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2021年6月13日 19:55
このお話は全て創作物です。お話の出来事や登場人物は全て架空のものです。2年前、安楽死の合法化が閣議決定された。アメリカやヨーロッパの若者を中心にした"own lives movement(生きることを自ら手の中に)"に端を発し、全ての人々に対して平等に生存権と"自己生殺与奪権"を認めることがが新たな人権のスタンダードとされたことが背景にあった。世論においては激論の数々がわき起こったが、上
2021年6月18日 21:22
このお話は全て創作物です。お話の出来事や登場人物は全て架空のものです。かつて偉大な王が建国した美しい王国に人々は幸せに暮らしていた。やがて人々はいつしか満足を忘れ、周りと比べ合ったり、誰かの幸せを奪おうとした。とうとう人々は祭壇を犯し、王国には災いが降りかかり海に飲まれ海底へ沈んだ。生き延びた人々は絶望と悲しみの中から、かつての王国を夢に見て、祭壇に石を積み上げた。---------
2021年7月25日 18:06
場所は赤坂見附駅近くのバー。カウンターにスーツ姿の男女が席を並べている。2人が日中に流した汗はとうに乾き、繰り返される明日への倦怠を紛らわすために、ゆっくりとウィスキーを体に流し込んでいた。男が女に向かって言った。「あいつとは、どうだったの?」女は即座に返した。「なにもないよ。」男の表情は一瞬硬直したように見えたが、「それ以上の追求をするつもりはない」と訴えるように、すぐさま前を向
2021年12月20日 22:56
夜の12時を回った頃、私は天神周辺を走行していた。しばらくしないうちに大通りに若い男女が私にむかって手を挙げた。今日は金曜日。彼らの足の向きと立ち姿の距離感で彼らの関係のおおよその予想がついた。男は乗り込んですぐ、行き先の駅名を伝えた。「Y通りを通って、南口に着くようにしますね」私は男に伝えると、男は私の言葉を受け取ることもなく生返事をした。私は車を走らせた。男は女に、いかにもこれか
2022年11月24日 22:05
人の想いは移ろいやすく、時の流れによってその形を簡単に変えてしまう。あなたにも、あのときなぜそう思っていたのか、説明がつかないことがあるはずだ。それが今まで経験した中で一番素晴らしい思いであっても、もうそこには届かない。その失われてしまった想いに名前をつけることはできない。海の波が気づかないうちに岩礁を削り取るように、その思いは時の流れの中でいつのまにか形を変え、元の姿を失ってしまう
2022年7月12日 12:54
✳︎どんなに尽くしても、きっとあなたは私の元を去ってゆく。けれど私はけっしてそれをひどいなんて思わない。だってあなたは猫だから。✳︎2004年4月25日婚約を破棄した勢いで、上京してから勤めていた会社を辞めて、福岡へ戻ってきた。東京とは少し匂いが違う。母がスズキの軽に乗って空港に迎えに来てくれた。久しぶりにみる母の目元はこの前あったときよりも暗い色をしていて、こんなかたちで
2022年11月5日 09:32
物憂げな秋が好き。シューズを履いて走り出す。景色が変わり、スピードが変わり、私が私の中に溶け込んでいく。次第に自分の息の音だけが私を占めるようになり、喉の奥に風が出入りするのを感じる。 風は冷たいけれど寒くはない。頭の中の声がカラになると、私の中に、今まで出会った人々のことが浮かんでくる。それは頭上の星々のよう。物憂げな秋が好き。星々について思いを巡らせる。空間や