あべたかふみ

なんか色々やってますわ。 ジュークボックスのようなnoteにしたいであります。 https://twitter.com/dirtyrockhero

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マガジン

  • 木曜日の恋人

    SKYWAVE FMで毎週木曜日23時から放送の「東別府夢のDream Night」にて朗読されましたおはなしたちです。読み切りですのでお好きな所からどうぞ。

  • 音楽

    音楽の寄せ集めでございます。

  • 短編映画

    2009年〜 自主制作した短編映画でございます。

  • アルバム『素晴らしい世界』

    2018年10月頃から作り始めて2019年の2月に完成したアルバムです。宅録です。収録曲順にまとめてみました。シェゲナベイベー。

最近の記事

ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜65 『ちくわのおじさん』

 僕が夜間勤務しているコンビニエンス・ストアに毎日深夜一時半にちくわだけを買いに来るおじさんがいる。年の頃は五十代、上下灰色のスウェットに黒いサンダル、夏には上がTシャツになるくらいで格好は変わらない。彼はいつも一人でやって来て入り口で買い物カゴを手にし、店内の商品をぐるりと見て回り、それからようやく目当ての品を見つけたかのようにちくわを一袋カゴに放り込みレジに持ってくる。それを毎日、大切な儀式みたいにくり返す。いや、それは彼にとって本当に大切な儀式なのかもしれない。ただ好き

    • ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜64 『今日も地球のどこかで』

       二〇二四年十一月十四日木曜日、午後十時三十分。  自身のラジオ番組「Dream Night」の放送を間近に控えた東別府夢は、夕方にある男に言われた言葉が、真っ白いシャツにこぼしたミートソースのシミみたいに、いつまでも頭から離れなかった。それは彼女と親密な関係にある男が言った言葉である。最初は傷ついた彼女であったが、ひと通り悲しんだあと、悲しみを凌駕して猛烈な怒りが湧いてきた。なんであいつにあんなこと言われなくちゃならんのだ、ふざけんな。と思った。このまま番組が始まれば不機

      • ノスタルジー

        作詞・作曲:あべたかふみ 編曲:髙橋太郎 歌:れなりのぴーちゃん 秋の香りがした 思い出すことがある 幼い日のわたしを 優しく見つめる眼差し 眠りにつく前に 帰りたい場所がある 柔らかな明かりが 優しく灯った街並み 時が魔法をかけてくれるから 思い出は美しく見える あの日見たコスモスは 今でも心に咲いたまま 降る雨にうたれ 人波にもまれ 涙を流した夜もある いつの間にか こんな遠くへ あの眼差しも忘れて 「元気でやってる?」って一言におされ 明日を信じていられる 照れくさくて言えないから いつも心で「ありがとう」 今はこの街で独りきり なにを求め生きているんだろう あの日見た君の笑顔が 時おり心に浮かぶけど 吹く風におされ 踏み出すのに怯え 悔やんでやるせない日々もある 手にしては 失って またふりだしに戻って 「頑張りなさい」って一言におされ 夢を信じていられる 思い出じゃ足りないから 明日への扉開けよう 照れくさくて言えないから いつも心で「ありがとう」 アコースティックギター、アルトリコーダー:あべたかふみ それ以外の楽器とミックス:髙橋太郎 他の曲も公開中です。 ↓ ・恋のデュース https://note.com/abetaka/n/n769f24fb0d88 ・イルミネーション・ラブ〜世界を愛で飾ろう〜 https://note.com/abetaka/n/n428b0c2f74df ・ギラギラ☆Summer Days https://note.com/abetaka/n/nceafba2f669d

        • ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜63 『清潔で、心地よく明るいところ』

           東急花丸線の住良駅で降り、改札を抜け左側の長いエスカレーターを下ると、長い商店街が西に向かって伸びている。商店街を進み、三つめの角を左に曲がって少し行った所に一見すると何の店なのか分からないような佇まいでその喫茶店はある。 「清潔で、心地よく明るいところ」とだけ書かれた三角看板が店先に置かれているだけなのだが、実はそれが店名だ。文学好きの方であればピンとくるかもしれないが、これはアーネスト・ヘミングウェイの短編小説から取られた名前だ。  喫茶店といっても昼間は営業してい

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        • 木曜日の恋人
          65本
        • 音楽
          36本
        • 短編映画
          7本
        • アルバム『素晴らしい世界』
          15本

