ハイボールシンデレラ15〜「バスソルト」の香り〜
「じゃあ、ハイボールいただこうかな!」
太ももに目が行ってしまうのを誤魔化すように僕は思ったよりも大声で答えてしまった。
あまりの大声に少し驚いていた顔をしていたマキさんだったが、「…あぁ、うん。…じゃあ作るね。」と、準備を始めてくれた。
2つ並んだ同じデザインのグラスに、マキさんがウイスキーを注ぐと、大きな氷がカランッと音を立てた。
それを小さな蝶のモチーフが付いた、可愛らしいマドラーで混ぜ、ペットボトルの炭酸水を注ぐと、また違った良い音を立てた。
出来上がったハイボールが2つ並ぶと、マキさんは片方を僕に渡してくれた。
僕がそれを受け取ると、マキさんは「カンパーイ」と可愛らしくグラスを近付け、僕はそれに「乾杯」と応え、一口飲んだ。
僕の視線は無意識に、また太ももにいってしまった。
僕は「マキさんハイボール作るの上手いね!」と、また少し大きな声で言ってしまった。
また、それに驚いたマキさんは、「あぁ…うん。ありがとう。」と、半笑いで答えた。
マキさんが作ってくれたハイボールは、特別な美味しさを感じた。
その後、マキさんはキッチンに移動し、冷蔵庫から取り出したタッパーから「ピーマンの揚げ浸し」や、「鶏つくね」などを取り出し、
センスの良い皿に移し替え、「ごめん、これ作り置きなんだけど、もし良かったらおつまみに食べて。」と、テーブルに並べた。
「あ、あとチョリソーとかもあったらいいか。」と言ったマキさんは、またキッチンに戻ると、3種違うものが並んだ「ちょっと良いチョリソー」を焼いてくれ、またテーブルに皿が追加された。
「いただきます。」と言い、口に運んだ。とても丁度良い味付けで、その味はマキさんが「料理上手」な事を証明していた。
なんて、「おもてなし力」。
僕はこの居心地の良い雰囲気と、マキさんが作ったお酒に合う丁度良い料理と共にハイボールを味わった。
酒が進んだ。
外出先で飲むよりも、家で飲む方が酔いが回りやすい気がした。
僕は、酒を飲むペースが段々と早くなり、マキさんの顔も赤くなっていて、マキさんも前回よりも酔っているような気がした。
「マキさん、良い匂いするね。」
僕は、言って数秒で後悔した。普段は言わない様な言葉が、酔いのせいで考えずに出てしまったのだ。
これは気持ち悪いと思われるのではないだろうか。そんな不安を感じている僕に、
「えー、さっきお風呂入ったばかりだからかな?バスソルト入れたんだよね。」
と、気にしないような顔で答えてくれた。
「ユウくんも入るかな。と思って、まだお湯溜めてあるけど、入る?」と、マキさんは目をじっと見て聞いてきた。
「美女」である。
これは、「臭いから入れ。」という意味なのではないだろうか。と少し嫌な想像がよぎってしまったのだが、
僕が「じゃあ、借りようかな。」と言うと、マキさんが厚手のバスタオルを貸してくれた。
バスルームもかなり立派な作りで、浴槽は保温されていた。
浴槽の中のお湯は、「バスソルト」のピンク色に染まっていた。
………バスソルトって何だろう。
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