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「他が水中翼船をやってて、来年はやりたいな、と。」 -造船の街・今治での熱き「海上自転車競走」
造船の街・今治で、毎年夏の終わりに開催されている「海上自転車競走」。自転車を改造して、「ペダルを漕ぐとスクリューが回る」という船を作り、海の上でスピードを競うレース大会です。
新居浜高専からも、鳥人間航空研究部が「将来の人力プロペラ機開発の参考にしたい」という点と、「鳥人間コンテストは毎年の出場が確約されていないから、モノづくりについての大会出場機会を確保したい」という点から、鳥人間航空研究部を中心にレース出場が始まり、今では広く船が好きな学生が集まって、大会に出場しています。
今年は、「鳥人間」メンバー・松田さんをリーダーに機械工学科中心の編成となった「青チーム」と、同じく「鳥人間」メンバー・森岡さんを中心に学科を越えて集った「黒チーム」が出場。熱戦を繰り広げました。
「鳥人間」のプロペラ機も、最近は立って漕ぐチームもあるんですけど、寝そべって漕ぐのが基本なので、そこに活かせたらいいなというのもあって、寝そべって漕ぐ船を作ってます。立って漕ぐ方はすごくパワーが要るんですけど、寝そべって漕ぐ方は疲れないので、持久力勝負。立って漕ぐと速いんですけど、「粘り勝ち」だったら自分たちが速いなと。
「海上自転車競走」の先に「鳥人間コンテスト」を見据えていることをこのように語るのは、4年生の松田さん。鳥人間コンテストの大会出場経験もある4学年上の兄の影響もあり、「鳥人間」「エコラン」「海上自転車」と、数々のモノづくりに青春を燃やす学生です。
持久力勝負なら負けない、と開発した「寝そべり型」の船。だったのですが…
でも、今年は波が高くて、危険だということになって。当初は500Mだったレースが150Mになって、「これは勝ち目がないな」と思いました。
結果は出場10チーム中、青チームが4位で黒チームが8位。砂浜からスタートしている今年のレース映像を見ると確かに、沿岸でも波が高い様子。波が高く、船体も上下に揺れています。
寝そべって漕ぐ船は(船体が)低いので、どうしても海水が入るんですよ。去年はそれで沈みそうになったりして。ポンプで排水しようとなっても、ああ、俺たち(青チームは機械工学科ばっかりだから)分かんねえや、てなって。そういうのは電子(情報工学科)の子に頼んだりして。
(黒チームは?)
原始的に、柄杓ですくって水を掻きだすという感じでしたね。
新居浜高専の「青」「黒」2チームの船が進む様子を見て気づくのは、ペダルの重さ。青チームが軽快にペダルを漕ぐのに対して、黒チームはペダルが重そうです。
これについて、黒チームのリーダー・森岡さんはこう言います。
「ペダルとかに重りをつけて、惰性で回るようにすれば?」というアドバイスを、造船会社の方からもらったことがあって。でも、元々のパーツが重いので、そこに重りをつけるとさらに重くなるのでそれは諦めたんですけど、重いと、回り出したら惰性で回ってくれるというのは採用して。そういうアドバイスをもらってペダルを重くしても大丈夫と思ったんですけど、なかなか本番でうまくいかなかったですね。
造船の街・今治での開催ということで、大会に前後して造船会社の見学など造船分野の方々と交流が多いのも大会の特長。船が好き、ということでチームに加わったメンバーにとっては特に、大会に際して会社見学をしたり、他のチームの船体を見るだけでも、刺激的な経験です。
造船会社の方々で出てるチームもあるんですけど、そんなところは立ち漕ぎで、船体もきれいでかっこいいし、しかも軽いし、すごいですね。2人乗りなんかもあったりして。
そんな刺激は、「鳥人間コンテストのプロペラ機部門を見据える」ということからは離れてしまいますが、新たなモノづくりへの意欲をかき立てます。
他のチームで水中翼船をやってるところがあって。実際は浮いてなかったのでどうなってるか分からなかったですけど。僕らも過去にも挑戦したんですけど、それはまた挑戦してみたいですね。進めば進むほど、機体が浮いてスピードが速くなる。そういうのがいいですね。前作ったときには大失敗して断念したんですけど、他が水中翼船やってて、来年は挑戦しようかな、と思いましたね。
船体の底、水に沈む部分に飛行機の羽のような構造を持ち、船のスピードが出るにしたがってその羽が、飛行機が飛ぶ要領で船体を上へ上へと持ち上げる。すると、船が水面に触れる部分が減って水の抵抗が少なくなり、「進めば進むほど、機体が浮いてスピードが速くなる」という水中翼船。九州など一部の高速旅客船でも導入されている船体設計技術です。
このような果敢な挑戦や熱意が将来、彼ら「海上自転車競走」チームの母体でもある「鳥人間」の機体も、上へ上へと浮かせる原動力になると期待したいですね。