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「3Dプリンタの音が心地いいんだ、とか意味の分からないことを言いながら、寝てますね。」 -「ロボ研」を見守る教員たち

 新居浜高専から毎年「高専ロボコン」に出場している「ロボット研究部」には、3名の顧問教員がいます。
 中でも、学生との接点が一番多いのが、電子制御工学科の松友真哉准教授。2005年の新居浜高専着任以来、高専ロボコンとの付き合いはまもなく20年となります。

 私も着任してからいろいろ手探りというか、勉強しながらやってますね。分からないことも多々あったし。そういう意味では、私も進歩したんですかね。でもじゃあ、答えがあったかというとそうではなくて、一緒に作ったらいいのかなと思ってかなり一緒に作った年もあるし、なるべく手を出さない、というのを心掛けた年もあったし。それがどれが正解かというのは、年によってチームのカラーもあるので、難しいですよね。
 今でも、分かんないような気がしますね。

 顧問教員として積極的にロボット製作を指導・助言をすべきか。学生の自主性に任せるべきか。「今でも分かんない」と語る松友先生は悩みながらも、最近は後者の「見守り」スタンスを取ることが多いようです。

 積極的に関わって私が指示をすると、私の指示を待つようになるので。私を頼りにしようとするので。それはチームとしてちょっと違うよな、と。私が全部作れるわけでもないので、中途半端に関わると申し訳ない。
 例えば、いま部室に行って「ここもうちょっと、こうした方がいいんじゃないの」と言うと、学生たちは「ここは、先生がこう言ったから」となると思うんですよ。学生たちには、ロボット製作の大きな指示系統がたぶんあって、その指示系統を無視して「先生が言ったから」というのが入ってくると、おかしくなるので。部長はこう言うけど、先生はこう言う、と。
 だから、アドバイスはするけど、チームの在りようというのは尊重したいな、という気持ちですね。

 他のところで紹介した通り、今年のチームは5年生を中心とした上級生部員たちの雰囲気の快活さと、ロボットに向き合う真剣さが部全体に伝播しているような印象を受ける、まとまりのあるチーム。松友先生がここで「チームの在りよう」の重要性を語るのは、次のような経験に依るものでした。

 おもしろいのは、いつ見ててもそうなんですけど、ロボットが出来上がってくると、そのチームが作ったようなロボットが、ちゃんと出てくるんですよ。そのチームらしい、というか。
 なんか気障な言い方なんですけど、ロボットを作るんじゃないんだ。チームを作るんだ、と。そうしたら、それに応じたロボットがちゃんと出てくるから。だから、ぐちゃぐちゃなチームだったら、ぐちゃぐちゃなロボットというか、なんでこうなったのかな、というのが出てくる。だから、人間関係というか、チームの個性というか、なんでそれがこんなにもロボットに出るかね、というね。
 チームのキャラクターとロボットのキャラクターはリンクしますね。それはうちだけじゃなくて、大会で見てても「なんだあのチーム、チームはぐちゃぐちゃなのに、ロボットはちゃんと出来てるな」というのは無いですね。

 今年2024年の四国地区大会は、9月29日開催。「例年より1カ月早い」というこの日程は、9月24日に夏休みが終わって後期の授業が始まる新居浜高専にとって、夏休み明け最初の週末、という難しい日程。夏休み中は学生寮が閉鎖されるため、普段は寮から活動に参加している部員にとっては、例年ロボット開発の追い込み作業を行う大会1カ月前からの時期に、満足に学校に行くことができない時期にあたります。
 松友先生が重視する「チーム作り」の障壁となり得るこのような事態を打破すべく実施されたのが、校内の「合宿研修所」を活用した「合宿」。日中は部室でロボット開発、活動が終わったら「合宿所」の、部屋の真ん中に大きな座卓、その左右にたくさんの二段ベッド、という大部屋で生活を共にしながら行う、開発漬けの日々です。

 合宿中の部室での活動は、朝9時から午後5時まで。その間はとにかくずっと作業をやって。それでもまだ飽き足らずだったら、寝る部屋の真ん中に3Dプリンタとか置いてやってるみたいですね。「3Dプリンタの音が心地いいんだ!」とか意味の分からないことを言いながら、寝てますね。
 だから、部室を使えるのは9時から5時ですけど、それが終わってもプログラム書くとか、打合せするとか、寝ながらやってると思いますね。それだけでも体力的に相当しんどいと思います。寮と違って食事もないので、自分たちで食事もなんとかしないといけないので。
 体調にも気を付けてもらいながら、頑張ってますね。

 特に2024年は大会課題が難しく、試行錯誤の連続となった開発の日々。そんな中で「学生の自主性に任せる」というのを貫くのも、単なる放任とは違う、覚悟が必要なことのようです。

 思うところはありますよ、もちろん。そこはそうじゃねえだろう、違うだろう、というのはね。
 でも、見守りますね。苦労してるなあ、でもそれも経験だ、というね。

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