男性が食事や遊びなどの育児介入で、子どもの発達が最大24%、遅れるリスク小さく!
こんにちは、翼祈(たすき)です。
2024年6月5日、厚生労働省の実態調査で、1人の女性が一生のうちに産む子どもの数の指標となる「合計特殊出生率」は、2023年は1.20となり、統計を取り始めてから最も低い水準になりました。2022年の確定値と比較すると0.06ポイント低下していて、8年連続で前の年を下回りました。
また、都道府県別の「合計特殊出生率」は、全都道府県で、2022年よりも低くなりました。
最も「合計特殊出生率」が低かったのは、東京都で0.99と1を下回りました。次に北海道が1.06、宮城県が1.07でした。その反面、最も「合計特殊出生率」が高かったのは沖縄県で1.60、次に長崎県と宮崎県が1.49、鹿児島県で1.48でした。
少子化問題が専門の京都大学大学院の専門家は、出生率が下がり続ける要因として、「コロナ禍で結婚する人が大幅に減少したこともありますが、学費が高く子育てにコストが大きくかかること、育児の負担が女性に偏っているということや、経済的な停滞で実質賃金が増えないことなど育児の負担が大きい要因があります」と懸念しました。
こうした状況を打破したいと、2022年10月1日に施行されたのが、【産後パパ育休制度】でした。
【産後パパ育休制度】が始まってから、2年余り。厚生労働省による実態調査では、男性の育休取得率は、2022年度では17.13%で2021年度の13.97%に比較して3.16ポイント増加し、過去最高の水準となりましたが、女性の育休取得率は、2022年度は80.2%で、男女では取得率に大きな差が開いています。
その反面、政府が2023年6月に策定した「次元の異なる少子化対策」の方針では男性の育休取得率の目標を2025年に50%、2030年に85%と明記されています。
なかなか取得の進まない男性の育休ですが、それを促すかもしれない、興味深い研究成果を読みました。
父親が育児に前向きに介入すると、子どもの心身の発達が遅くなるリスクは小さくなる-。京都府木津川市にある同志社大学赤ちゃん学研究センターが研究成果を明らかにしました。
同志社大学赤ちゃん学研究センターの嘱託研究員として総括のメーンとなった加藤承彦さんは、「父親の育児介入は子どもの成長に良い影響を与えます。男性の育休のサポートの拡充が必要だと分かった研究成果だと言えます」と主張しています。
今回は、男性の育休介入で子どもの発達にどれほど影響のあるのかを解明した研究成果を発信したいと思います。
男性の育児介入で、子どもの発達への影響。いかほど?
加藤嘱託研究員など研究チームは、子どもの健康に好ましい環境要因を実態調査した環境省の全国10万人規模の調査「エコチル」のデータを活用しました。男性の育児介入と、子どもの発達との相関関係を探りました。
「エコチル」のデータの中で、第1子について、早産で生まれた子どもなどを除いた2万8050世帯の親子を抽出しました。生後6ヵ月時点での父親の育児への参加と、3歳時点での子どもの身体と心の発達状況の関係を解析しました。
その結果、食事や遊び、おむつ交換などで、父親による子どもとの触れ合いが多いグループは、関与が少ないグループと比較して、最大で24%発達が遅れるリスクが小さかったといいます。最も関連が強かったのは、ジャンプしたり走ったりする様な全身を大きく使う運動の分野でした。手先の運動、集団生活や日常の行動に関しては13~16%発達が遅れるリスクが低い水準でした。
研究では、積極的な父親の育児の介入によって、母親の育児ストレスが軽減されている可能性も考えられました。家族関係が良好なことは、子どもの発達にも良い影響を与えると想定されるからだとします。
幼児教育が専門の加藤嘱託研究員は、2人の子育ての真っ最中です。未就学の長男とは恐竜ごっこなどで遊んでいます。「妻と比較して、父親である自分とは身体を大きく動かす遊びをすることが多く、身体的な発達に効果があるのでしょう」と推察しました。
厚生労働省の雇用均等基本調査によりますと、2022年に育休を取得した男性の割合は17%で、その数字は年々上昇していますが、まだ低い水準です。東京都にある所属する国立成育医療研究センターで加藤嘱託研究員は、育児参加する父親の支援体制について研究しています。
「父親の育児参加が社会的にも要求される現代になりましたが、サポート体制はまだ整っていません。父親の身体と心のバランスを維持できる環境づくりが必要です」と説明しました。
