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河原 真宙
2022年6月23日 11:00
優しいだけの言葉に救われていた。嘘だらけ。それでも私は救われた。部屋の匂いはコンクリート。ほこりだらけ。だから私は生きて来れたんだ。落ちる涙は沁みる事なく弾かれた。泣く事の無意味さをいつまでも教えてくれている。冷たい言葉を抱きしめて夜に浮かんで弄ぶ。少し月に例えた悲しみは夜に沈まない涙に変わればいい。
2021年8月20日 10:21
貴方の為だけに現れた夕日が今日も夜に潰されていく。貴方の為だけに祈る唄が灯台の光の瞬きに消えていく。今日の終わりを手で探り深海へと続く生きる事への渇望がまだ見つからない。私の朽ち果てた身体の中音だけが命を教えている。貴方から途切れた音を探している。今日の続きを手で探り月へと続く道を沈みながら歩いて行く。私の沈んだ後に見上げた月は青い。音だけが無く眩しさに目を瞑る
2021年8月19日 14:01
明日から独りで生きて行く事は私以外みんな知っていたのね。少しづつ話し合いを重ねて私以外みんな納得していたのね。タバコを吸って吐いた先にある長い影を引きずる女はどこか私に似ている。溜め息も出ないで吐いた息がいつかの夜の月を隠すだろう。そう言えばパパとママのどっちが好きだと交互に毎晩尋ねていた。何て答えていれば独りにならずに済んだのだろう。そう言えば私は産まれて良かっ
2021年8月5日 10:48
初めて見たのは泣き顔。ただ光に包まれた小さな生命。抱き締めながら私は自分の強さと弱さを知りました。正しい事への怖さをそれを貫く脆さを闇の中でしか光は射さない事を、奪われた時間が囁いている。最後に見たのは笑顔。ただまっすぐ見つめる幼い生命。抱き締めながら目を背ける私は吐かれた純粋な嘘に憩おう。涙だけでは癒せない傷。死ぬ事でも戻せない時間。概念ではない事実だけが転がる
2021年8月3日 23:16
突き飛ばされた駅のホーム貴方の躊躇いで死なずに済んだ。人混みに紛れた貴方の顔忘れるはずもなかった。他人の靴を履いた様な違和感が私を包む電車の中。他人の視線が捻れてぶつかり熱く私は異物の様に焦げる。駅のホームは今日も人に溢れて私はいつもと同じ最前列で俯く。私の知らない他人が私の事を知っている。貴方を知らないはずの私は貴方をずっとさがしている。いつもの風景なのに貴
2021年8月2日 00:05
目が覚めれば独り切り。朝の光が輪郭を滲ませていた。昨日の残像を思い出すのは夢から覚めた悪夢。瞼の裏に色が継ぎ足されていく。押さえつけながら始まる朝。目を閉じても独り。月の光が熱帯夜を運んでいた。寝言で呟く祈りの言葉。縋り付き引き摺る長い影に怯える。それでも生きている私。もうすぐ会えるから待っていてねと笑う。月の光は太陽だと知らずに。
2021年7月26日 14:48
約束を交わさずに済んだのはせめてもの救いになった。金曜日の夜は月が青かった事思い出せたから救われた。夜に降る雨にだけ濡れる花を見た。悲しく無いのに涙する夜に重ねていた。最後の言葉を呑み込んだのは青い月が雨を呼ぶ事を知っていたから。子供の泣く声が雨によく沁み込んで地面に落ちる前に消える煙草の煙。声のある方に振り返っても、独り。いつかどこかで会えると確信しながら言い聞かせ