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「頭の中では、滑空機は完成してますね。」 -いつか再び、「鳥人間」になる日を目指して。
何をしたら行かせてくれるんだろう、どういうネタをつくれば取り上げてもらえるんだろう、というのを思いますね。テレビなので。彼女がいます、これ飛んだら結婚します、とか言わないと受からんのかな、と思ったり。
鳥人間コンテストへの出場が叶わない現状をこう語るのは、鳥人間航空研究部の4年生・松田朋弥さん。
「モノづくりの楽しさを共有してもらう教育イベント」を自負する「高専ロボコン」や、出場チームを広く募っている「Hondaエコマイレッジチャレンジ」は、大会への出場が事実上確約されている一方、「鳥人間コンテスト」は、読売テレビが主催する‘番組製作’のための大会。別のところで紹介した顧問教員・松田雄二教授の言葉にもあるように、「視聴率が取れそうな、エンタメ性のあるチーム」や「テレビ映えする、話題性のあるチーム」が出場しやすい傾向にあるとのこと。
新居浜高専の鳥人間航空研究部「Team Migrant」は、2017年大会への出場を最後に、「琵琶湖」から遠ざかっています。
毎年そういう話題が何かないか、というのをひねり出してる感じですね。
機体の形を変えて、珍しいからいいんじゃない、とか思う年もあったんですけど、主催者からしたら「こんな形でほんとに飛べるの?却下」という感じで。パイロットが何をしたいのか、という連絡が向こうから来ることもありますね。ネタを探すんでしょうね。
今年は自分がパイロットで、けっこう体重が重たいんですよ。滑空機は軽い人が乗るのが定石なんですけど、重たい人が飛ぶ機体にするにはどうするか、重たい人を飛ばす飛行機を作ろう、というのをネタとして考えてたんですけど、向こうからすると「この人で飛べるんかな?」という。
向こうから言ってくるんです。なんかありますか?って。僕らみたいにあんまり出れてないチームが「ありません」なんて言えないので。
テレビ局が食いつくほどの話題がなかなか用意できない中、2024年3月には、大会出場経験のあった唯一の学生が卒業。大会会場である「琵琶湖」の雰囲気を実体験として後輩に伝えることが叶わなくなった。それでも、現役学生たちの「鳥人間」への熱は冷めません。
せっかく高専入ったんだから、大きなモノづくりがしたくて。それで、中途半端が嫌いなので。
だから、もし辞める、諦めるとしても、鳥人間コンテストに1回出るか、航空関係の勉強を「突き詰めた!」と感じれたか、というところまでやりたいので。あとから後悔するとか、「あの先輩、そうでもなかったね」と後輩に言われたりするのがいやなので。
と語るのは3年生の森岡恵輔さん。
環境材料工学科の所属ということで、製図や力学などは専門分野ではありませんが、昨年からは機体の設計図も担当するなど、後悔のない「鳥人間」ライフを突き詰めています。
12月くらいに大会の説明会があって、そこから本腰入れて設計して、2月中旬にエントリーです。で、もし出場が叶ったら、7月に間に合うように機体をつくります。
メインの図面と、接合部の詳細とかを書いた補助図面とで、休日をまるまる使って、丸4日ぐらいかかりますね。図面が書けたときには「できたー!」という達成感と、「これで受かるかなあ」という不安と、半々です。
図面は完成するが、本大会への出場が叶っていない現状、なかなか次のステップである「機体製作」にたどり着けない。試しに作ろうにも、「高専最大のモノづくり」と自認する滑空機の翼の全長は18Mほどにもなるため、金銭面や保管場所などの点から「作って保管しておく」ことも現実的ではない。それでも鳥人間航空研究部のメンバーは、自信をもってこう言います。
具体的なシミュレーションは、あります。頭の中では、滑空機は完成してますね。
「将来、人力プロペラ機部門に出場するための準備」として海上自転車競走にも出場している、松田さんと森岡さん。「鳥人間」への熱い思いが、まだ見ぬ後輩たちにも受け継がれてほしいと願っています。
いまの滑空機でも、機体づくりとなるとゼロからの勉強で。だから、プロペラ機となると「今すぐには…」という感じですね。まずは、滑空機で出場して、経験を積んで。その後にまた世代を重ねていって、いつか将来はプロペラに挑戦してほしいなとは思いますね。
頭の中では明確に完成形がイメージされている、新居浜高専の滑空機。それが琵琶湖のプラットフォームから飛ぶ日を、彼らは熱く夢見ています。