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海の守り神
お盆休みに行ったお台場。古い時代を保存する船「宗谷」の中を見学できた。
古いインテリア・設備・デザインなど、驚いてしまうほどに残っていた。
レトロというのかビンテージというのか。
おしゃれさを目指す船とは違う。今の感覚で空間全体を見ると、おしゃれとは思わない。
ただ、その一つ一つを取り上げるなら、今でも気に入る人が多いデザインだろう。良い状態で残されてきたインテリアや設備には驚くしかなかった。
その船は守り神のようだが、守り神の方も守られてきた様子。
古い時代から大切にされてきたからこそ、残っているのだろうと思う。
地上とは適用される法令が違うことで、残る部分もあるように感じた。
古い建築なら時々楽しんでいるが、室内の様子がこれほどには残っていない、と驚いた。
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ビクターの真空管ラジオか
インダストリアルな金属製も、木や布製の温かみを感じるデザインも混ざっている場所が多かった。いろいろなテイストの文具や道具も混ざっている。今の感覚からは、空間全体としての違和感は大きかった。
それでも、そこでの暮らしを感じられる状態が残っていることに驚いた。それから、船内に設置された、一つ一つの丁寧なデザインと仕上がりの良さ、保存状態の良さにも驚いた。
見出し画像のインダストリアルな天井照明はたくさん見かけた。おしゃれだった。機器・器具もたくさん。
船内は古い時代の空気感まで伝える大きな博物館だった。
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新造されたのは戦前のこと。ソビエト連邦から発注された貨物用の商船だったことで、氷がある海に強い形に造られた。が、時勢の影響で引き渡されなかった。
戦後を迎えた船運の強さもあり、初代の南極観測船だった船。その後は、北海道を拠点に救難活動で活躍したことで「北の海の守り神」と呼ばれるようになったらしい。
今も訓練に使われたりするようだが、南極観測船の頃に復元され展示・公開されている。新造された頃の形は少ないのだろうと思うほどに、たくさんの改造を重ね、いろいろな時代・場面を乗り越えてきた船。
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デスク上の黒いハードケースはタイプライター用か
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「船の科学館」で見られる。航海しないが、海上で船として保存されている。
保存当時の館長は「不可能を可能にした、奇跡の船」と表現したらしい。
現役の頃も解役後も、大切にされてきた様子。
何となく調べた範囲でも大切にされていたことは伝わった。
が、そんな知識を後付けするよりも前に、実際に船内を見学しただけで伝わった。
大切に思うからこそ作られたと感じるデザインがたくさん。
その後も大切にしていなかったなら、これほどまでに、いろいろな設備やインテリアが残ることはないだろう。
海に囲まれた国にいる「海の守り神」。
誰かが憶えていることで、守り神の方も、きっと守られていくのだろう。
なので、私の写真と楽しんだ内容を、このnoteにまとめることにした。
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宗谷の見学は同行者の提案だった。その近くにいたときに、そんな話になった。
子どもの頃、何度も行ったことがあると言っていたような。同行の大人たちには、船の科学館での記憶があるようだった。
小さい頃に関東で育っていない私には、そういう記憶はない。おそらく初めて。
ただ、南極観測船の船室についての母の感想なら、古い記憶にある。
「こんなに何もない狭い部屋で長く過ごすのは無理。花も飾れない。大変な仕事だと思う」というようなことを言っていた。母は、海のそばでの暮らしの方が落ち着く人だが、それでも、そう思ったようだった。
それを聞いた私も、そのときか後日か、その感想が的外れではないと感じた憶えがある。私も子どもの頃は、海や乗船は今より身近だったが。
その感想は、初代の観測船、宗谷のことかどうかもわからないし、実際に見たのか、テレビで眺めたのかも憶えていない。
私はそんな記憶を持っていたが、宗谷を見学してみると、かなり印象が違った。
シンプルなのは間違いない。
