かおすのどこが「いい子」なのか?|『こみっくがーるず』(9)
本記事は、アニメ「こみっくがーるず」を徹底分析する特集の……第9回である★
第1回からご覧になることをオススメします!
今回のテーマは……!
ここまで、かおすの「オッサンオタク」なところ(第2回、第3回)、「かおすは、いまも両親や祖父母の強い影響下にある」という特徴(第4回)、「対人恐怖」を抱えており、「コミュニケーション・スキルが低い」という特徴(第5回、第6回)、「自己評価の低さ」(第7回)、そして「自虐風オーバーリアクション」(第8回)について詳述してきた。
今回は……かおすがじつに「いい子」であることをご説明しよう!
かおすの「いい子要素」を明らかにしよう!
かおすはいい子だ。
じつにいい子だ。
「こみっくがーるず」の視聴者の大半は、かおすに好感を抱いたはずだ。
……で、その「いい子」というのは、具体的にはどのような意味だろうか?
考えてみれば……私たちが「彼女はいい子だ」と言う時、そこには複数の要素が混在している。
つまり、「彼女は優しい」とか「彼女は気立てがいい」とか、そういった具体的要素をいくつもひっくるめて「いい子」と称しているのだ。
本記事では、この具体的要素を明らかにしていく。
すなわち、私たちはかおすのどのようなところから「いい子」だと感じているのか?
以下、特に重要だと思われる5つの要素をご紹介しよう。
【いい子要素①】人の気持ちに寄り添うことができる
さて、クイズである。
あなたは以下の、某マンガに登場するセリフをご存知だろうか?
「あの青年は人のしあわせを願い、人の不幸を悲しむことのできる人だ。それが一番人間にとってだいじなことなんだからね」
ヒント1、「ドラえもん」。
ヒント2、コミックス25巻収録のエピソード「のび太の結婚前夜」に登場する。
……おわかりになっただろうか?
これは、しずかの父が、のび太と結婚する直前のしずかに贈った言葉だ。
つまり、「あの青年」はのび太を指す。
みなさんご存知の通り、のび太は世界で最もポンコツな小学生だ。
しかし!
彼は、「人のしあわせを願い、人の不幸を悲しむこと」ができる素晴らしい人間だ。
……そしてこれは、そのままかおすにも当てはまることだと思うのだ。
そう!
かおすは、「人のしあわせを願い、人の不幸を悲しむこと」ができる人間だ……ポンコツだけど。
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例えば……かおすは小夢らを応援し、彼女らが躍進した時には心から祝福している。
かおすのマンガ家としてのスキルは、小夢らと比べて遥かに未熟だ。
当然、彼女らの躍進に焦りを感じている。
しかし、だからといって嫉妬することはない。「素直に喜べない……」なんてこともない。
そこが、かおすの素晴らしいところだ!
【いい子要素②】人に感謝できる
かおすは、率直に感謝の言葉を口にできる子だ。
例えば、担当編集者の編沢に対して、こんなメッセを送っている(第8話)。
「いつも酷いネームを最後まで読んで下さりありがとうございます。来週までにもっと良いネームを送りますので…」
「がんばります!」
何度も何度もボツを食らうかおす。その一方で小夢らは前へ進んでいく。
当然、かおすは強い焦りを感じる……。
しかし、そんな時にも「ありがとうございます」と言えるのがかおすのすごいところだ。
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ちなみに……かおすが謝意を表する相手は人間だけではない。
彼女は神にも感謝を述べている。
例えば初詣(第10話)。
かおすら4人は目をつむり、手を合わせて願い事をする。
この時、かおすだけは「神様。昨年中は大変お世話になりました。おかげさまで友だちができ、毎日幸せを噛みしめております。たくさんいい思いをさせていただいたのに、マンガではまったく結果を出すことができず、深く反省をしております。今年はなお一層の精進を……」と延々と感謝の言葉を述べている。
そして謝辞が長すぎて願い事をする時間がなくなってしまうのだが……なんてかおすらしいエピソードだろう!
