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錫森栞
2023年4月11日 23:51
笑って笑って笑って花曇りの下片手には借りてきた本栞には貴方の写真戻ってこいよ花曇りの中から笑い転げておいでよ
2023年4月11日 22:50
忘れた頃に喉元から咲く花冷えの叢雲
2023年4月4日 18:28
浅葱に浮かぶ月桂に指を伸ばして大強盗何夜も何夜も夢になる幾度か起きてや部屋の底幾度か起きてや深空捧ぐ金色花幾度か目にして手に取った零れ落ちるる金剛花幾度か起きてや海の底気泡に溺れて春の闇
2023年3月3日 13:23
何も言えないから何もできないからひねくれているから傷つけるのも傷つくのも怖いから弱いから書いていることしかできないんだよなどうしようもないんだもうどうしたらいいのかすらわからないからただ今日も朝から晩まで原稿用紙を真っ黒にしている私の創作はそうしたものの吐露で、けして生き甲斐や、楽しみなどではなかった。楽しみに変えようと思っても変えられなかった。無理だっ
2022年1月17日 19:14
許しが欲しいが誰に頼んでなんの為の許しが欲しいのかはわからなかったただ許されたかった愛が欲しいが誰に頼んでなんの為の愛情が欲しいのかわからなかったただ愛されたかったペンが欲しいが誰に頼んで何に使うペンなのかわからなかったただ与えられたかったそんな夢ばかりを見ていた
2021年10月3日 20:51
新しい石鹸を開ける時が何故か好きだあの柔らかな薫りが包紙をめくるとわたしの鼻先へ流れてくる、あの感覚が好きだ石鹸が消えていく時、私は寂しく感じたり、時によれば早く無くなってしまえと泡立てるそして消えたらまたその事は忘れて包紙をめくるあぁ、私も人間なんだな。
2021年7月29日 06:26
自転車を漕いだ。湖沿いの深夜の路地を夜歩く蟻達を追い越して、後ろには私の腹を抱くように掴まる亜麻色の髪が一人。無機質に冷めきった路地の切れ目を渡ると月光の当たり方もやや変わって夜光虫の喧騒が嗚呼唯、よく見える。砂防林の間からその様子を眺めて、夜風が私の前髪を引っ張る。亜麻色の髪はまだ目を覚まさない。この反対の岸には大層立派な大学病院がある訳だが、この静寂の中でその夜景が湖面に反射し、夜
2021年8月31日 23:28
辺り一面は暗い樹木に囲われた。時々廃車が見えるばかり、獣道はどこを走っても同じ景色が続いていた。「どうして僕は」ここに来たのだろうか。壊れた山中の公衆電話の受話器を取ってみる。ひんやりとしたアスファルトは心地がよかった。「もしもし。」自嘲の笑みを浮かべて。カビの匂い、いつかのアパートを思い出した。横には放置された自転車に洒落たサンダルの片
2021年7月25日 20:10
流れていく雲に手を伸ばそうが届かない靉靆を眺めるばかりの窓際の一輪の野花は花弁を落とす水をやる。花弁を落とす。薬をやる。花弁を落とす小さな灯火が最後に燃え盛るような八月某日そこには散った花々の上に蜉蝣がいた
2021年7月26日 17:14
虚構でしか生を描けない虚構の中に愛情が宿る虚構の中と早朝の喧騒に虚無透かし足つけた生暖かい泥の上に寝て湖面の月光が邪魔な目を包めば想い出の狭間孤独の平穏愛と快楽夜と人間の灯り私は湖岬に一人私の手を眺めても体温のまま雨粒眺めても虚構の中でしか生を体感できない
2021年8月14日 21:29
彩られた珊瑚礁みたく読書灯の眩い部屋の中で自分の手の輪郭を透かしている。真っ黒なカーテンが深海みたいだ。此処は誰も来ない。僕の場所。外には大きな邸園があるけれど、大人達みたいに御茶を不味くするような話はしないで、僕は此処で天井の魚に笑いかける。大きな天幕に覆われた僕の地球に、大きな鋏の絵画が一つ。机にも僕の描いた鋏が一つ。此処は終わらない夜更けの世界だ。鋏は必要がないからこの絵は後で燃