しかも通常の船より、かなり揺れる構造らしい。無駄があったり固定ができていない状況なら、危険に直結するだろう。
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とはいえ、当時としてはシンプルでコンパクトというだけではないか。
今のシンプルやコンパクトより、かなり装飾的で空間にもゆとりがある。
南極での撮影と思われる大きな写真も、あちこちに飾られていた。
温かみのある船内。
このまま木製など、温かみを感じた物の話を先に。
カッコイイ方向の設備・計器は、その後に。
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「オリエンタル」「シーガル」と書かれていた。
その名前が商品名に入っている印画紙は、
今も売られている様子
どの部屋だったか、青い花瓶のようなものが置かれていた。ただ、花瓶にするにしても、真水と生花は無理なような…
少し調べると、上に被せるコップがセットになっている水差しと思われた。が、その水差しらしき瓶だけでも、切子と思われる、装飾的な花やドット柄が見えている。
その置き場所は壁に設置された木の造作棚。船が揺れても物が落ちにくい、ドリンクホルダーのように造られていた。
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小さな本棚もたくさん見かけた。
小さくても、とても丁寧に造作された家具ばかり。
小さな丸窓の上にある木製のバーはカーテンポール。小さな窓にも、一つ一つ小さなカーテンとタッセルが誂えられたということだろう。タッセルフックもあった。
椅子やソファのカバーや、デスク上のランプシェードには、たくさんのギャザー。
頑丈に造られた船体に、ベッドのような大きな家具から小物まで、木や布の丁寧な手作業のインテリアが、たくさん設置されていた。
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初代MONOか。
ロゴが違う様子
何となく置かれたように思う物からも時代を感じた。トンボ鉛筆は、太陽・惑星・月の、1時間毎の位置が書かれた本の上にあった。
その本は、昔の鉄道の時刻表に似た雰囲気。航海年鑑と呼ばれるものか。開かれているページは、見開きで昭和62年7月23・24日。
その隣りには、古さを感じる航海用の平行定規。目盛は消えてしまったのか。そもそも目盛がないこともあるのか。私の写真には写っていない。
奥に神棚(宗谷神社)についてのパネルも写っていたが、神棚を見た記憶がない。非公開か見落としか不明。明暗差が激しく、写真ほどに目視できなかった。
その隣のパネルには航空指令室と書かれている。船は空母。南極観測では物資輸送にヘリコプターが使われていた様子。心地良い広さのヘリコプター甲板も公開されている。
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マネキンは今でも必要だろう。が、こういう人間味を感じるマネキンは、今は珍しいのではないか。
今は、顔や髪まで作らないような… 私は、この後ろ姿のマネキンしか撮っていないので伝わりにくいが。
展示のために設置されたのだろうが、希少なマネキンたちが残っているような気がした。
古い設備もたくさん見かけた。住宅設備と呼ぶものも、そうではないものも。
既にラジオ・印画紙・鉛筆を取り上げたが、今も売られている商品に繋がる物が多いように思った。
写真は映り込みがひどいので載せないが、「冷凍食品は、南極観測によって本格的に実用化されました」と、冷蔵小出庫のパネルに書かれていた。パネルそばの棚には、日本冷蔵株式会社と書かれたダンボール箱も。
その会社は今の株式会社ニチレイ。沿革のページを見ると「1956年 南極観測隊に冷凍食材を提供」と書かれていた。
物だけではなく、技術も今に繋がっている様子。
家電に近い感覚の設備だと、カセットテープとは違うタイプだがテープのプレーヤー、ダイヤルの付いた古いテレビ、タイプライター、黒い受話器、真空管ラジオ、メカメカしい扇風機…
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東芝の冷蔵庫の上にはクラリオン製8トラックカートリッジ用プレイヤーか。そのテープは、カセットテープなら必要な、巻き戻しや裏表の入れ替えの必要がない。
東芝のテレビのダイヤルにはVHF・UHFという文字が見える。ガチャガチャではなく滑らかに回りそうだ。昔のラジオのダイヤルのように、周波数を細かく合わせてテレビを見る、と聞いたことがあるような…?