        記事

          ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜62 『ゆめちゃんとふしぎなおともだち その③』

          その① その②    楽しかった夏もあっという間に過ぎ去り、八月の終わりにさしかかりました。  そしてついに作戦決行の日がやってきたのです。  町がすっかり眠りついた深夜、ふたりは窓からそっと抜け出し、あずさちゃんの家へ向かいました。とても大きなお屋敷です。 「どこがその子の部屋?」とゆうちゃんは聞きました。 「二階の一番左」とゆめちゃんが答えます。 「じゃあ、行ってくるよ」  ゆうちゃんは鉄門をすり抜けて行きました。すると、庭で放し飼いされている番犬のドー

          ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜62 『ゆめちゃんとふしぎなおともだち その③』

          ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜61 『ゆめちゃんとふしぎなおともだち その②』

          その①  いよいよ夏休みがやってきました。終業式の日にゆめちゃんはあさがおの鉢植えを大事に持って帰ろうとしているところでした。あずさちゃんとその取り巻きがやって来ました。 「あら、ゆめちゃーん、とおーっても綺麗なあさがおねー」 「う、うん」 「わたしのあさがおと交換してあげよっか?」  あずさちゃんのあさがおは水やりをおこたって枯れていました。  あずさちゃんは無理矢理ゆめちゃんのあさがおを取ろうとしました。  ゆめちゃんはなんとか抵抗しますが、多勢に無勢、鉢植えを

          ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜61 『ゆめちゃんとふしぎなおともだち その②』

          ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜60 『ゆめちゃんとふしぎなおともだち その①』

           校庭の片隅でゆめちゃんはあさがおに水をあげていました。  きれいに育ったあさがおは水を浴びて嬉しそうです。  花びらによりそうように、ジョウロから出た水が虹を描き出します。  じぶんが種をまき、ここまで育てたことを、ゆめちゃんは誇りに思いました。  空を見上げると、もこもことした夏の雲があり、木立からはセミの鳴き声が聞こえてきます。もうすぐ夏休み。これはそんな季節にはじまる物語…… 『ゆめちゃんとふしぎなおともだち』  教室に戻ったゆめちゃんは授業の準備をします。宿題の

          ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜60 『ゆめちゃんとふしぎなおともだち その①』

          ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜59 『怪物・稲村』

           もしもあなたが熱心な高校野球ファンならば、1990年夏の甲子園から始まったあの伝説のことはよくご存知だろう。  90年から92年に渡る夏の甲子園三連覇、91年、92年の春の選抜連覇、三年間の間に五度の日本一という称号を手にするという、今までも、そしてこれからも破られることは無いであろう偉業を成し遂げた岩手県立一関第三高等学校。そしてこの偉業の中心人物こそが稲村亮太である。試合で見せる彼の圧巻の投球に、いつしか人々は彼のことをこう呼んだ。 「怪物・稲村」と。  甲子園と

          ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜59 『怪物・稲村』

          ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜58 『太陽に乗り遅れた二人』

           父親が倒れたという知らせを聞いた時も、その五日後に亡くなったという知らせを聞いた時も、まるで遠い異国の地の天気予報でも聞くみたいに、川島の心にはなんら感情も湧いてはこなかった。せめて通夜と葬儀にだけは顔を出せと、兄からの強い要望で、約十五年ぶりに川島は故郷へ帰った。  電車から降り、あきれるほど見窄らしくなった故郷の街並みを見て、彼はすぐにでも東京へ引き返したくなった。海からの湿った風さえ嫌みたらしく首筋にまとわりついた。  実家で兄と兄嫁と会い、初めて中学生の甥と会っ

          ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜58 『太陽に乗り遅れた二人』

          ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜57 『しあわせな家族の肖像』

           よく晴れた日曜の朝、福井家のダイニングテーブルで家長である史郎が新聞を読んでいる。  妻の純子がトースト、ベーコン、スクランブルエッグ、そしてコーヒーを載せた盆をキッチンからテーブルに運び、二階にいる娘に呼びかける。 「絵里、朝ごはんよー」 「はーい」  絵里が階段を降りてくる。両親に「おはよう」と挨拶をし、窓辺に行き外の天候をたしかめる。 「わー、いいお天気、気持ちいいね!」 「さあ、食べましょう。ほら、お父さんも、新聞はあとにして」  史郎は「ああ」と言っ

          ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜57 『しあわせな家族の肖像』

          ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜56 『24年の片思い』

           もはやそこは僕のよく知る商店街ではなかった。  学校帰りによく立ち寄った古本屋はなくなり、珈琲は不味いが静かでくつろげる喫茶店もなくなっていた。趣味の良いソウルミュージックを掛けるバーも、安さと量が売りのラーメン屋もみんな、どこかで見たことある店に取って代わられていた。そしてあの定食屋も。  当然だ。あれからもう二十年も経っているのだから。  二十年は物事を変えてしまうのに十分な時間だ。初々しい大学生の若者を、いとも簡単にくたびれた中年に変えてしまう。  あの定食屋

          ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜56 『24年の片思い』

          ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜55 『小さき者たち』

           私が初めて《小さき者たち》を見たのは、就職して南にある大都市に住むようになってからだった。北国出身である私は、それまで《小さき者たち》を見たことがなかった。  なので私にとって《小さき者たち》は、物語の登場人物同様、架空の存在で、ファンタジーの世界の住人でしかなかった。  はじめて見た時も、少し驚きはしたが、みなが言うように嫌悪や恐怖を感じることはなかった。あれはたしか梅雨が明けて、本格的に夏が到来した頃だった。  私の家に一人の《小さき者》が現れた。  夜に帰宅し

          ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜55 『小さき者たち』

          ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜54 『馬の娘、再び』

           わたしは馬である父と、人間である母を持つ「馬の娘」と呼ばれる女。  以前、わたしは両親がどのように出会い恋に落ちたかを語った。  今日これから話す物語の主人公は今回もわたしではない。わたしの両親でもない。それは、ある一頭の馬である。  ジャンボ。それが彼の名前だ。  ジャンボは父の唯一の親友だった。血気盛んな若者が集う競走馬界においては珍しく、彼はどこかひょうきんな様子で、競争よりも楽しく人生を過ごすことに価値を置く馬だった。そのことが父の気を許した。  父と母が

          ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜54 『馬の娘、再び』

          飛べ

          なにを求めて叫んでる? その声 いたずらに嗄らして なんのために泣いている? その目を 見開いてよく見ろ 時代(とき)は河に飲み込まれて やがてすべては藻屑となる 歴史の海を漂って それでも誰かの糧になる 飛べ この空はお前のものだろ? 飛べ この世界を愛し続けるために 愛を求めて叫んでる この声 乳飲児のように 愛を信じて泣いている この目は なにも塞げやしない 飛べ この空はお前のものだろ? 飛べ この世界を愛し続け 飛べ この空から見下ろす景色を 飛べ いつの日か教えてくれないか 聞かせてくれないか なにもかも吹き飛ばしてくれないか 歌と演奏:あべたかふみ mix:髙橋太郎 ※こちらは2022年に公開した曲ですが、また新たに作り直しましたので新バージョンとして公開いたします。

          ナツノブギー

          とべないのは 鳥で なけないのは 犬で やまないのは 雨で すげないのは 君で どうせ どこぞの誰かの腕に抱かれて 君は夏のブギで大わらわ せつないのが Summer Day さめないのが 熱で あけないのが 夜で つれないのが 君で どうせ 俺のことなど気にもかけないで 君は夏のブギで大わらわ 不埒な芸能で 夜毎のたわむれ Ah woo とびだす 君の面影求めている どうぞ 笑顔も涙もくれてやりなよ 君は夏のブギで大わらわ 淫らな幻想で 孤独のたわむれ Ah woo とびだす 君の面影求めている 愛のやり場を探してる 歌と演奏:あべたかふみ MIX:髙橋太郎 ※こちらは2022年に公開した曲ですが、また新たに作り直しましたので新バージョンとして公開いたします。

          ナツノブギー

          ナツノブギー

          ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜53 『ゆめちゃん、ろうどく会をするの巻』

           ついにその日がやってきた! ゆめちゃんは町のこうみんかんでろうどく会をすることになったのです。  それは二ヶ月まえのことでした。  きんじょにすむたかちゃんという男の子がゆめちゃんのおうちにやってきました。 「やあゆめちゃん。おいらしょうせつをかいたんだ。よんでくれるかい?」  たかちゃんが書いたのはみじかいおはなしでした。  おとこの人がおんなの人にこいをする大人のおはなしでした。 「わー。すてき。たかちゃん、これすごくいいよ!」とゆめちゃんはよみおえてからい

          ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜53 『ゆめちゃん、ろうどく会をするの巻』