碧衣いろ

とうほく出身関西在住/33歳会社員/言葉を通して自分と向き合いたい

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こっそり自己紹介

初めまして。 碧衣 いろと申します。 noteを始めて一ヶ月経ちました。 自己紹介をするのは、自分の作品と呼べるものをいくつか出してからにしようと思っていたのでこのタイミングになりました。 実を言うと、自己紹介があまり得意ではないのです。この記事で自分のことや自分がやりたいことをうまく伝え切れる自信がないので、先に作品があればちょっとマシかなと思って保険をかけてみました。 さっそくですが、自己紹介を始めたいと思います。苦手なことなのでささっといきます。 ✴︎ 名前 

    • 失ったものと失わなかったものがある。間に横たわる違いはきっと(、運だけ)

      • 心残りをひとつ消化した話

        先日、以前通っていた美容室の担当の方に、2年越しの挨拶とお礼を伝えることができました。 その方にお世話になったのは、今住んでいる所に移る前の約3年間。 最後に会ったのは2年前の2月で、もうこの頃には翌月の引っ越しが決まっていたのに、どうしても今日が最後だと言い出せず、結局それきりになってしまっていました。 なぜ、あの時言い出すことができなかったのか。 今となっては記憶も曖昧で、思い出せるのは今まで一切彼氏の話をしなかったのに、いきなり結婚のために引越す話をするのが恥ずか

        • お月さまをあなたに

          「なぁ、ツキミソウって知ってる?」 「……名前なら聞いたことあります。詳しくは知りませんけど」 花の名前ですよね、と私が問いかけると、 「月見草。待宵草(マツヨイグサ)属の植物。同属種であるオオマツヨイグサ、マツヨイグサ、メマツヨイグサのことを月見草と呼ぶこともある。夏の夕方に開花し翌朝にはしぼんでしまう。花名は、月が現れる時間帯に咲くことに由来するといわれる」 高野さんは一息でそう説明し、携帯の画面を私に突き出すと糸が切れたように机に突っ伏した。 「俺も朝になったら

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        こっそり自己紹介

          旅の始まりと朝ごはん

          LCCを利用する時、良い時間というのは大抵売り切れていて、余りものは出発時間が異常に早いか遅いか、まるで両極端なことが多い。 当時、大手航空会社を選べるほど金銭的な余裕がなかった私にとって、彼に会いに行く時の選択肢はいつも一つだった。 その日もGoogleマップで電車の時間を調べ、朝起きる時間を逆算しながら、迷わず早い時間をクリックする。 少しでも長く、少しでも多く会えるように。 前の日は絶対飲み会入れられないな、とか、飛行機の中は爆睡だな、とか、そんなことを考え

          旅の始まりと朝ごはん

          水と塩分 #文脈メシ妄想選手権

          遮光性カーテンの隙間から、光が一すじ差し込んでいる。暗がりの中、携帯の画面に浮かんだ数字は、今日という日の三分の二が過ぎ去ったことを私に教えてくれた。 休みとは言え、ずいぶん長く寝入ってしまった。数時間後には再び閉めるカーテンを、申し訳程度に半分開く。 あまりに眠り過ぎたのか、頭がズキズキと痛んだ。起床後の頭痛は脱水症状が原因だっけと、おぼつかない足取りでキッチンへ向かう。 ひとまずコップに水を汲み、喉を潤すけれど何かひとつ足りない気がして、ふと、冷蔵庫にキュウリの漬物

          水と塩分 #文脈メシ妄想選手権

          ちいさいトマトを小瓶につめて

          「アンタ、ミニトマト欲しい?」 「えっ、いるいる」 じゃあ明日10時にうちね、と言い残して母の電話は切れた。 大量のおすそ分けでもあったんだろうか。一人暮らしの身としては、もらえる物は何でももらっておきたい。 時間指定が少し気になったけれど、きっと他に予定でもあるんだろうと深く追及はしなかった(というより、聞く前に一方的に切られてしまった)。 なぜもう一度かけ直さなかったのか、次の日私は後悔することになる。 ✴︎ 「トマト狩りぃ?」 「そうよ、昨日言ったでしょ」 絶対

