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日記堂の告白 中編その2
その日は、何やら月がとても綺麗な日だったようで(たしか、ストロベリームーンだとかそんな名前でした)それなら二人で見に行こうという話になりました。
私はせっかくなら静かでよく見える場所でと思いましたから、彼の手を引いて、私の学校の裏山にある小さな湖へ連れていきました。
予想通りというか、誰もいない湖には真っ赤に輝く月だけが大きく輝いて、手を伸ばせば届きそうな程近くに静かに浮かんでいました。
売れない先生と私の話 ヨリミチ
先生の家は、少し田舎だ。都心からバスなら40分、電車ならば30分程の街にある。都会の喧騒はないけれど、田舎のせせらぎもない。都会ではないけれど、田舎でもない。
なんというか、全体的に古いのだ。どこか時代が止まっているみたいで、なんだか懐かしい匂いがする街なのだ。
駄菓子屋には、未だに錆びたタバコの看板なんかがあって、家の周りは、ブロックとかではなく、木の垣根で区切ってある。
先
売れない先生と私の話 2話
今日の私はというと、先生の完成した原稿をチェックしに来たわけで、きちっと仕事モードである。前回のようにダラダラと過ごす訳にはいかないのだが。
予想外も日常で。
天気予報が外れるなどは、日常茶飯事なわけで、予報の晴れは雨に変わり、私のやる気は、憂いに変わった。今日は、少し締まらない。
ところが、ご機嫌斜めな私と打って変わって、今日の先生はというと、少し機嫌がいい。雨は好きなんだとか
売れない先生と私の話 一話
青々と伸びた緑のカーテンから、暖かな光がもれる。窓から吹く風は、カラッとしてて、少し早い夏の香りがする。静かな部屋には、ただ、万年筆が走る音が響いている。カリカリ、っと子気味いい。
机に向かう彼は、実に楽しそうに筆を走らせる。目を隠すほどに伸びた前髪のせいで、あまり表情はわからないのだけれど、雰囲気だけは、とても伝わってくる。
彼の名前は、紙白 岫(かみしろ みさき)。本名なのかは、