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試行錯誤の青春展 新居浜でがんばる未来のエンジニアたち

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2024年11月16日(土)から2025年2月2日(日)を会期として、あかがねミュージアム1F「新居浜ギャラリー」で実施予定の企画展の内容を紹介します。 工業都市・新居浜で「モノ…
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#青春

「KOSEN-1」と歩んだ最後の高専生活②「ああ、自分の作ったものがちゃんと形になってるんだ」

 その①から続きます。  新居浜高専に在学した最終年度である2020年度に、今井雅文さんの研究室の一員として超小型衛星「KOSEN-1」の開発に関わった、秋葉祐二さん。1年間の開発は、楽しいながら苦労の連続でした。  プロジェクトの主要なミッションである「木星電波」受信について、地上だけでなく宇宙にも観測地点があることで、より精密に「木星電波」が観測できる点が有意義だとされた「KOSEN-1」。その核となる木星電波の受信プログラムを任された秋葉さんでしたが、自身の開発した

『試行錯誤の青春展』-実際の展示会場はこんな感じになってますスペシャル!

 2024年11月16日(土)から2025年2月2日(日)までを会期として、愛媛県新居浜市・あかがねミュージアムの「にいはまギャラリー」という展示スペースで開催されている、この企画展。  このnoteでも紹介しているインタビューを元にした記事だけではなく、展示会場では実際の「試行錯誤」の結晶たる、様々なモノづくりの成果も展示しています。  この記事では、その展示物の一部を紹介します。

紹介する各種「プロジェクト」の概要

 「試行錯誤の青春展」では、当館の立地する愛媛県新居浜市内で、モノづくりに青春を燃やす学生にスポットを当てています。とりわけ今回は、市内に立地する唯一の高等教育機関である新居浜工業高等専門学校(新居浜高専)で「高専ロボコン」「鳥人間コンテスト」「Hondaエコマイレッジチャレンジ(エコラン)」「超小型衛星【KOSEN】プロジェクト」に取り組む学生さんたちの「青春」を取り上げました。  ここでは、それぞれのプロジェクトの概要を簡単に紹介します。 高専ロボコン  高専ロボコ

謝辞

企画展「試行錯誤の青春展」は、モノづくりに青春を燃やす学生やOBの皆さま、ならびにその指導教員の皆さんに、お忙しい中時間を割いていただいて採録したインタビューを中心に、展示を構成しました。順不同ですが、ご協力いただいた方々を紹介します。  新居浜高専の宇宙関連の実践紹介に際して広くご助言をいただきました、新居浜高専電気情報工学科・若林誠准教授。  「KOSEN-1」「KOSEN-2」などについて深くお話を聞かせていただいた、今井雅文さん。2024年4月からは新居浜高専を離れ

「頭の中では、滑空機は完成してますね。」 -いつか再び、「鳥人間」になる日を目指して。

 鳥人間コンテストへの出場が叶わない現状をこう語るのは、鳥人間航空研究部の4年生・松田朋弥さん。  「モノづくりの楽しさを共有してもらう教育イベント」を自負する「高専ロボコン」や、出場チームを広く募っている「Hondaエコマイレッジチャレンジ」は、大会への出場が事実上確約されている一方、「鳥人間コンテスト」は、読売テレビが主催する‘番組製作’のための大会。別のところで紹介した顧問教員・松田雄二教授の言葉にもあるように、「視聴率が取れそうな、エンタメ性のあるチーム」や「テレビ映

「他が水中翼船をやってて、来年はやりたいな、と。」 -造船の街・今治での熱き「海上自転車競走」

 造船の街・今治で、毎年夏の終わりに開催されている「海上自転車競走」。自転車を改造して、「ペダルを漕ぐとスクリューが回る」という船を作り、海の上でスピードを競うレース大会です。  新居浜高専からも、鳥人間航空研究部が「将来の人力プロペラ機開発の参考にしたい」という点と、「鳥人間コンテストは毎年の出場が確約されていないから、モノづくりについての大会出場機会を確保したい」という点から、鳥人間航空研究部を中心にレース出場が始まり、今では広く船が好きな学生が集まって、大会に出場してい

「1リットルで1000㎞とか2000㎞とか走ってて、ロマンを感じて。」エコラン ―平均時速25㎞の‘スーパーカー’に乗って

 日本のモータースポーツの聖地とも言える「モビリティリゾートもてぎ」。毎年、Hondaエコマイレッジチャレンジ(エコラン)の全国大会会場にもなっているここは、栃木県宇都宮市から車で60分、茨城県水戸市から車で60分など、周辺の大都市からは少し離れた場所に位置します。  「エコラン」全国大会はなんと、新居浜高専は現地集合!正確には、大会期間中に宿泊するホテルに現地集合。修学旅行がない新居浜高専にとって、その道中はさながら「プチ修学旅行」です。  こう振り返るのは、1年生ながら

