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エッセイ

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今までの日々や、ささやかな僕の奮闘を書いていければと思います。
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記事一覧

エッセイ  「サンタクロース」

エッセイ 「サンタクロース」

  僕らはいつまでサンタクロースの存在を信じていただろうか。

 枕元にプレゼントをそっと置く母親の姿を薄目で目撃してしまったり、全く自分の願いとは異なるプレゼントを枕元で見つけてしまったり、何かのきっかけでサンタの存在を否定するようになった人もいるだろう。
 僕の両親はサンタ関連の動きに抜かりのないタイプで、そういった凡ミスをすることなく純粋にサンタを信じながら育った。それでもいつの間にかサンタ

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エッセイ  「ご自由にお持ち下さい」

エッセイ 「ご自由にお持ち下さい」

 たまにお店や家の前に、「ご自由にお持ち下さい」と書かれた張り紙があり、まだ使えそうな食器や家具などがブルーシートの上に置かれていることがある。
 僕自身がそこから持ち帰ることはないが、綺麗な食器や子供のおもちゃなど、二日もすれば色々と持ち帰られており、捨てる手間を省けるメリットと、欲しい物を無料で手にするメリット以外の介在しない、とても平和な光景だと思っていた。

  仕事が終わり夜中の2時ぐら

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エッセイ 「釈迦チキ」

エッセイ 「釈迦チキ」

 ファストフード店で本を読んでいると、「シャカッ、シャカッ、シャカッ」と小気味のいい音が聞こえてきた。
 顔を上げて店内を見回すと、大学生風の男性がクリスピーチキンの入った包み紙を両手で持ち、上下に揺らしている。

「シャカッ、シャカッ、シャカッ、シャカ..…」

「シャカッ、シャカッ、シャカッ、シャカ…..」

「シャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカッ!!!」

「シャカッ、シ

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エッセイ 「唐揚げにレモン問題」

エッセイ 「唐揚げにレモン問題」

 唐揚げに無断でレモンを絞る行為は、飲み会での御法度である。

 唐揚げには「レモンをかける派」と「レモンをかけない派」がいるのだから、ちゃんと絞る前に「レモン苦手な人います?」と聞いてから絞らなければならない。
 もしこのルールを破った者がいたならば、もうその飲み会中には覆らないほどの悪印象を参加者に与えてしまう。
「自己中心的」「がさつ」「空気が読めない」、そういった負のイメージを一身に請け負

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エッセイ 「傘の行方

エッセイ 「傘の行方

「よかったら、この傘使って下さい」

 後ろから優しく声をかけられた。

 その日は午後から雨の予報だっだけど、昼間はそんなの信じられないほど晴れていて、傘なんて持ち歩いてるものならチンピラ二人組に「おい見ろよ、あそこにとんだチキン野郎が歩いてるぞ」と罵られるに違いなかった。
 だから僕は傘を持たず家を出て、いつも作業するカフェに向かったのだ。

 店に入って1時間ぐらいすると雲行きが怪しくなって

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エッセイ  「レジ袋が上手に取れない」

エッセイ 「レジ袋が上手に取れない」

 レジ袋の有料化が始まりどのくらいの年月が経っただろうか。
 買い物に出かける時は当たり前のようにエコバックを持つようになり、忘れた際にはレジ袋に五円も取られるのが許せなくて、両手に商品を抱え、さらには無理やりポケットにねじ込んで持って帰る。
 それでもあまりに量が多い時や、持って帰る距離としては遠すぎる場合にレジ袋を購入することもあるのだが、あのセルフで取るシステムのレジ袋を、どうしても上手に一

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「日常」

「日常」

 高級マンションの前を通りかかると、丁度お母さんと幼稚園児が手を繋いで外に出て来た。
 すると突然、「ちょっとストップー!!」という大きな叫び声が上空から響いた。

 僕とその親子が思わずマンションを見上げると、10階のバルコニー辺りだろうか、僕の目の前にいる親子に対してママ友のような女性が叫んでいるようだった。
 下にいるお母さんもそれに気づき、「どうしたのー!!」とマンションを見上げたまま大き

