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小児急性リンパ性白血病の治療で使う薬の副作用を抑えることができたと、東京大学が確認!

こんにちは、翼祈(たすき)です。
この記事の本題は「小児急性リンパ性白血病」ですが、まず説明をしたいと思います。

「小児急性リンパ性白血病」とは血液のがんで、お子さんではB前駆細胞型が最多の患者数で、毎年400人が発症します。昔は不治の病でしたが、色んな治療法が開発され、現在5年生存率は9割以上まで達しています。

ですが、最初の治療で、95%以上のお子さんで、病気の症状が一時的に軽くなったり、消えたりする状態で、ほぼ白血病細胞が消失する「寛解」を達成しますが、少し残った細胞を根絶するために抗がん剤などの治療薬の投与などを受ける強力な治療も必要となります。

強い治療を行うほど、後に神経の障害や心臓の機能低下などの「晩期合併症」を発症するリスクが上がる反面、治療を弱めると、「小児急性リンパ性白血病」の再発率が上がります。

「小児急性リンパ性白血病」を再発させないためのリスクを減らす上で、行う放射線や抗がん剤などの治療は副作用が重く、極めて稀に亡くなるお子さんもいます。

このことを受けて、患者さんごとに再発のリスクを分けて、「晩期合併症」を発症するリスクと、「小児急性リンパ性白血病」を再発するリスクの2つとも減少させる治療法の開発が望まれると言われてきました。

小児がんの中で患者さんの人数が多い「急性リンパ性白血病」は、抗がん剤などの副作用で極めて少数、亡くなるお子さんがいることが大きな課題でしたが、日本小児がん研究グループ(JCCG)など東京大学を主体とした研究グループは、1800人の患者さんが参加した「小児急性リンパ性白血病」の国内での臨床試験(治験)の結果を総括し、生存率が国際的に最高水準の標準治療を確立できたと明らかにしました。

2024年11月12日に、この研究成果がアメリカの臨床腫瘍学会誌にて発表されました。

今回は、東京大学などが最高水準にまで持ってきた、「小児急性リンパ性白血病」の治療法の副作用の減少を紹介したいと思います。

東京大学などが、「小児急性リンパ性白血病」の治療法の副作用を減らした研究成果の詳細

JCCGは、小児科が専門の東京大学の加藤元博教授などと埼玉県立小児医療センターなどの研究グループをメーンに、2012~2017年の5年にかけて、抗がん剤などを減らした時での治療効果を確認しようと、日本各地の1歳から19歳の1800人、お子さんでは8割を占めるB前駆細胞型と診断を受けた人を今回の対象者として、最適な治療法を解析する臨床試験(治験)を実施しました。

臨床試験(治験)では、「標準」「中間」「高」に細かく分類している再発リスクの基準を改良しながら治療薬を用いました。予め検査などで再発リスクが低い患者さんを選出し、放射線や抗がん剤などの回数を減らして全体の治療成績に影響があるかどうかを解析しました。

すると、「標準リスク群」では抗がん剤を減らすことができる様になって、1番弱い治療でも再発リスクが上がらないことの確認が取れました。「高リスク群」でも予防的な放射線照射を無くし、全体として、造血幹細胞移植の対象となる患者さんも減らすことができました。

「晩期合併症」で亡くなる確率も0.6%に抑えつつ、5年生存率は国際的にも最高水準の94.3%でした。

副作用による亡くなる確率が約3分の1に減少したことを受けて、研究グループは副作用を抑えた新しい治療法を確立したと言いました。

研究グループのメンバーで、研究代表者の埼玉県立小児医療センターの康勝好血液・腫瘍科長は、
「『小児急性リンパ性白血病』の患者さんに大きな負担がのしかかる造血幹細胞移植を日本全体で減らすこともできたことは、とても意味のある研究成果になったと思います。

現在考えられている『小児急性リンパ性白血病』で、最高水準の治療を実現することが叶いました。世界中で『小児急性リンパ性白血病』での治療法の発展にも繋がるのではないでしょうか?今後も研究を続け、改善していきたいです」
と説明しました。

東京大学の加藤教授は、
「ただ、今までの抗がん剤だけでは『小児急性リンパ性白血病』の生存率を改善させる限界に来ているかもしません。頻度は少なくなっていますが、再発したり『晩期合併症』で亡くなるお子さんもいます」
とし、今は新たな臨床試験(治験)にチャレンジしています。

参考:小児がん研究グループ発足10年、白血病で世界最高水準の治療を確立 朝日新聞デジタル(2024年)

今回の臨床試験(治験)には日本各地の144の病院が参加しています。加藤教授は、「JCCGを設立したことで、オールジャパンで治療法の開発に励む体制が整いました」と意義を大きく伝えました。

JCCGが発足して12月で10年が経過したことを受け、今まで地道に研究のネットワークを広げたことが、小児がんで国内最大規模の臨床試験の結果に至りました。

急性リンパ性白血病を寛解させた有名人とは?

小児がんではありませんが、2024年に急性リンパ性白血病完全寛解させた有名人の方がいます。

それは、競泳の池江璃花子選手です。

2024年9月25日、池江選手自身のインスタを更新し、当時18歳で、2019年2月に診断された急性リンパ性白血病に関して、「移植を受けてから5年が経過し、本日完全寛解を迎えました!」と記しました。

「退院してからの生活は想定以上に大変で、退院した後も別の大きな病気を患ったり、精神的にも苦しかった時期もありましたが、元気な自分でいると病気にかかっていたことを忘れる瞬間も多くありました。今でもとても長い5年間だったなと感じています」と伝えました。

「完全寛解」とは、国立がん研究センターによりますと、「治療を受けた後で、がんによる検査での異常や症状が見られなくなって、正常な機能が回復した状態」のことです。

池江選手は造血幹細胞移植や抗がん剤治療を経て退院し、競技へ復帰しました。

2021年東京五輪と2024年夏のパリ五輪にも出場しました。

そして「そしてそんな5年間の中でオリンピックを2回経験できたことは凄く嬉しい出来事でした」と想いを報告し、

「競泳では、泳げる様になった幸せと、泳げる様になったことで感じる、虚しさと苦しさと、悔しさ。私の中には逃げるという選択肢は持っていないので、今後もそんな自分と闘いながら全力で競泳と向き合っていきたいと思います。

家族、主治医の先生、看護師さん、どんな時でも私のそばにいてくれて、支えてくれた仲間たち、そしていつも応援してくださる皆さん、改めて本当にありがとうございます」と感謝を綴りました。

参考:白血病の競泳・池江璃花子選手が「完全寛解」を報告 正常な機能回復「今後は自分と闘う」 産経新聞(2024年)

急性リンパ性白血病も、10万人に1人が発症するとても大きな病気です。

それでも池江選手など、急性リンパ性白血病を発症した方が勇気を持って発信して下さること、小児急性リンパ性白血病に関しても、副作用を減らして、再発や合併症、亡くなる確率を減らせるまで辿り着いた、日本の医療は凄いなと感じています。


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