『野生のアイリス』ルイーズ・グリュック
こんにちは、天音です。
今回の読書感想は、ルイーズ・グリュックの『野生のアイリス』(KADOKAWA)です。
昨年2020年にノーベル文学賞を受賞したルイーズ・グリュックさんの作品を、初めて日本語訳した本です。
表題になっている『野生のアイリス』を含めた54編の詩が掲載されています。
対訳です。
左のページに邦訳、右ページに原文という構成になっているので、グリュック本来の良さと日本語訳、どちらも余すことなく楽しむことができました。
創造主である神と、神を信仰する詩人(人間)、草木のモノローグ形式の詩。
庭の手入れをする人間や、そこに生きる草花が多くモチーフになっています。
この本は、読む前少し不安がありました。
ノーベル賞作家の作品を今回初めて読んだんです。
詩も普段から読まないような人間です。お恥ずかしい。
しかも対訳って。
最初から飛ばしすぎたかなと思ったのですが、それは杞憂に終わります。
この詩集の言葉はしんしんと心に染み込むようで、美しく、私を捉えて離しませんでした。
第一印象としては、けっこう宗教色が強いかな。
神が何度も出てきますしね。
“We merely knew it wasn’t human nature to love
Only what returns love” (012)
冷たい信仰。やるせない不満。
それらをひっくるめた愛。
冷厳、静謐。
読んでいる最中、そういった言葉が浮かんでは消えます。
読み進めて行くと、まるで冷たい朝露が葉から滴っていって、澄み切った水がわたしの中を満たしていくような感覚になりました。
もし、人間が絶滅してしまったとしても、草花は変わらずにあり続けるんだろうなとか思ったり。
グリュックさんは二年間一編も詩がかけず、この詩集はその期間を抜けてから二ヶ月で書いた“奇跡の詩集”なんだとか。
冒頭の詩、『THE WILD IRIS/野生のアイリス』の初めはこうです。
“At the end of my suffering
there was a door” (008)
“苦しみの果てに、扉があった”
その扉は、楽園の庭の入り口でしょうか。出口でしょうか。
どうでしょう。
あなたも、研ぎ澄まされた言葉に浸って考えてみてください。
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