功利主義まとめ②功利主義の3要素

功利主義の3要素

 功利主義は、現代において、①帰結主義、②厚生主義(幸福主義・福利主義)、③総和主義(総和最大化)の3つの要素からなるものとして理解される。

① 帰結主義

 帰結主義は、行為の正しさを評価するに際しては、行為の帰結を評価することが重要であるとする。なお、帰結主義は「結果論」とは異なる。結果論は、行為を事後的に評価するのに対して、帰結主義は、事前の予測に基づいて行為の正しさを評価する。

 帰結主義と対立するのは「義務論」の立場である。義務論は、行為の正しさを評価するに際しては、行為の帰結は無関係であり、道徳的義務や法的義務に合致しているか否かが重要であるとする。

 なお、帰結主義と義務論は、刑法学上の対立である結果無価値論と行為無価値論に大まかに対応しているとされる。

② 厚生主義(幸福主義・福利主義)

 厚生主義は、状態を評価するための情報として、個人の福利・厚生に焦点をあて、個人の福利・厚生のみが善であり、価値を持つものと考える立場である。厚生主義は「幸福主義」「福利主義」とも呼ばれる。幸福主義は、行為が人々の”幸福"に与える影響こそが倫理的に重要な”帰結”であると考える立場であり、内在的価値(それ自体で価値がある)のは、”幸福”だけであるとする。

③ 総和主義(総和最大化)

 利己主義は、他人のことを顧みず、自己すなわち一個人の幸福の最大化を志向する。これに対して功利主義においては、一個人の幸福ではなく、人々の幸福の総和の最大化、換言すれば社会全体の幸福の総和の最大化が重要であるとする。

 ベンサムによれば、その際、「各人を一人として数え、誰もそれ以上には数えない」ようにせねばならず、一人一人が等しく配慮されなければならないとする。このように人々の社会階層・階級・性別などを問わず、すべての人々の厚生を等しく算入することを「平等算入公準」という。

(小括)

 以上より、功利主義は、行為の帰結が人々の厚生・幸福に与える影響を総和し、それが最大化するような行為こそが正しいとするのである。

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