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「寒暖差には御用心」

「寒暖差には御用心」

 最近は寒暖差の激しい日が多く、「明日は夏日になるので日中は半袖でお出掛けを」とテレビでも呼びかけたりしている。
 この時期にそんなことはないだろうと上着を着て外出すると、本当に暑くて結局はTシャツ姿になり歩きながら汗ばんでしまう。だからと言って毎日ちゃんと天気予報を確認してから家を出る訳ではないので、先日もまた寒暖差によって服装を間違える失態を犯してしまった。

 その日は前日がかなり暖かく、「

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「解けない呪い」

「解けない呪い」

 しばらく放置していた家のポストを開けると、大量のチラシや割引券などが入っていることがある。
 面倒だなと思いながらも、そのままにしておくと必要な郵便物が入らなかったり、見落としたりなどの支障が出てしまうので捨てなければならない。チラシや割引券の他にも、地域新聞や近隣住民への道路工事のお知らせなど、手品かと思うほど様々な形状の紙が小さなポストの中から出現する。
 両手にも持ちきれず、ポストを閉めよ

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「外野という未知の領域」

「外野という未知の領域」

 小学生の頃からサッカー部に所属して、野球は父親がテレビの前で缶ビール片手に観戦するものだと思っていた。
 しかし大人になるにつれ、知り合いや先輩などから野球を見に行こうと誘われる機会が増え、実際に球場まで足を運びビール片手に応援したりしている。
 応援するチームは誘ってくれた人によって変わるのだが、選手達の迫力あるプレーや客席の熱気、球場グルメの豊富さや、ビールサーバーを背負い走り回る売り子の脚

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「メンテナンスの星の元に生まれた天才」

「メンテナンスの星の元に生まれた天才」

 前回のエッセイでピッキング業者さんの話を書いたが、昔に知り合いのカフェで深夜だけBARのお手伝いをさせてもらっていた時のことを、文章を作りながら思い出した。

 その日お店に行くと、僕と交代になる社員から食器洗浄機が動かなくなり、昼間にそのメーカーの修理担当の業者に来てもらったと聞かされた。
 当時その食洗機はまだ設置してから2年もたっておらず、そんなに早く壊れるのはそもそも食洗機自体に問題があ

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「真夜中のピッキング」

「真夜中のピッキング」

 BARで飲んでいたお客さんが酔っ払い、トイレから出る時にかなり勢いよくドアを閉めたなぁと思っていた。
 その後会計が終わりお客さんがお店を出た後に確認をすると、酔ってトイレから出る際の解錠が中途半端になっていたのか、ドアを勢いよく閉めた拍子に内側から鍵がかかった状態になっていた。
 トイレの扉が開けられない現状に「うん?」と30秒ほど固まってしまい、「おいおいおいおい!これどえらい事態に陥ってん

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「ゲリラ豪雨の中でも」

「ゲリラ豪雨の中でも」

 雨の予報などなかったはずなのに突如として空が黒い雲に覆われ、「ゴゴゴゴゴッ…」と雲の中にいる龍が唸り声をあげたような音が空にこだまする。
 すると大粒の雨が一斉に地面を激しく叩き始め、傘を持たぬ人達は悲鳴をあげながら避難する。

 そんなゲリラ豪雨に近頃よく遭遇するのだが、先日はその影響で電車のダイアが乱れ、駅のホームで足止めを食らった。
 向かいのホームが白くぼやけて見えるほどの激しい雨の中、

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「泡のような夜の思い出」

「泡のような夜の思い出」

「なんか炭酸が飲みたいなぁ…」

 これは僕が子供の頃に時々聞いた、母親の口癖のような言葉だ。
 家にスナック菓子やチョコレートなどは基本的に置いておらず、小学校の二年になるまでは駄菓子屋にも行ったことがなかった。
 お菓子や甘い物を食べたい時は、いつだって母親の手作りが当たり前だった。
 駄菓子屋で買ったお菓子をビニール袋に入れて公園を走り回る光景に憧れはあったものの、子供のためを想い、

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