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ハイボールシンデレラ12〜あの日あの時あの場所で〜



僕はあの日から2週間と1日。マキさんの事を考える事が多かった。


もう会えないのだろうか。


もし、あの日あの時あの場所でマキさんに会わなかったら、こんな気持ちになる事もなかったと思う。



僕は社員食堂で、少しアンニュイな顔を作って、食後の自販機のコーヒーを飲んでいた。


そんな時だった。


僕のメッセージアプリの通知音が鳴った。

マキさんからである。



「ユウくんごめんーっ!ちゃんと追加できてなかったみたいで、今メッセージに気付いたよっ!元気?」

少しブサイクなうさぎのキャラクターが汗を出しながら、両手を合わせて「ゴメン」と言っているスタンプと共にその文章が送られてきた。



僕は、この2週間と1日の嫌な感情が一気に吹き飛ぶかのような気持ちでその文章を読んだ。


なんだ!無視されてたわけじゃないのか!!

なんだ!




僕は少し顔に笑みが浮かんでしまうのを隠しながら、残りのコーヒーを飲み干した。


「全然大丈夫だよ。元気です。昨日マキさんが使っていたキラーにボコボコにやられました(笑)」と文字を打ち、送信した。



すぐに返信がきた。


「ウケる。今度一緒にやろうよ!ていうか、今日とかヒマ?」と。


これは誘われるという事か?


僕は今日は仕事終わりの予定がない。

「今日は」というか、そもそも僕は予定があるという日がほぼ無い。


飲み干したコーヒーのカップを、自動販売機の隣のゴミ箱に捨てると、隅に寄りスマートフォンを開いた。

僕は「今日は何も予定ないよー」と返信をした。


またすぐ、通知音が鳴る。

「家くる?」


家………?



家………?



家………?


マキさんの文章と共に送られてきた、ハテナマークが飛び出しているブサイクなウサギのスタンプの動きを眺めながら、僕の思考はしばらく停止していた。


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