紹介する各種「プロジェクト」の概要
「試行錯誤の青春展」では、当館の立地する愛媛県新居浜市内で、モノづくりに青春を燃やす学生にスポットを当てています。とりわけ今回は、市内に立地する唯一の高等教育機関である新居浜工業高等専門学校(新居浜高専)で「高専ロボコン」「鳥人間コンテスト」「Hondaエコマイレッジチャレンジ(エコラン)」「超小型衛星【KOSEN】プロジェクト」に取り組む学生さんたちの「青春」を取り上げました。
ここでは、それぞれのプロジェクトの概要を簡単に紹介します。
高専ロボコン
高専ロボコン、正式名称「アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト」は、全国高等専門学校連合会やNHKなどが主催するロボット競技大会です。毎年、9月から10月に開催される「地区大会」を経て、11月頃に両国国技館で「全国大会」が実施されています。NHKによる大会の全国放送やネット配信、高専ロボコンに青春を燃やす学生たちの姿が長澤まさみさんが主演で映画化されるなどメディア露出も多く、「高専のモノづくり」を象徴する取り組みです。
主催者によって毎年設定される「課題」をクリアしながら得点を競う競技性ももちろんですが、‘高専ロボコンの生みの親’として知られる東京工業大学・森政弘名誉教授の「勝ったロボットには力がある、負けたロボットには夢がある」という言葉に象徴されるように、課題を解決するためにどういうロボットを作りたいか、という「夢・アイデア・発想」を評価しようとする教育的な要素も強く、アイデアの面白さや良い意味での‘遊び心’を総合評価して授与する「ロボット大賞」が「優勝よりも格が高い、最高の賞」とされているのが、「アイデア対決」と冠される所以です。
新居浜でも、新居浜高専で電子制御工学科の松友真哉准教授などを顧問教員とする「ロボット研究部(ロボ研)」が精力的に活動していて、毎年2チームが、全身全霊で製作したロボットと共に地区大会に出場し、全国大会出場を目指しています。
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鳥人間コンテスト
「鳥人間コンテスト」は、読売テレビ放送株式会社が主催する、人力飛行機の大会です。1971年にイギリスで第一回大会が開かれた人力飛行機の大会「Birdman Rally」を参考に、日本では1977年に第一回大会が開かれました。
2024年大会で46回目を数え、毎年7月最終週に滋賀県彦根市の琵琶湖湖畔で開催される大会は同局によってテレビ放送され、高い人気を誇っています。
新居浜高専では、2007年の初出場を皮切りにこれまで5回、大会に出場。愛媛県勢では他にも、新居浜工業高校、愛媛大学、八幡浜工業高校などが挑戦しています。
現在、大会は「滑空機部門」と「人力プロペラ機部門」に分かれて開催されており、前者の歴代最高記録は645M、後者はなんと69㎞以上の記録が残っています。
新居浜高専では、機械工学科の松田雄二教授を顧問とする部活動「鳥人間航空研究部」が、渡り鳥という意味を持つチーム名「Team Migrant」を名乗り、毎年「滑空機部門」にエントリー。将来的には「人力プロペラ機部門」出場も視野に、活動を続けています。
しかし、近年では2部門合わせて100機以上がエントリーするという狭き門をなかなか突破できず、2017年大会の出場を最後に「琵琶湖」の舞台から遠ざかっています。
このように、なかなか大会への出場経験を積めない現状を打破しようと、2018年からは「ペダルを漕ぐ動力を、効率よくプロペラの推進力に変える」という点が将来の「人力プロペラ機開発の端緒になれば」ということで、自転車を船に改造してそのスピードを競う「海上自転車競走」にも、鳥人間航空研究部を母体として出場中です。
空と海とで、モノづくりの技術を磨いています。
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エコラン
「エコラン」というのは、自動車メーカー「Honda」が主催する「Honda エコマイレッジチャレンジ」という、燃費を競うモータースポーツです。
Hondaの50ccバイク(スーパーカブ等)などのエンジンを搭載した自製の車両に、1リットルだけガソリンを入れてレースはスタート。コースを走破する速さでなく、指定された周回数を走った後でタンクに残った燃料の量を計り、「どれくらい燃費よく走れたか」という燃費の良さを競います。
大会は「鈴鹿サーキット」や「モビリティリゾートもてぎ」など日本を代表するサーキットコースで毎年開かれており、中学生チームから一般チームまで全国から幅広い層のチームが出場しています。例年の出場台数は400台以上、歴代の最高記録は1リットルの燃費がなんと3600㎞以上!これは、新居浜からカンボジアの首都・プノンペンまでの距離に匹敵します。それを計算上1リットルで走る車両なんて、とても夢のある話!
