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五行詩は短詩だけど俳句や短歌に比べて規則もないのでもっとも作りやすい詩かもしれない。目指せ五行詩の芭蕉? 五行詩だけでなく他の多行詩も加えました。
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#読書感想文

ことばの背筋力を鍛える

ことばの背筋力を鍛える

『ことばを深呼吸』川口晴美,渡邊十絲子

詩のワークショップでのレッスンを通して言葉の不思議さを知る。著者たちの立場は言葉は他者的なものでそれを組み合わせたり、一部を変えたりして、詩を作り出す。シュルレアリスムの無意識の方法みたいな。その無意識の言葉から自分の文脈(文体)としての言葉を組み立てるというような方法。詩だけじゃなく、ブログなどの文章を書くのにも役立つという。真面目にレッスンをやれば面白

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詩の言霊降霊術

詩の言霊降霊術

『詩を書くということ』谷川俊太郎 (100年インタビュー)

NHKで放送された番組の書籍化のようである。インタビューということでわかりやすいし、NHKの番組ならなおさら信頼が置けるのかもしれない。そんなことは知らずにただタイトルだけを見て図書館で借りたのだが、谷川俊太郎は言葉というものが他者のものであり、それを伝達するのが詩人ではと言っているのかもしれない。自分の言葉なんてほとんどないという。ほ

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ダンテ「地獄」温泉で李白と一杯

ダンテ「地獄」温泉で李白と一杯

『ダンテ、李白に会う 四元康祐翻訳集古典詩篇』四元康祐

詩の言葉は他者の言葉として神に近い信仰と愛があるのは、先日読んだ古井由吉と大江健三郎の対談『文学の淵を渡る』で読んだのだが、その延長として詩の翻訳が神から授けられた言葉の伝達ということで、本来神の言葉は翻訳不可能なのである。

それでも詩人たちは、その言葉を翻訳して伝えようとすることは神秘主義のドグマに似ているのかもしれない。この本に掲載さ

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ディキンスンの兄の浮気相手が編集して世に出した詩人

ディキンスンの兄の浮気相手が編集して世に出した詩人

『エミリ・ディキンスン :アメジストの記憶』大西直樹

ディキンスンの評伝なのだが、大西直樹がアマースト大学出身(ディキンスンの父が経営)で「日本エミリ・ディキンスン協会」の会長でもあるのでかなり詳しい。アマーストという土地がピューリタン的であり「自由と伝統」をモットとするような、その思想は同志社大学やクラーク(「(青年よ、大志を抱け」)の教育にもみられ、ディキンスンが宗教的でありながら個人の自由

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みんなで詩作、詩人の輪

みんなで詩作、詩人の輪

『詩探しの旅』四元康祐

まずこの本が詩の専門誌に発表されたのではなく、日本経済新聞に書かれたことに驚く。ほとんど現代詩に興味がない読者だと思うのだ。その読者に向けて朝刊の連載のコラム的な記事を書く。まず読みやすさはそういうことなのかもしれない。それは谷川俊太郎の名代という言葉が現しているのだ。谷川俊太郎の代わりに日本代表詩人として、詩のフェスティバルに参加する。その体験が『偽詩人の世にも奇妙な栄

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消尽つくした詩

消尽つくした詩

『現代詩手帖2024年2月号』

宇野邦一 『光のまちがい、時間のめまい(下)』が掲載されていたので借りた。(上)は『現代詩手帖2024年1月号』に掲載されていたので、その続きが気になった。

この号には、伊藤比呂美『根』も掲載されていた。『現代詩手帖2024年1月号』には出てないので何かトラブったのかと思ったがそうではなかったのか?『現代詩手帖2025年1月号』も掲載されてないな。なにか事情があ

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現代詩総合プロデューサーか?

現代詩総合プロデューサーか?