※右下:4人揃って手を合わせる。
ちなみに、かおすが神に感謝するエピソードは作中3回登場する(上述の初詣以外に、第3話と第12話)。
日常を舞台にしたきらら系の作品で、主人公が3回も「神様ありがとうございます!」「神に感謝です」と述べるのはなかなか珍しいのではないだろうか。
【いい子要素③】ど根性の持ち主
かおすは、マンガ家として非常に未熟だ。
しかし、ど根性を持っている。
例えば、担当編集者の編沢は、かおすを以下のように評する(第8話)。
「毎回ボツ食らうたびに目に涙いっぱい浮かべて、死にそうなくらい震えて……それでも何日かしたらプルプルしながら、また次のネームを持ってくるんです……」
「これはすごいことですよ!わかりますか!?」
「アンケビリで、応援してくれるファン1人もいなくて……それでも次回作、描こうと思えますか、普通!?」
「かおす先生は……本当は強い子なんです……」
かおすは何度ボツを食らっても立ち上がり、繰り返し挑戦する。
まさにど根性の持ち主である。
※かおすと、担当編集者・編沢の打ち合わせ風景。今日もボツ。
【いい子要素④】素直
かおすは素直である。
特に顕著なのはマンガに対する態度で、彼女は何か刺激を受けるたびに「私も頑張ろう!」「やる気が出てきた!」と奮起する。
例えば小夢らと画材屋に行った日、帰りの電車の中で……(第2話)。
かおすのモノローグ「楽しかったなぁ、画材屋さん。それに、なんだかいろいろ頑張ろうって……」
※電車の中で決意を新たにするかおす。いつになく引き締まった表情にご注目。
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あるいは、入寮してから少し経った頃(第3話)。
かおすと、担当編集者・編沢との会話を見てみよう。
編沢「かおす先生、寮には慣れたみたいですね」
かおす「はい!初めて知ることとか経験することがいっぱいで、面白いマンガがたくさん描けそうな気がするんです!」
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さらに、小夢らとクレープを食べた後のこと(第3話)。
これまで田舎の実家に引きこもっていたかおすはクレープを食べたことがなかったようで、その華やかな見た目や味わいに大興奮!
直後にクレープをモチーフにしたマンガを描き、担当編集者の編沢に提出する。
かおす「この間、クッ、クッ……クレープというものを初めて食したんですが、とても素晴らしくて!これを漫画にしたらどうだろうと!」
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だが、この素直さが仇となることもある。
例えば第3話では、食事もせずにマンガを描き続けた結果、体調を崩して寝込んでしまう。
これは、小夢ら3人の活躍から刺激を受け、「私も頑張らねば、頑張らねば……」と自身にプレッシャーをかけすぎたためだ。
上述の通り、かおすはど根性の持ち主である。
そんな彼女が、自分よりも優れたマンガ家たちに囲まれ、日々刺激を受けているのだ。
そりゃオーバーヒートすることもあるだろう。
「小夢は小夢、私は私」と割り切ってしまえば楽になれるのだろうが、かおすにそんな器用なことはできない。
素直な……というか、素直すぎるかおすは、真っ正面から「私も頑張らなきゃ!」と刺激を受け、結局オーバーヒートしてしまうのだ。
【いい子要素⑤】謙虚
かおすは謙虚だ。
はて。
「謙虚」とは何か?
かおすにとっての「謙虚」とは、「自虐風オーバーリアクション」のことだ(詳しくは第8回)。
これが単なる「自虐」なら、「グダグダと泣き言を並べやがって!まったく陰気なヤツだ!」と視聴者を不愉快にさせかねない。
しかしかおすの場合は、「自虐」を独自のセンスで味付けし、「自虐風オーバーリアクション」という一種の「芸」にまで昇華している。
だから不快感はない。
それどころか、笑えるし、「謙虚なヤツだ」と高評価につながるのだ。
まとめ
ここまでの議論をまとめよう。
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(担当:三葉)