功利主義まとめ⑨(完結)功利主義の長所

 ここまで、古典的功利主義とその後の展開についてまとめてきた。
 最後に、功利主義の長所についてまとめる。

① 整合性・単純性・包括性

 功利主義は、矛盾した結果とならないという整合性とともに、単一の原理にもとづいてあらゆる問題に判断を下すという単純性・包括性を有する。

② 直観レベルの思考の是非・優劣判断可能性

 功利主義は、直観的規則の是非や優劣を、功利原理により比較し検討することができる。これは直観主義には不可能である。

③ 実証的検討可能性

 功利主義は、行為や政策の正否について、それらが幸福の総和を増大させるか否かを実証的に検討することができる。

④ 非・利己主義

 功利主義は、一個人の幸福ではなく、社会全体の幸福の総和最大化を志向するため、利己主義に陥らない。

⑤ 自由性

 功利主義は、厚生主義(幸福主義・効用主義)という要素を持つが、これは道徳的観点を捨象し、各自の観点からみた厚生状態(幸福状態)を問題とするため、価値中立的であり、幸福の自己決定を肯定するため、親・自由主義的である。

⑥ 平等性

 功利主義は、平等算入公準を前提として、性や階級を捨象してすべての人の厚生を平等に算入するため、平等性を有する。

 


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