功利主義まとめ⑧直接功利主義と間接功利主義
直接功利主義
直接功利主義とは、功利原理を、個々の意思決定の際に適用するという考え方である。
間接功利主義
間接功利主義とは、功利原理を、規則や動機の道徳的評価をする際に適用するという考え方である。
直接功利主義と間接功利主義の違い
直接功利主義は、功利主義をして、行為の評価基準であるとともに決定手続きでもあると考える。すなわち、行為が正しいかどうかを評価する場面(評価基準)でも、意思決定場面(決定手続)においても、功利原理が適用されると考えるのである。
しかし、意思決定場面においても功利原理を適用すると、いわゆる「幸福のパラドクス」に陥る。常に幸福最大化を優先させようとする結果、幸福最大化が実現されないというパラドクスに陥るのである。
そこで、間接功利主義は、行為が正しいかどうかを評価する場面(評価基準)においてのみ功利原理を適用しようと考えるのである。
このような違いは、行為評価者と行為遂行者が分離されている場合において実践的意味をもつとされる。
例えば、間接功利主義においては、行為評価者である統治者が制度・規則を制定する場面に功利原理を適用すればよく、行為遂行者である被統治者(市民)は、功利原理に基づく功利計算を行うことなく、ただ規則に従って生きていけば善いことになるのである。他方、直接功利主義においては、市民においても具体的意思決定場面において功利原理が適用されなければならないとすることになる。
上記した、統治者に功利主義が適用されるという考え方は、「統治功利主義」の考え方でもある。統治功利主義は、功利主義を個人の倫理としてではなく、統治者の倫理として位置づけ直し、功利主義をして、統治者に対してのみ、社会の効用を最大化せよと命ずるものであると位置づけるのである。
直接/間接功利主義と、行為/規則功利主義との違い
行為功利主義と規則功利主義の違いは、功利原理を「行為」に適用するか、「規則」に適用するか、という功利原理の『適用対象』の違いに基づくものである。
これに対して、直接功利主義と間接功利主義の違いは、功利原理を「行為・規則の道徳的評価場面」にのみ適用するか(間接功利主義)、「行為・規則の道徳的評価場面」のみならず「意思決定場面」にも適用するか、という功利原理の『適用場面』の違いに基づくものである。
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