『噤みの午後』四元康祐

最初のエイリアンの詩でハマった(詩だけではなくこの人の書くエッセイや小説も面白いので最近読み漁っていた)。エイリアンの世界にワープする詩で他者の言葉は全てエイリアンだからそれとの格闘から詩は始まるというような。

ポップなメタフィクション系の詩で好みだった。だいたいが妄想的な過去の詩人や芸術家と対話するような詩でわかりやすいと言えばわかりやすい現代詩であった。作家の高橋源

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母なる言葉を求めて

母なる言葉を求めて

『偽詩人の世にも奇妙な栄光』四元康祐

ジョン・キーツ『詩人の手紙』の引用から。

言葉が親の口真似から覚えるように詩人も誰かの模倣から入るという自己模倣という表現は、キーツ『詩人の手紙』にあるようにあたかも固性があるように振る舞うが、それは代々受け継いだ他者の言葉の応答であるように、一概に剽窃とは言えないのではないか?

言葉が他者の言葉である以上に詩人はそれを利用するのであり、漱石の則天去私は

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方丈記のような家族物語詩

方丈記のような家族物語詩

『冬が終わるとき』竹中優子

「 攫う」川をするという合言葉で河川敷でぼーっとする恋人がいて、別れた詩は「方丈記」みたいだったが、「植物図鑑」正月にイオンのフードコートに集まる人のなかでテーブルを拭いたりするバイトをしていたり、「宝石」家庭不和の詩だったり(祖母と母の不和とか)、「午後三時、金曜日、風の強い日」「骨壺」父が死んだ葬儀の詩だったりするのだが、「昨日」妹の失踪が警察沙汰になったりしたあ

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ただいま推しの詩人

ただいま推しの詩人

『パレスチナ詩集』ダルウィーシュ,マフムード【著】/四方田 犬彦【訳】 (ちくま文庫 )

ガザの壁にはマフムードの詩「壁に描く」のプレートが貼られているYouTubeがあがっていて、まさに今のガザの詩なのだと思った。日本では落書きは消されてそういう煩雑さはなくなったのかもしれないが落書きがあった頃はそういう物語を欲していたのだと思う。それが単純な歌詞であっても。詩が物語として力を持っているならば

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漢字が難しいのが難点。

漢字が難しいのが難点。

『文選 詩篇 (一) 』川合 康三/富永 一登/釜谷 武志/和田 英信/浅見 洋二/緑川 英樹【訳注】(岩波文庫)

『文選』の詩篇ということで漢詩中心のようだ。元は120巻の文集だったのか。膨大な量である。

その中の「詩篇」だけでも文庫本で6巻もあるのだった。読み切れるかわからないが、日本の文芸でも手本とされたようだった。

巻19 補亡、述徳、勧励(補亡;述徳;勧励)

「補亡」は本文の詩が

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長谷川龍生のイタコ詩は憑依する「もの」の世界

長谷川龍生のイタコ詩は憑依する「もの」の世界

『長谷川龍生詩集』 (現代詩文庫 )

現代詩文庫が現代詩を研究するのには一番適しているのか?1968年創刊から日本を代表する現代詩人たちで第一期・第二期を合わせ約290冊ということだった。第二期は重複するから、とりあえず第一期の100人は見ておこう。

長谷川龍生は、寺山修司『戦後詩 ユリシーズの不在』で寺山修司から好意的に取り上げられた詩「恐山」がけっこう気に入ったので読んでみたくなったのだ。

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『石垣りん詩集』を読む

『石垣りん詩集』を読む

『石垣りん詩集』伊藤比呂美編集 (岩波文庫)

梯久美子『この父ありて 娘たちの歳月』で石垣りんの人を知り、「100分de名著 for ユース」の第4集で石垣りんが取り上げられてますます興味を持って詩集を読んで見たくなった。

伊藤比呂美の解説がわかりやすい。初期というか全体的に政治色の強い伊藤比呂美の言葉にするならアジテーションというような詩が多いのだが、それは時代性なのかな。敗戦後から自由な意

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