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あなたとお茶を、家族のように
【ここでは義理の母を「母」と呼び、実の母は「私の母」と表記します。ご了承下さい】
今から20年以上も前。
結婚を控えた私が、初めて相手の両親に挨拶に行った時のことである。
俗に言う嫁姑問題は、往々にして初対面からそのタネが蒔かれることも多い。私は緊張しながら相手の家にお邪魔した。
初めて会った相手の母は、想像以上に若かった。
事前に年齢は聞いていたが、それを頭に入れていても驚くぐらいだ。
ちな
週末スイッチ【僕らのあざとい朝ごはん応募作】
――ようやく一週間が終わった。
一人暮らしの狭い部屋に辿り着くや、仕事の疲れがじっとりと沁みついた服を脱ぎすて、冷蔵庫からキンと冷えた缶ビールを取り出す。
「うっま……」
閉店間近のスーパーで半額になった弁当をかき込み、とりあえず腹が膨れてついうとうとしかけた雅斗は、慌てて目を開けた。
金曜日のビールに溺れてしまわないうちに、やっておくことがある。
雅斗は冷蔵庫を開けると、卵と牛乳を取り出
春の甲斐路をひとり往く ~やまなし文学賞授賞式・珍道中<前日編> 3135字
やまなし文学賞は、今年で31回めを迎える地方文学賞だ。
正式名称は『樋口一葉記念 やまなし文学賞』といい、山梨県にゆかりのある樋口一葉の生誕120周年を記念して、平成4年に制定されたとある。
私がこの賞に応募した理由は、実に単純明快だ。
「大賞を取ると、受賞作が単著刊行される」
自身の本の出版を目標とする私にとって、公募を選択する時に「書籍化」は大きな魅力となる。
ところが、であった。
やまな
春の甲斐路をひとり往く ~やまなし文学賞授賞式・珍道中<当日編> 3414字
予報どおり、授賞式当日は雨だった。
早めに朝食を済ませておこうとロビーに下りていく。
『城のホテル』の朝食バイキングはとても美味しかった。品数もめちゃめちゃあって、時節柄か小皿にひとつひとつ盛り付けられ、しかもすべてラップされている。さぞかし準備が大変なことだろう。
圧巻の美味しさの葡萄ジュースとほうとうがあるあたり、さすが山梨!と感心しきり。
さて本日は正装なり。しかもすべての荷物+傘を差し
【朗読】シンデレラは眠らない
朗 読:むう様
作品掲載:ショートショートガーデン
『シンデレラは眠らない』
『続・シンデレラは眠らない』
*動画案内の下に原作(ショートショートガーデン『縁コンテスト』応募作品)を掲載しております。
シンデレラは眠らない
「お婆さん、お願い。私もキラキラしたいの。舞踏会に行かせて!」
ぐいぐい迫るシンデレラに魔法使いは怯んだ。
「でも王子の目に留まるには、出会いの縁を結
棘 【#2000字のホラー応募作品】
老婦人は飾り棚の上にぽつりと置かれたサボテンの鉢に、深く皺の刻まれた手を伸ばすと、そっと語りかけた。
「もう生きていても仕方がない。おまえを置いていくのを許しておくれ」
――事の起こりは昨今、巷に蔓延る高齢者を狙った詐欺だった。
老婦人は決して不注意な人間ではなかったが、その生来の人の好さが災いしてか、まんまと詐欺グループの企みに引っ掛かり、多くはないが自身の生活を支えるにはまずまずの蓄えを根
誘惑銀杏(イチョウver.)【毎週ショートショートnote】
「……それ、なに」
グラス越しに訊ねると、相手はそれを口に咥えたまま、ふふふと含み笑いを洩らした。
「ひひょほ」
「は?」
相手は指先でそれをつまむと、もう一度口を開いた。
「イ・チョ・ウ」
派手なネイルを施された指先に挟まれているのは、確かにイチョウの葉だ。
「それは判るんだけどさ。何でそんなもの咥えてるの。酒飲むのに邪魔でしょ」
「イチョウの葉って、扇みたいに見えない? 中国か
三日坊主のクレーター【毎週ショートショートnote】
「よお、五郎さん。何やってんだ、もうすぐ日が暮れるぜ」
雨上がりの田んぼの畦道に座って煙草をふかしていた五郎は、ひょいと振り返った。
「何だい、五郎さんの田んぼ、あちこち穴だらけじゃねえか。猪が山から下りてきて掘りでもしたか」
五郎はぷっと煙草の煙を吐き出した。
「いや、猪じゃねえ。うちの孫だ」
「孫? ああ、都会から遊びに来てたっちゅう坊主かい」
「田んぼが珍しいのか、散々泥遊びしよって
ほんの一部スイカ【毎週ショートショートnote】
「さ、これで舞踏会へ行っておいで。ちゃんと12時までには城を出るんだよ。でないと魔法が消えちまうからね」
「ありがとう、おばあさん。じゃあ行ってきま……何これ、冷たっっっ!」
馬車に乗り込んだシンデレラが、座ったとたんに悲鳴を上げた。
「あー……ちょいと魔法が足りなかったかねえ」
魔女は杖でぽりぽりと頭を掻いた。
「いやね、店に行ったらカボチャが売り切れてたもんで。仕方ないからスイカを使