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ハイボールシンデレラ

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#小説家になろう

ハイボールシンデレラ7〜夜の新宿は刺激的〜

ハイボールシンデレラ7〜夜の新宿は刺激的〜

時刻は21時30分。

店を出た時、話をしている女性達に大声で叫ぶガラの悪い若者がいたり、夜の新宿らしさが出てきていた。

僕達はビルの中にあるカフェ&バーに場所を移動させた。

僕はあまりこういうお洒落なバーには行く機会がなかったのだが、マキさんはこの店に行った事があると言っていた。

マッチングアプリで出会った男性と行ったのかな。この子。と他の男の影を感じ、少し嫌な気分になったのだが、「童顔の

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ハイボールシンデレラ8〜ラブホテル受付の配慮〜

ハイボールシンデレラ8〜ラブホテル受付の配慮〜

僕はラブホテルには来た事がある。
しかしその時は1人で入室した。
理由はデリバリーヘルスの利用だ。

僕はあれ以降ソープランドへは行かなかったのだが、
デリバリーヘルスを利用した事が1度だけあった。

その時は受付の従業員の顔のみ見えないタイプの作りだったのだが、今回利用するホテルは従業員の顔が見えるタイプのスタイルであったため、少し気まずかった。

しかも若い女性なため、より一層恥ずかしかった。

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ハイボールシンデレラ9〜魔法が解けた0時過ぎ〜

ハイボールシンデレラ9〜魔法が解けた0時過ぎ〜

そして僕はシャワーを浴びている間、思い出していた。

「横幅がヒロ」が彼女との初セックスを終えたと言っていた日、

「俺達も、やっと男になれたな。」と、

満面の笑みで手をグーに差し出してガッツポーズをして見せたヒロに僕は

「そうだな。」

と言ったが、実はまだ自分だけ「男」になりきれていないような、置いて行かれたような気で落ち込んだ日を。

ーなぁ、ヒロ、元気にしてるか?

俺は今日やっと、男

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ハイボールシンデレラ10〜口紅の色が着いた吸い殻〜

ハイボールシンデレラ10〜口紅の色が着いた吸い殻〜

「男」になった僕は、マキさんがシャワーを浴びた後、続けて僕もシャワーを浴びた。

その後、なにやらマキさんが話していたが、丁度良い反発のキングサイズベッドに横になると、気付けば深い睡眠に入っていた。

電源が落ちたかのような入眠であった。

目を覚まして、
ベッドサイドに置いていたスマートフォンを手に取ると、時刻は午前9時だった。

隣にはマキさんが居なかった。

僕は飛び起きてまず、おもむろに財

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ハイボールシンデレラ11〜フックに吊された僕〜

ハイボールシンデレラ11〜フックに吊された僕〜

あれから2週間が経つ。

僕が送った、マキさんへのメッセージに既読が付く事は無かった。

僕は仕事終わりに自宅で、部屋にあるTVの画面に向き合い、コントローラーを操作し、ゲームの中の薄暗い舞台の中を彷徨っていた。

僕はまだ、敵の姿を見ていない。しかし先程、姿を消す能力を持つキャラクター特有の、不穏な音が聞こえたので、そのキャラクターであろう。

……このキャラ、マキさんが最近使ってるって言ってた

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ハイボールシンデレラ12〜あの日あの時あの場所で〜

ハイボールシンデレラ12〜あの日あの時あの場所で〜

僕はあの日から2週間と1日。マキさんの事を考える事が多かった。

もう会えないのだろうか。

もし、あの日あの時あの場所でマキさんに会わなかったら、こんな気持ちになる事もなかったと思う。

僕は社員食堂で、少しアンニュイな顔を作って、食後の自販機のコーヒーを飲んでいた。

そんな時だった。

僕のメッセージアプリの通知音が鳴った。

マキさんからである。

「ユウくんごめんーっ!ちゃんと追加できて

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ハイボールシンデレラ13〜開かれたオートロック〜

ハイボールシンデレラ13〜開かれたオートロック〜

ー僕は今、マキさんの家の最寄駅から、スマートフォンのマップを開き、彼女の自宅への経路を歩いている。

あれから、しばらくブサイクなウサギと目を合わせていたのだが、思考の動きが再開した僕は、「家って、マキさんの?(笑)」と返した。

全く面白くない内容なのだが、あえて(笑)を付けたのは、僕の勘違いであった時に、冗談で聞いたという事にするための予防線である。

通知音と共にマキさんと表示された画面をま

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ハイボールシンデレラ14〜割としっかりとした作りの部屋〜

