退職したなんて話を聞いたことがありません。
1人たりも。
お子持ち様のせいで退職したわけではありません。
だからお子持ち様を責めるのはおかしいですか?
しかし私は人間です。
感情があります。
お子持ち様たちに告つぐ
子どもがいるのは子どもができる行為をしたんですよね?
あなたの選択でしょ?
私が潰瘍性大腸炎患者になったのは、不摂生をしたからではないですよ。
原因不明の病気ですから、私の選択ではない。
それでも私が配慮し続けたお子持ち様は働き続けることができて、お子持ち様たちに配慮されなかった私は退職に追い込まれた。
マジでこれってどうなの?
私が残りの人生を気分よく過ごせるとほんとうに思いますか?
これは合理性ではなく感情の問題です。
・社会派ミステリー小説を書くのが難しい時代になった?~社会問題が複雑になった
以前のnote記事の再掲載はここで終了です。
長々と自分のことを書いてしまいました。
しかもかなり過激に。
ここで社会派ミステリー小説の話に戻ります。
本題はここなんです。
社会派ミステリー小説が社会悪を書くのが難しくなってしまった。
それは社会悪が複雑になったから。
汚職はどこまでも行っても悪です。
1990年代まではひどい汚職がありました。
松本清張「点と線」では官僚の汚職が書かれています。
「点と線」が書かれたのは1950年代ですが、1990年代にもひどい官僚汚職事件がありました。
1998年には大蔵省接待汚職事件がありました。
大蔵省って現在の財務省です。
ノーパンしゃぶしゃぶ事件と言った方がわかりやすいかもしれません。
あまりにもみっともなくて言いたくないですが、ハレンチきわまりない事件でした。
官僚ではなく政治家の汚職では1988年「リクルート事件」や1992年「東京佐川急便事件」もありました。
2024年でも自民党の「政治とカネ」は尾を引いていますが、1990年代までの自民党「政治とカネ」は今と比較にならないほどひどかったです。
汚職のような20世紀型社会問題は「誰が考えても悪」と言い切りやすい。
でも今の社会問題ってほとんどが「誰かにとっての悪でも他の人にとっては悪ではない」とか「もっと広げれば〇〇だけの問題じゃないよね」と絶対悪になりにくいと思います。
LGBT‐Qと汚職を比較すれば汚職を社会問題だと思う人は圧倒的に多いでしょう。
LGBT‐Qは社会問題だと思っている人の中には「LGBT‐Qの権利をもっと守れ!」という人もいれば「LGBT‐Qの権利ばかり守られるのが社会問題だ!」と考える人もいます。
ここで言いたいのは「どっちが正しい」かではなく「今の社会問題は絶対的な悪ではなくなった」ということです。
となると2020年代に社会派ミステリー小説を書くのは難しいように感じます。
どの社会テーマを選んでも賛成・反対が割れることを前提に書かざるを得ないので。
・終わりに
長々と書きましたが「今って社会派ミステリー小説を書くのが難しくなったよね」という話です。
新川帆立「女の国会」を批判したいわけではありません。
アマゾンの評価は全117件で★4.1(2024年12月6日現在)
かなりの高評価です。
むしろ読んでほしいくらいです。
もし未読の方がいらっしゃったら、このnote記事で書いてあることをちょっと頭の片隅に入れながら読んで頂けると嬉しいです。
別に私の考えに賛成する必要はまったくありませんので。
一部引用したnote記事をもう1度載せておきます。
全文の興味があればぜひお読みください。
関連するnote記事を載せておきます。
こちらは有料記事となっております。
note記事は以上です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
もしこのnote記事の反響が大きければ第2弾を書きます。
「男、特におじさんだけがそんなに悪いのか?」問題です。
このnote記事へイイね、コメント、SNSでの拡散していただけるとありがたいです。
私「ありのこ」がnote以外で行っている情報発信の一覧を作りました。
SNS・音声配信・ほかのブログを載せています。
興味があればぜひチェックしてみてください。
さらにフォローしてくれると喜びまくります。
昼マック pic.twitter.com/ci8Wc0BV3l
— ありのこ/元公務員無職ぼっち (@arinoko1979) December 2, 2024
現在、私は潰瘍性大腸炎という難病のため無職・無収入です。

皆さまの応援があると本当に助かります。
・フォローしてくれる=励みになります!(無料)
・ピンクのハートマーク(スキ)=励みになります!(無料)
・気に入ったらサポート(クリエイターサポート)=いわゆる「投げ銭」です 無職・無収入なのでかなり助かります!
・有料コンテンツの購入=無職・無収入なのでかなり助かります!
・このnote記事にあるアマゾンアソシエイトからの購入
いいなと思ったら応援しよう!
