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功利主義まとめ⑨(完結)功利主義の長所
ここまで、古典的功利主義とその後の展開についてまとめてきた。
最後に、功利主義の長所についてまとめる。
① 整合性・単純性・包括性
功利主義は、矛盾した結果とならないという整合性とともに、単一の原理にもとづいてあらゆる問題に判断を下すという単純性・包括性を有する。
② 直観レベルの思考の是非・優劣判断可能性
功利主義は、直観的規則の是非や優劣を、功利原理により比較し検討することがで
功利主義まとめ⑧直接功利主義と間接功利主義
直接功利主義
直接功利主義とは、功利原理を、個々の意思決定の際に適用するという考え方である。
間接功利主義
間接功利主義とは、功利原理を、規則や動機の道徳的評価をする際に適用するという考え方である。
直接功利主義と間接功利主義の違い
直接功利主義は、功利主義をして、行為の評価基準であるとともに決定手続きでもあると考える。すなわち、行為が正しいかどうかを評価する場面(評価基準)でも、
功利主義まとめ⑦行為功利主義・規則功利主義・二層理論・動機功利主義
行為功利主義
古典的功利主義は、事の是非を「行為」によって効用が最大化されるか否かという点で評価する。すなわち、「行為」の効用に着目するのである。これを「行為功利主義」という。
行為功利主義批判
行為功利主義は、上記のように当該行為による効用の最大化を志向するため、例えばいじめ行為などであっても、それが社会の効用を増大させるかぎりにおいてを正当化してしまう。
また、約束を守ることと破る
功利主義まとめ⑥総量功利主義と平均功利主義
総量功利主義(単純加算主義)
古典的な功利主義は、総和主義かつ最大化主義(幸福の総量の最大化を志向する)をとる。このような最大化を志向する功利主義を「総量功利主義」という。この立場からは、人口を増やすことによって幸福の総量を増加させることに価値を認めることになる。
総量功利主義批判
総量功利主義は、幸福の総和の最大化に着目するため、いかに厚生状態が低くても、多くの人が生まれ、幸福の総和が
功利主義まとめ⑤快楽功利主義と選好功利主義
快楽功利主義
功利主義は「最大多数の最大幸福」を指針として行為せよ、とする。そして、ここにいう「幸福」とは、前述(功利主義まとめ①)したように、ベンサムによれば「快楽」を指すものとされる(快楽説)。このような快楽説に基づく功利主義を「快楽功利主義」という。
快楽功利主義批判
快楽功利主義に対しては、以下のような批判がある。
まず、快楽は、個人間比較を正確に行う方法がないと批判される。
功利主義まとめ④積極的功利主義と消極的功利主義
古典的功利主義=積極的功利主義
ベンサムやミルが示したように、古典的功利主義においては、幸福とは快楽がより多く苦痛がより少ない状態であると定式化されている。すなわち、「快楽-苦痛」の総和が最大化することを善いとするのである。このような快楽の最大化を志向する立場を「積極的功利主義」という。
消極的功利主義
これに対して、快楽の最大化ではなく、苦痛の最小化を志向する立場がある。これを「消極的
功利主義まとめ③功利主義批判
功利主義批判
前述(功利主義まとめ②)のように、功利主義は、①帰結主義、②厚生主義、③総和主義という3つの要素からなるとされるが、功利主義に対しては、これらの要素それぞれについて批判が向けられている。
① 帰結主義に対する批判
まず、帰結主義は人間の認識能力の限界を無視していると批判される。帰結主義は、行為の正しさを評価するに際して、行為の帰結を事前の予測に基づいて評価するが、これは、行
功利主義まとめ①古典的功利主義
功利主義とはなにか
功利主義の基本原理は「功利の原理」である。 ジェレミー・ベンサムによれば、「功利の原理」とは、すべての人々の最大幸福を、人間の行為の唯一の正しい目的であると主張する原理である。すなわち、功利主義とは「最大多数の最大幸福」を指針として行為せよ、というものである。人権、平等、民主主義などはそれ自体としては価値を持たず、これらは人々の「幸福」を実現する限りにおいて価値を有すること
功利主義まとめ②功利主義の3要素
功利主義の3要素
功利主義は、現代において、①帰結主義、②厚生主義(幸福主義・福利主義)、③総和主義(総和最大化)の3つの要素からなるものとして理解される。
① 帰結主義
帰結主義は、行為の正しさを評価するに際しては、行為の帰結を評価することが重要であるとする。なお、帰結主義は「結果論」とは異なる。結果論は、行為を事後的に評価するのに対して、帰結主義は、事前の予測に基づいて行為の正しさを