新居浜からは、新居浜高専・機械工学科の松田雄二教授を指導教員として、同校の機械工学科有志学生が毎年「大学・短大・高専・専門学校クラス」に出場しています。
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超小型衛星「KOSEN-1」
超小型衛星「KOSEN-1」は、2021年11月に「イプシロンロケット5号機」に搭載されて打上げ、軌道投入された小さな衛星です。高知高専をリーダーとして、新居浜高専や香川高専など全国10校の高専が連携して開発されました。木星から発出されている強力な電波の総称「木星電波」を観測するためのアンテナ展開の技術実証、精度の高い衛星の姿勢制御を行う技術実証、超小型のコンピューターを用いて衛星の運用を行う技術実証、などをミッションに掲げました。
プロジェクトを主導したのは、全国各地の高専で宇宙分野を専攻する教員たちのグループ「高専スペース連携」のみなさん。以前からグループの間で「将来は、自分たちの手で衛星開発・運用をしたい!」という展望があった中、2018年にJAXA(宇宙航空研究開発機構)から、イプシロンロケット5号機に搭載して打上げを行う人工衛星の公募が開始されます。「これは渡りに船!」と応募し見事、「KOSEN-1」はロケットに搭載される8機の超小型衛星の一つに選定されました。
2018年の選定から2021年の打上げまで約3年間、新居浜高専でも電気情報工学科の若林誠准教授、今井雅文講師(当時)が主導して、木星電波の受信プログラムや、衛星と交信を行う地上局の設計などが学生を巻き込みながら行われました。
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超小型衛星「KOSEN-2」
2021年に打上げが成功した超小型衛星「KOSEN-1」の経験やノウハウを活かし、さらに革新的な技術に挑戦しようと計画されたのが超小型衛星「KOSEN-2」です。
リーダーとなった米子高専を筆頭に、新居浜、高知、香川など全国8校の高専が連携して開発がすすめられた「KOSEN-2」。木星電波の観測などを掲げた「1」とは打って変わって、「海洋観測データの収集」「精度の高い、衛星の姿勢制御の技術実証」「持続可能な宇宙人材育成スキームの実証」がミッションとして設定されました。
JAXAの公募に応じて、他の衛星8機と共にイプシロンロケット6号機で宇宙に飛び立つことが決まったのは、2020年5月。「新型コロナウイルス」の混乱が世界中に広がる只中のことでした。新居浜高専でも「1」に引き続き、若林准教授、今井講師(当時)のお二人が主導して、リモート環境下など制限の多い中で開発が続きました。
幾度かの延期を経て、イプシロンロケット6号機の打上げが実施されたのは2022年10月12日の9時50分ごろ。「KOSEN-2」がロケットから切り離されて宇宙空間に放たれるのは、打上げから1時間10分ほど後の予定でした。1号機から5号機まで失敗知らずだったイプシロンロケット6号機はしかし、打上げから約7分後の燃料切り離しに失敗。地上への被害を最小限にするため機体を自爆させる「指令破壊信号」がロケットに送信され、ロケットと、搭載された衛星はフィリピン北東の太平洋上で焼失しました。
この打上げ失敗を受けJAXAは、打上げの再チャレンジを希望する機関には、再チャレンジの機会を提供することを公表。「KOSEN-2」もこれに応じ、「Re-challenge(再挑戦)」の頭文字を冠して「KOSEN-2R」として再出発することとなり、2025年度の打上げ‘リベンジ’に向けて、開発が続いています。
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