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ハイボールシンデレラ

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ハイボールシンデレラ1〜来るはずだった「童顔の美女」〜

ハイボールシンデレラ1〜来るはずだった「童顔の美女」〜

時刻は19時。

今、僕はガードパイプに腰をもたれさせながら1人の女性を待っている。

日が落ちて間もない新宿駅の、JRと小田急線の間にはギターを弾きながら懸命に歌う若者の歌声が響いていた。

僕は持っているスマートフォンのカメラをインカメにして、髪の毛を整えると、画面を変えて時間を見直した。

遅い。

僕が新宿駅に到着したのは今から約1時間前の18時7分で、待ち合わせ時刻は18時30分だった。

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ハイボールシンデレラ2〜親友からの結婚報告〜

ハイボールシンデレラ2〜親友からの結婚報告〜

「は? 誰と?」

自分の服に少しかかってしまったグレープフルーツサワーをおしぼりで拭き取り、僕はそう聞いた。

「誰とって、普通に彼女とだよ。」

彼に「普通に彼女」と言う概念があった事にまず驚いたし、そんな存在が居た事も知らなかった。

タツヤとはだいたい月1、2ペースで顔を合わせるのだが、その度に違う女性の話をしていたし、その女性達の統一性の無さにいつも疑問を感じていた。

5つ下の女子大学

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ハイボールシンデレラ3〜僕が電車で流した涙〜

ハイボールシンデレラ3〜僕が電車で流した涙〜

大学時代、僕には「ヒロ」という太った友人が居た。

ヒロは身長も割とある上に横幅がかなり広いため、かなり大きく「横幅がヒロ」という別名も持っていた。

ヒロはいつも食事をしていた。大学近くの食堂の人気メニューであった唐揚げ定食の大盛りを、一瞬でたいらげると、食後のデザートにラーメンを食べていた。

その後しばらくしてから、お腹が空いたと言ってコンビニでフランクフルトを2本つも買ってコンビニ前で食べ

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ハイボールシンデレラ4〜ラブストーリーは突然に〜

ハイボールシンデレラ4〜ラブストーリーは突然に〜

駅に着くと、僕は検索画面で店を調べ、泣きながら電話をかけて予約を取った。

そのまま涙ながら店まで歩き、中に入ると待機室へと案内された。
待機室では、ガタイの良いおじさんが紙煙草を吸いながら不思議そうに泣いている僕の事を見ていた。

店員に呼ばれ、僕が選んだ女性の元へと行き、同じ部屋に入った。

カオルさんという名の彼女は、泣いている僕を見て「えー、どうしたの?大丈夫?」と、半笑いではあったが優し

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ハイボールシンデレラ5〜流し込む1杯目のビール〜

ハイボールシンデレラ5〜流し込む1杯目のビール〜

そして今、僕は完璧な「女性ウケ コーディネート」で新宿に立ち、「童顔の美女」が存在しない。という現実を知ってしまうという結果に至るのだが、

さて、どうしよう。

もう会ってしまったからには、デートを進行しなければいけない。

デートを進行する。という事は、しばらくこの女性と過ごす時間が続く訳で、そんな時に「写真と全然違いますね。」などという事を言ってしまうと、この先の数時間が地獄へと変わる事であ

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ハイボールシンデレラ6〜童顔の美女は存在していた〜

ハイボールシンデレラ6〜童顔の美女は存在していた〜

ハイボールの味を気に入った僕は、いつもよりお酒が進んだ。

「食べ物と酒が合う」という事が、僕はいまひとつ分からなかったのだが、テーブルに置かれた唐揚げを食べ、ハイボールを飲むと、いつもより唐揚げの旨さが増した感じがした。