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GALAXIE DELUXE。
昔はよく見かけたデスクマットも
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南極観測船当時の船名文字と書かれている。
その上のSEIKOの時計は、
操舵室の計器の雰囲気。
船のためのデザインに見えた
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フジヤのバロメーターなのか。
温度計・気圧計・湿度計の様子
タイル貼りの大きな浴槽。洗面器や水栓。医療器具・厨房機器など設備・計器もたくさん。
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中には今は何が入っているのだろう
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昔はよく見た紅葉柄の型板ガラス
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不思議な形のスイッチが壁面に
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昔はよく見かけたレトロな湯のみも。
白いドットは少し凹んでいる手触りだったような…
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そのザルは金物でもプラスチックでもない
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が、機能的に造られた治療室。
デスクの上には手作業で綴じられた古そうな資料。
宗谷の文字が手前に見える。
船内での医療についての記録か
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ホーローの足踏み式ゴミ箱がレトロ。
メディカルペールと表現するものか@治療室
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調べると船橋と機関室を繋ぐ通信機らしいが、
これはどの部屋と繋がっているのだろう。
それとも、通信というのはリモコンということか。
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背面の黒い受話器に時代を感じた
もう少し、居室を撮ったと思う写真がある。
その後に、資料の写真を載せておく。
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中身も入っている様子。
昭和の頃には見かけた気がする商品。
今も「ヘアトニック」・医薬部外品が売られている
写真は映り込みが激しいので載せないが、ナショナル製と思うレトロなデスクライトが載った部屋も。
洗面器に、水栓などの古い金具が残されているのは、船上ならではだろうかと思ったりもした。
ここからは資料の展示を撮ったもの。
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亡き祖父のロープワークの手早さ的確さは、戦争のときに海軍で覚えたものかと思ったりもした。そんな話を聞いたようにも思う。簡単そうに難しそうな固定をしている祖父の姿は記憶にある。母も何だか上手い。
私も何となくコツを見知っているらしく、種類は知らないものの、場面に応じてまともに固定できる方だとは思う。が、あっさりほどけて自分でウケたりするのだから、上手いとは言わない。
額縁まで編み物なことに後日、気づいた。
救命浮環には東京水産大学・海鷹丸の記載がある。2代目の海鷹丸は随伴船として参加したらしい。
今は4代目が東京海洋大学の練習船として、南極海での観測をしている様子。
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今の「船の科学館」は「宗谷」のみ。
本館から少し離れたところに宗谷が係留されていた。
クルーズ客船の形をした本館は展示終了されている。お盆に見たときは、足場に囲まれて解体工事中だった。別館など周囲の施設も展示終了されている。どこか別の場所になるのか、リニューアルオープンは検討されている様子。
「海の守り神」が、これからも良い状態で親しまれていくといいなと思う。
≪あとがき≫
とても暑いときに行ってしまったので、暑くないときに再訪したい場所。
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船よりも、もっともっと古い時代の、
リアルな空気を封印した氷
あちらこちらを面白く感じたので、気になった方向にカメラを向け、たくさん撮った。
が、暑さで自分に無理があったため、何がどう撮れたのか、確認する余裕も撮り直す余裕もなかった。ガラス越しが多く、映り込みも激しかった。明るい西日で明暗差が大きく、目視では見えなかったりもした。
後日、写真を見て楽しんだ。
その場では、面白いとは思いつつ、何か気になっても解説パネルを読むどころか、写真に撮る余裕もなかった。
なので、順路通りに歩いたが、どこの何の写真を撮ったのか不明。
このnoteでは、話の流れ優先で並べ替えてしまったので、更に判別不能。
後からの補正中、映り込みはもっと抑えられるように感じた。が、雰囲気ある光景が映り込んでいたりもしたので、消さずにそのままにした。
撮りたかった部分も映り込みも、反射の白さを可能な範囲で抑え、少しシャープに見やすい方向に補正した。
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デスク上の丸いのは何だろうと、
わからないまま撮った写真
フロアライトなのか、そのライト部分がデスク天板に当たってしまっているように見える。
ビンテージなワークライト。インダストリアル照明と呼ばれるのか。
古さから固定が難しくなったのか。きっと、とても重いということだろう。
まさか、暑かったから?
私は暑くなくなってから、また楽しみに行きます。