          ちいさいトマトを小瓶につめて

          傷は勲章とよく言うけれど

          他愛もない話をしながら、久しぶりに顔を合わせた従姉妹をそっと見つめる。 大学に通うため遠方に引っ越してから、彼女は飛行機代が高くつくからとお正月やお盆を避けて帰るようになり、その時期以外休めない私とは長くすれ違いの日々が続いていた。 「仕事はどう?もう慣れた?」 手早く服を脱ぎながら、浴室に持ち込むものを取りまとめる。祖父母の家から歩いて数分のこの温泉施設には、昔から帰る度にお世話になっている。 今年地元に戻って就職したばかりの彼女はそうだなぁと呟き、とりあえず中に入ろうと

          傷は勲章とよく言うけれど

          ブロッコリーのおいしい食べ方 ♯同じテーマで小説を書こう

          ーーあ、 「捨てちゃうんだ」 これ、と切り離されたブロッコリーの茎を指差すと、彼女はこともなげにうなずいた。 「だっておいしくないでしょ?皮が固いし見栄えも微妙だし」 皮、とは茎の表面のことを言っているのだろうか。それなら包丁でそこだけ削ぎ落とせば、十分やわらかく食べることができる。 「そっか」 一瞬頭に浮かんだことを飲み込んで、ぼくはリビングに戻った。下ごしらえについて話しても良かったが、それで彼女の機嫌を損ねるのは本意じゃない。 付き合って3ヶ月の彼女は、彼

          ブロッコリーのおいしい食べ方 ♯同じテーマで小説を書こう

          時間をかけてゆっくりと

          自分語りが苦手だ。人のではなく、自分語りをする自分がどうしても好きになれない。 自分のことを書こうとすると、どうしても「昔は苦労したけど今は乗り越えて良い経験にできている(らしい)」自分とか、「これまで人より物事を深く考えて生きてきた(らしい)」自分がむくむく顔を出して勝手に歩き出して、文章のあちこちに「こんな私、良くない?」を植えつけ始める。 自己顕示欲が強いと言えばいいのか。とにかく自分を認めてほしい。一目置いてほしい。 大抵それに気づくのは後から読み返した時で、それ

          時間をかけてゆっくりと

          アーカイブ

          あなたは憶えていますかと、尋ねる声が彼方から聴こえる 送り送られそれきりになった人たちを思い出させる春の匂いとか 夏の山道を走りながら聞いた叫ぶように歌うロックバンドとか 晴れた秋の日に見上げる高く遠く澄んだ空とか 目当てにしてたイルミネーションより、車窓に連なる照明灯の方が記憶に残った冬の夜とか 日々新しいことを吸収し旧いことを忘れていく中で、どこか遠くへ送られていったわたしのいつかの記憶たち

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          言葉さがし

          騒がしくて何しても追い払えなかった頭の中の雑音が、ひと時言葉と向き合うことですっかり収まることがある。 振り切れたゲージが元に戻る。 散らかった心が均される。 そんな感じ。 ふと思ったことをなんの強制も受けず、一つひとつ言葉に落とし込んでいると、しばらくしてその変化に気づく。 どうってことない、けれどちょうど浮かんできてしまった事柄を、あの言葉?この言葉?とパズルのピースを探すように自分の心に問いかける。 しっくりくる言葉が見つかった時は、何度もしみじ

          言葉さがし

          取り残されてみて

          今でも夢だけで会う人がいる。 大学の卒業式に向かう電車で偶然会って別れたあの子。どうしてあの時急いで先に行ってしまったのか。聞けないまま今に至る。 思えばせっかく違う高校から同じ大学に入れたのに、あまり会うこともなかったね。 今ごろ何してるかなあ。子どもの頃はあんなに仲良しだったのに、変わってしまったのはどっちだったろう。

          取り残されてみて

          ただの人

          感想を書くのが人一倍遅い子どもだった。国語の時間の感想文とか、大人になってからだとアンケートの感想欄でさえも。 何を書いてもしっくりこない気がして、書き直し書き直ししているといつの間にか机に座っているのが自分だけなのに気づく。 結局ピンと来ないまま当たり障りない言葉を連ねて書いただけの感想に何か思う人なんていないんだろうなあと思う私はただの人。

          居場所

          文字を書き出そうとする時はいつも億劫な気持ちになる。言いたいことがうまく言葉に表せるのか不安になったり、表せないくらいなら最初から何もしたくないと投げやりになったり、ようやく書けたとしても公開後に周りの反応をそわそわと気にするだろう自分が想像できてため息が出る。 本名公開型のSNSにはしばらく投稿していない。生身の私を知っている人間に自分の中身をさらけ出せるほど私は強くない。 だから、自分の中身をさらけ出すような文章をここで書きたいと思っている。書くだけなら自由でしょう。