ハイボールシンデレラ14〜割としっかりとした作りの部屋〜

割としっかりとした作りのエレベーターに入り、僕はマキさんが住む階数のボタンを押した。

到着を知らせる音と共に、エレベーターの扉が開くと、割としっかりとした扉が並ぶ道へと続いていた。

その道を、割としっかりとしたライト達が照らしていて、僕は割としっかりとした作りの道を進んだ。

確実に僕よりも良い所に住んでいるな。

……「保育士」は、多忙だというしな。

その割には、低所得なので早期退職する保

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ハイボールシンデレラ15〜「バスソルト」の香り〜

ハイボールシンデレラ15〜「バスソルト」の香り〜

「じゃあ、ハイボールいただこうかな!」

太ももに目が行ってしまうのを誤魔化すように僕は思ったよりも大声で答えてしまった。

あまりの大声に少し驚いていた顔をしていたマキさんだったが、「…あぁ、うん。…じゃあ作るね。」と、準備を始めてくれた。

2つ並んだ同じデザインのグラスに、マキさんがウイスキーを注ぐと、大きな氷がカランッと音を立てた。

それを小さな蝶のモチーフが付いた、可愛らしいマドラーで

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ハイボールシンデレラ16〜赤のプロテインシェイカー〜

ハイボールシンデレラ16〜赤のプロテインシェイカー〜

僕は、「バスソルト」の良い香りに包まれて、バスルームを出た。

「マキさん」と声をかけようとすると、マキさんは口に指を当てて「シーッ」というようなポーズをした。

僕は状況を飲み込む事が出来なかったのだか、一旦黙った。

マキさんは何やら、誰かと電話をしているようだった。

「は?聞いてないし。意味わかんないし。」

「てか…もう、会わないって言ったじゃん……。あれから連絡も来ないし…。」

「え

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ハイボールシンデレラ17〜古民家風のカフェランチ〜

ハイボールシンデレラ17〜古民家風のカフェランチ〜

その翌日、マキさんから連絡が来た。

「昨日は本当にごめんねっ。お詫びにランチご馳走させてください…」と、またブサイクなウサギのスタンプが共に送られてきた。

ブサイクなウサギは何度も土下座をしているアクションをしていた。

それから予定を合わせて、数日後僕はマキさんに会いに電車に乗り込んだ。

マキさんからは、数日前にランチが美味しいカフェがあるといい、カフェのリンクが送られてきた。

僕の家か

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ハイボールシンデレラ18〜僕が居酒屋で流した涙〜

ハイボールシンデレラ18〜僕が居酒屋で流した涙〜

ーー僕は今、マッチングアプリをインストールした、あの時と同じ居酒屋の席に座っている。

僕は涙を流していた。

目の前には、タツヤが座っている。

タツヤは涙を流しながら笑っている。
大爆笑である。

タツヤが、僕のスマートフォンにマッチングアプリをインストールしたあの日以来、僕達は会っていなかった。

マキさんの事を、一部始終話すと、僕は段々と涙が流れた。

最後フラれた所まで話すと、タツヤは激

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ハイボールシンデレラ19〜親友の左手の薬指〜【ユウ編・終】

ハイボールシンデレラ19〜親友の左手の薬指〜【ユウ編・終】

目の前にハイボールが運ばれると、僕は勢いよく飲んだ。

美味しかった。

マキさんと飲んだハイボールとはまた、違った味だった。

ビールを勢い良く飲み、電子タバコを加熱し始めたタツヤの事を見て、僕は一つ思い出した。

「そういえば、タツヤ結婚は?今月って言ってなかったっけ。」

電子タバコを吸い、煙を吐き出したタツヤは「したよ。」と答えた。

先月の頭、この居酒屋で飲んだ以来、僕達は会っていなかっ

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