画像引用・参考:乳児期における父親の育児への関わりが多いことが、 子どもが16歳時点でのメンタルヘルスの不調を予防する可能性 国立研究開発法人 国立成育医療研究センター(2024年)
ミートボールなどが有名な、千葉県船橋市にある石井食品社長の男性は、長女が生まれた年に育休を取りました。その後、病気で妻が亡くなりましたが、周囲の協力も得ながら社長業と子育てに邁進しています。石井食品社長の男性は、「経験を積むためにも育休期間の取得は大事な行動です」と主張しました。
前職のIT業界では当然だったこともあって、2019年11月に石井食品社長の男性は、1ヵ月の育休を取得しました。食事作りや洗濯、掃除を引き受けました。社内の男性で育休を取得したのは2人目だったといいます。
育休中に育児に必要な家事スキルを身に付け、長女と向き合う瞬間に慣れました。妻の体調が悪化して通院する必要があった時には長女と仕事に出社しました。今は保育園への迎えを近所の子育て仲間に手伝って頂くなど、1人での社長業と子育てを両立しています。
この行動力の影響を受けて、男性の執行役員2人も育休を取得しました。2022年度からは社内男性の育休取得率は100%だといいます。石井食品社長の男性は、育休を「育児修行」と命名し、「経験値を上げると思って育児介入を頑張って」と送り出しています。
社を挙げて、毎年連続5日以上の有給休暇の取得にも励んでいます。事故や病気、介護と、どの社員にも休まざるを得ない状況は起こり得ることで、特定の個人に情報や仕事が偏ることを解消する狙いもあります。
石井食品社長の男性は、「休暇は全員で考えるべきテーマで、仕事を離れて視野が広がると、仕事のパフォーマンス向上にも結び付きます」と信じてやみません。
急がれる対策と、この研究成果をもたらすもの
厚生労働省によると、日本の年間総労働時間を男女別に見ると2022年は男性が1826時間、女性は1422時間となり、男性が400時間余り長く働いています。
また、過労死ラインの目安の1つとされる、労働時間が週60時間以上の人の割合は2022年時点で男性が7.7%、女性が2%となっていて、男性が大幅に時間が長くなっています。
労働時間を国際的に比較する時に指標とされる週に49時間以上仕事をする、男性の割合を2021年のデータで考えると、▼フランスは12%で出生率は1.8、▼デンマークは10%で出生率は1.7、▼スウェーデンは8%で出生率は1.7となりました。
そして、▼アメリカは男性の長時間労働の割合は17%で出生率は1.7でした。
その反面、▼日本は男性の長時間労働の割合は22%で、出生率は1.3で、少子化が急激に進んでいると言われている▼韓国も男性の長時間労働の割合は22%で、出生率は0.8となりました。
長時間労働の男性の割合が少ない欧米諸国ほど出生率が高く、長時間労働が多い日本や韓国は出生率が低い傾向にあることが分かるデータとなっています。
その上で、日本の男性が、育休を取得しない理由について、下記の様なものがあるといいます。
・「収入を減らしたくない」が最も多く39.9%。
・「会社や職場、上司の育休取得への理解がなかった」または、
「職場が育休を取得しにくい雰囲気だった」が22.5%、
・「自分にしかできない仕事や担当している仕事が持っている」が22%、
・「残業が多いといった仕事が繁忙であった」が21.9%など
となっています。
日本人は昔から仕事を休むことが悪いことだと考えていて、身体へ異変が出て、倒れて入院、そのまま退職に追い込まれる程、頑張り屋の人が多く、無理をしがちです。
別の調査で、日本人が世界で1番睡眠時間が短いのも、そのことへの表れかもしれません。
ですが、それとは異なる、喜ばしい実態調査も最近明らかになりました。
「家にいて育児をしている男性は、男らしく感じない」と考える人の割合は日本が10%で、世論調査会社「イプソス」が、2023年12月~2024年1月、アジアや欧米、オセアニアなどの各地域の31ヵ国トータルおよそ2万4000人を対象に、主にオンラインで実施した調査対象の31ヵ国中、最も低い結果となりました。
回答は、①ややそう感じる②とてもそう感じる③余りそう感じない④全くそう感じない⑤分からない-の5択で、日本の場合は①②とした人の割合が合計10%で、日本と同じ長時間労働の割合だった韓国(74%)と最も高く、インド(62%)、中国(32%)とアジア諸国が続きました。
育休を取得することが難しいことは、色んな記事を読んでいて、理解しています。それでも、小さい頃に子どもの成長が見られるのは、本当に短い期間だけ。
仕事が大変であっても、子どもと過ごす時間は大事にして欲しい。それを裏付けた研究成果だったと思います。