これか。

タツヤは食べ物に合わせていつも酒の種類を変えていた。

いつもグレープフルーツサワーを頼む僕に「おいお前、食いモンと酒をコーディネートしないと、食いモンにも酒にも

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ハイボールシンデレラ7〜夜の新宿は刺激的〜

ハイボールシンデレラ7〜夜の新宿は刺激的〜

時刻は21時30分。

店を出た時、話をしている女性達に大声で叫ぶガラの悪い若者がいたり、夜の新宿らしさが出てきていた。

僕達はビルの中にあるカフェ&バーに場所を移動させた。

僕はあまりこういうお洒落なバーには行く機会がなかったのだが、マキさんはこの店に行った事があると言っていた。

マッチングアプリで出会った男性と行ったのかな。この子。と他の男の影を感じ、少し嫌な気分になったのだが、「童顔の

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ハイボールシンデレラ8〜ラブホテル受付の配慮〜

ハイボールシンデレラ8〜ラブホテル受付の配慮〜

僕はラブホテルには来た事がある。
しかしその時は1人で入室した。
理由はデリバリーヘルスの利用だ。

僕はあれ以降ソープランドへは行かなかったのだが、
デリバリーヘルスを利用した事が1度だけあった。

その時は受付の従業員の顔のみ見えないタイプの作りだったのだが、今回利用するホテルは従業員の顔が見えるタイプのスタイルであったため、少し気まずかった。

しかも若い女性なため、より一層恥ずかしかった。

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ハイボールシンデレラ9〜魔法が解けた0時過ぎ〜

ハイボールシンデレラ9〜魔法が解けた0時過ぎ〜

そして僕はシャワーを浴びている間、思い出していた。

「横幅がヒロ」が彼女との初セックスを終えたと言っていた日、

「俺達も、やっと男になれたな。」と、

満面の笑みで手をグーに差し出してガッツポーズをして見せたヒロに僕は

「そうだな。」

と言ったが、実はまだ自分だけ「男」になりきれていないような、置いて行かれたような気で落ち込んだ日を。

ーなぁ、ヒロ、元気にしてるか?

俺は今日やっと、男

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ハイボールシンデレラ10〜口紅の色が着いた吸い殻〜

ハイボールシンデレラ10〜口紅の色が着いた吸い殻〜

「男」になった僕は、マキさんがシャワーを浴びた後、続けて僕もシャワーを浴びた。

その後、なにやらマキさんが話していたが、丁度良い反発のキングサイズベッドに横になると、気付けば深い睡眠に入っていた。

電源が落ちたかのような入眠であった。

目を覚まして、
ベッドサイドに置いていたスマートフォンを手に取ると、時刻は午前9時だった。

隣にはマキさんが居なかった。

僕は飛び起きてまず、おもむろに財

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ハイボールシンデレラ11〜フックに吊された僕〜

ハイボールシンデレラ11〜フックに吊された僕〜

あれから2週間が経つ。

僕が送った、マキさんへのメッセージに既読が付く事は無かった。

僕は仕事終わりに自宅で、部屋にあるTVの画面に向き合い、コントローラーを操作し、ゲームの中の薄暗い舞台の中を彷徨っていた。

僕はまだ、敵の姿を見ていない。しかし先程、姿を消す能力を持つキャラクター特有の、不穏な音が聞こえたので、そのキャラクターであろう。

……このキャラ、マキさんが最近使ってるって言ってた

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ハイボールシンデレラ12〜あの日あの時あの場所で〜

ハイボールシンデレラ12〜あの日あの時あの場所で〜

僕はあの日から2週間と1日。マキさんの事を考える事が多かった。

もう会えないのだろうか。

もし、あの日あの時あの場所でマキさんに会わなかったら、こんな気持ちになる事もなかったと思う。

僕は社員食堂で、少しアンニュイな顔を作って、食後の自販機のコーヒーを飲んでいた。

そんな時だった。

僕のメッセージアプリの通知音が鳴った。

マキさんからである。

「ユウくんごめんーっ!ちゃんと追加できて

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ハイボールシンデレラ13〜開かれたオートロック〜

ハイボールシンデレラ13〜開かれたオートロック〜

ー僕は今、マキさんの家の最寄駅から、スマートフォンのマップを開き、彼女の自宅への経路を歩いている。

あれから、しばらくブサイクなウサギと目を合わせていたのだが、思考の動きが再開した僕は、「家って、マキさんの?(笑)」と返した。

全く面白くない内容なのだが、あえて(笑)を付けたのは、僕の勘違いであった時に、冗談で聞いたという事にするための予防線である。

通知音と共にマキさんと表示された画面をま

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ハイボールシンデレラ14〜割としっかりとした作りの部屋〜

ハイボールシンデレラ14〜割としっかりとした作りの部屋〜

割としっかりとした作りのエレベーターに入り、僕はマキさんが住む階数のボタンを押した。

到着を知らせる音と共に、エレベーターの扉が開くと、割としっかりとした扉が並ぶ道へと続いていた。

その道を、割としっかりとしたライト達が照らしていて、僕は割としっかりとした作りの道を進んだ。

確実に僕よりも良い所に住んでいるな。

……「保育士」は、多忙だというしな。

その割には、低所得なので早期退職する保

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