「全然機能を見せれなかったので、悔しさが大きいですね。」 ー新居浜高専ロボコンBチーム、ポップコーンの憂鬱。

 上級生中心のAチームのロボットが「なげやりくん」と命名されていたのに対して、下級生中心のBチームロボットが「ポップコーン」と名付けられた理由をこう語るのは、Bチームのリーダー・山本陽永さん。「ポップコーン」命名の張本人でもあります。  高専ロボコン四国地区大会では唯一、ロボットを飛ばす仕組みとして「投石器」のような機構を採用し、それがロボットを飛ばす姿を本番会場の多くの観衆に待ち望まれた「ポップコーン」はしかし、その機能を予選2試合では発揮できませんでした。  自機が不完

「悔しいのは、頑張りたいという意思に変わりましたね。」 -同級生と見据える、僕らの未来。

前編から続きます。  こう語るのは、ロボコンBチームでリーダーを務めた2年生・山本陽永さん。小学校から「ロボット開発技術者になりたい」という夢をもつ彼は「まずは学校に慣れてから、ロボコンに専念したい」と、1年生の最後の頃に入部した経歴を持ちます。そんな彼がリーダーを務め、2年生と1年生が中心のチームで作った自チームのロボット「ポップコーン」は、十分に機能を発揮できず敗退。その悔しさが「来年」への意思に変わった、と言います。  一人のロボット開発者として、またチームリーダー

なげやりくん奮闘記② -「これで僕のロボコン人生終わるんだ、と思って見てますから。」

その①の続きです。  大会直前でのロボット作り直しや、当日の計測でのサイズオーバーなど、数々の困難を乗り越えて試合当日を迎えたAチームの面々。部長の末永さん、箱回収ロボットの菊池さん、発射ロボット操作の高市さん。そして、ピットに控える5年生の守屋さん。  予選ブロックは3校総当たり。1試合は2分半。それは、メンバーによって「長い」とも「短い」とも感じられる、緊張の2分半でした。  と振り返るのは、部長の末永さん。ピッチングマシンのようにボールを発射するロボットと、そこにボ

「なげやりくん」奮闘記① ー「まずい、僕のアイデアが全部ポシャった。」

曰く、「ロボ研」の部室はパラダイスなんだそう。  こう語るのは、「高専ロボコン四国地区大会」では「Aチーム」の一員としてロボットのコントローラーを握った、新居浜高専3年生の末永好一(よいち)さん。部員からは「好一さん」と親しみを込めて呼ばれ、笑顔も絶えない頼れるロボ研の部長です。  「Aチーム」の、ボールを回収するロボットの設計・製作に加え、チームのロボット名「なげやりくん」の名付け親である彼は、「なげやりくん」命名の経緯をこう話します。  他の部員や顧問の先生の受け止め

学生に託す、鳥人間の夢  -指導教官・松田雄二教授の「かっこよく落ちる」青春

 新居浜高専で「鳥人間コンテスト」に毎年挑戦している「鳥人間航空研究部」の顧問を務める機械工学科・松田雄二教授。子どもの頃にテレビで見て、学生の頃には授業で聞いた「鳥人間コンテスト」出場は、1992年の新居浜高専着任以来の夢でした。  自身が顧問を務める部活動として動き出した、新居浜高専の「鳥人間」への挑戦。「ずっと出たかった」という自身と同じ夢を持つ学生は、少ないながら集まり始めました。  メンバーは集まった。東予の産業を活かす、という機体製作のコンセプトも決まった。し

映画『ロボコン』の思い出② 長澤まさみさんも「愉快なペンギン型ロボットに夢中。」

 2003年9月に公開された映画『ロボコン』。撮影当時は中学3年生だったという長澤まさみさんが主演で、「高専ロボコン」大会で奮闘するチームの姿を描いた青春映画です。  ロボットの操縦役を務めた主人公・長澤さんの脇を固めるのは、ちょっと頼りない部長役の伊藤淳史さん、クールな天才設計士役の小栗旬さん、‘不良’的な一面を見せつつも確かな加工技術でチームを支える塚本高史さん、ライバルチームのワンマン部長役の荒川良々さんなど、超豪華キャスト。そんな豪華キャストと共演を果たしたのが、新

「3Dプリンタの音が心地いいんだ、とか意味の分からないことを言いながら、寝てますね。」 -「ロボ研」を見守る教員たち

 新居浜高専から毎年「高専ロボコン」に出場している「ロボット研究部」には、3名の顧問教員がいます。  中でも、学生との接点が一番多いのが、電子制御工学科の松友真哉准教授。2005年の新居浜高専着任以来、高専ロボコンとの付き合いはまもなく20年となります。  顧問教員として積極的にロボット製作を指導・助言をすべきか。学生の自主性に任せるべきか。「今でも分かんない」と語る松友先生は悩みながらも、最近は後者の「見守り」スタンスを取ることが多いようです。  他のところで紹介した通