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希少資源の「リン」を含む食器を、レストランやホテルが「リン酸肥料」へ再資源化!

こんにちは、翼祈(たすき)です。
この記事のテーマは、「リン」なのですが、まずは「リン」の基礎知識をお話しします。

「リン」とは、カリウムと窒素と共に肥料の重要な成分です。「リン」を豊富に含む岩石からリン酸塩の形で採取されますが、採取が簡単にできるリン鉱石の83%はアメリカ、モロッコ、南アフリカ共和国、中国の4つの国に集中しています。

人口が増加し続け、農業生産がさらに拡大すれば、「リン」資源はあと100年足らずで枯渇すると想定されています。
 
また、「リン」資源の大量消費は土壌浸食の原因にもなっています。肥料を大量にまく20世紀の近代農業によって、土壌中の「リン」はかつての3倍もの速さで消費される様になりました。アメリカのイリノイ川流域では、1kgのトウモロコシを生産するごとに約1.2kgの土壌が浸食されるといいます。
 
さらに「リン」が河川に流れ込むことでの環境汚染も深刻です。「リン」濃度が高くなりすぎると藻類や藍藻(アノバクテリア)や藻類が大発生して水面を覆い、酸素不足で魚が息絶えます。

藻類の大発生したことで、生物が息絶えた「デッドゾーン」が世界中に拡大し、その面積は地球全体で24万5000km2に達していると推定されています。

この様に必要な鉱物でありながら、鉱物ゆえに土壌や海面などの環境汚染も引き起こす、「リン」。

そんな「リン」を再資源化し、SDGsにも良いことをしようという、取り組みが、ある都道府県で行われています。

2024年度中にもレストランやホテルで破損した食器を回収し、農業用肥料「リン酸肥料」に再資源化する計画がスタートします。陶磁器大手が販売先企業と連携して実施しています。

肥料の主原料である希少資源の「リン」を多く含んだ食器が対象となり、新しい「都市鉱山」から資源を循環させるモデルケースとして期待が持たれています。

今回は、実際に食器を農業用肥料「リン酸肥料」へと変えている石川県を取り上げます。

食器に含まれている「リン」を農業用肥料「リン酸肥料」へ再資源化する先行例

石川県白山市にある陶磁器大手「ニッコー」が、自社の主力食器「ファインボーンチャイナ」を再資源化しています。白く仕上げるために牛骨由来の「リン酸三カルシウム」の含有率がおよそ50%と一般的な磁器より高くことから、国内外の飲食店や高級ホテルで使用されています。

農水省によりますと、リン酸アンモニウムはほぼ全量を輸入に依存し、その6割を中国が占めています。石川県の取り組みは、日本国内で「リン」をまかなうプロジェクトで、大阪大学名誉教授で、一般社団法人「リン循環産業振興機構」の大竹久夫理事長は、「日本国内のリン資源を有効活用できる重要なプロジェクトと言えます。活動を浸透させるには、肥料を使用する農家との連携も欠かせません」と説明しました。

肥料を市販するには、農林水産省の認定が必要で、「リン酸肥料」はリン酸アンモニウムなどが主に活用されますが、「ニッコー」には製造過程で生じた不良品を砕いて粒状の肥料に加工する技術が持ち、2022年、農林水産省から、「リン酸肥料」として認定を受けました。

現在推し進められている計画では、新しく使用済みで破損した食器を「リン酸肥料」の対象とします。現在農林水産省と協議中で、早ければ2024年度中にも肥料として認定される見通しだといいます。

認定を受けた後、ホテルの厨房など日本国内のおよそ100ヵ所に廃食器の回収拠点を設置します。数年後には、「ニッコー」の不良品1年間で12tを加え、年間数十tの「リン酸肥料」化が見込まれています。

廃棄される食器は埋め立て処分が一般的な方法で、「ニッコー」の専務の男性は、「環境保護が企業の存続にも関わっていく時代なので、食器を貴重な資源として活用していきたいです」と述べました。

参考:割れた食器を農業用肥料に再生、希少資源「リン」国内循環へ…陶磁器大手がホテルやレストランと連携 読売新聞(2024年)

東急ホテルズ傘下「ザ・キャピトルホテル東急」やホテル大手「ホテルオークラ東京」、高級レストラン運営「ひらまつ」が協力する意向し、各社はSDGs推進のため、再資源化で作られた肥料で育てられた農作物を料理で提供することも検討しています。

「リン酸肥料」の詳細

植物を育てる上で重要となる三要素は、「リン酸」「窒素」「カリウム」です。このそれぞれの要素が植物の、フルーツや葉、根、花に良い影響を与え、どの成分も欠かすことができません。三要素の中でも特に「リン酸」成分は、遺伝子の元になるDNA(核酸)の重要な構成成分で、植物の実付きや花付き、枝分かれを良くしてくれる効果に期待がされています。

「リン酸肥料」は植物の根や生長に関与する栄養素で、野菜や果樹などに対する養分供給のバランスでは窒素肥料よりも少なくカリ肥料よりも多いとされていて、栽培では元々まいていた肥料だけではなく追加でまく肥料としても非常に重要な肥料要素です。

「リン酸」のみの単独で肥料をまくことはほとんどありませんが、いちごやトマトなど長い期間に及んで栽培する野菜では追加で肥料をまくなどして利用する機会の人が多いと考えられています。

「リン酸肥料」が足りなかったことでの生育不良はそれほど頻発しませんが、土耕栽培の場合は適正に「リン酸」を肥料をまくことが基本中の基本です。トマトなど花数の多くなる野菜の養液栽培の場合は、過剰に肥料をまくことがない様に適量を確認して肥料をまくすることが基本的だと言えます。

「リン酸肥料」は、具体的には根がより良く伸びていく効果や、いっぱい実や花を付ける効果、花芽や発芽の付きを促進する働きがあります。

「リン酸」が足りないと、同化作用が鈍って、健全な生育をできなくなります。特に炭酸同化作用が鈍ると「窒素」の消化が進まず、「窒素」過多による様々な障害が誘発されます。

私はコロナ禍の時、「中国から肥料を取り寄せているけれど、高くなりすぎて、買えなくなりそうだ」という農家さんの悲痛な声を、ニュースで観たことがあります。

この記事を書くまで、「リン」が大変希少な鉱物だったこと、中国が主な産出国だったことを知らず、理解できました。

「リン酸肥料」は、ほとんどの野菜やフルーツなど植物で使われている肥料です。それが枯渇する日もそう遠くないー。

そのことで、この記事の本題の様な、食器から再資源化し、大事な鉱物を無くさない取り組みをすることの大事さを知りました。


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