yuzu

私のために文章を書いています

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マガジン

  • Noto Note

    NotoNoteは、2024年1月1日以後の能登半島と東京に住む「私」についての文章です。 地震に関する生々しい写真や表現は避けるようにしていますが、不安な方は「今なら大丈夫」と思える時を待ってからお読みください。

  • 〈知らない場〉に行ってみたレポート

    毎月どこかで〈よそ者〉になる。 2023年、月に1回〈知らない場〉に行ってみるというミッションを課していました。そこで出会ったものや感じたことを、ばらばらと書いています。

最近の記事

  • 固定された記事

声を聴く場をはじめます

「在野研究所 キキセン」というものを始めようと思います。 たくさん人が集まらなくていいから、細く、長く、じっくり続けたいと思っています。 少し長くなりますが、まずはわたしの気持ちと、葛藤と、今やろうとしていることを聴いてもらえたら嬉しいです。 キキセンのことも知ってもらえたら、とても嬉しいです。 わたしの真ん中のこと誰かがたった1人で苦しんでいる — あるいは苦しんだかもしれないと思うと、たまらなく悲しい。 もしそういう人がいるなら、1人でも多く見つけ出して、わたしがその

    • 主義と主義のあわい

      わたしが2回くしゃみをしたら、返事をするように誰かのくしゃみが聞こえた。 今日は、「あたたかい梨ジュース」というのを注文してみた。コハク色のそれは、白い湯気を出しながらつやつや光っている。 この時期は、まだ5時にもなっていないのにあたりが暗い。 最近は、また、本を読んでいる。 家がない人たちと、その人たちのもとに通いつめる女性の話を読んだ。 タイトルには「フェミニズム」という言葉が入っていたけれど、最後までそれがなんなのか、あまり分からなかった。自分が分かっているかどうか

      • NotoNote #4|輪島

        穴水から輪島へ向かう道のりは、山がちだ。 たまに、木がばらばらと、マッチ棒みたいに斜面をなだれ落ちていた。赤い山肌が、むき出しになっている。 近くには、黒い家たち。がけ崩れの下敷きになった人はいなかっただろうか。 山が開け、街に入っていく。人の気配は少ない。 車の窓から見える様子が、これまでと違う。 ばらばらで、ぐしゃぐしゃ。1階が2階におしつぶされてぺしゃんこになって、結果的に1階建ての家みたいになっていたり。 車を停める。 輪島の朝市があった場所を目指して、西陽の

        • NotoNote #3|穴水

          青信号を直進すると、小さな町があらわれた。 家。家だったはずの瓦礫。家。家。瓦礫 工事のお兄さんたちが立っている。「図書室」と書かれた建物は少しだけとびらが開いていて、中に人かげが見えた。道の駅に車を停めると、むかいには「復興のきざしcafe」と書かれた看板。 あまりにぐちゃぐちゃのところもあるけれど、小さく人人の暮らしが息づいているのだと分かった。 道の駅に入ると、3人の店員さん。栄養がありそうなお弁当や、能登のおみやげなんかが売られていた。 店員さんの1人に「こ

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        • Noto Note
          4本
        • 〈知らない場〉に行ってみたレポート
          13本

        記事

          NotoNote #2|金沢から七尾へ、そして穴水

          金沢から七尾へ七尾線に乗る。 車窓を、たくさんの家が流れていく。 このあたりは、黒い瓦屋根に黒い木材でつくられた家が多い。能登の伝統的な家屋なのだろうか。 私は、黒い家家をとても美しいと思う。 ところどころに、ブルーシート。 明らかに風景から浮いていて、緊急で手当てしたものなのだとすぐに分かる。鮮やかな青の裏に隠されたものを想像する。 見ているだけで、少し痛い。目を離せない。 私は、かさぶたが苦手だ。絆創膏をはがすとき、体が強ばる。 かさぶたは、自分を構成する小さなもの

          NotoNote #2|金沢から七尾へ、そして穴水

          NotoNote #1|かほく

          2024年7月 はじめて、かほく市に行った。名前しか知らなかった「かほく」。 昔ながらの瓦屋根と新しいまつげサロンが混じった町。 途中で見つけたちょっと立派なお寺には、御神輿やししまいの頭があった。 細い下り坂の先に見える、静かな海。 カレー屋さん。高速道路と思しき鉄のかたまりと車の列。その大きな通りを横切った先の静けさ。住宅街。 突然あらわれる、おしゃれなカレー屋さん。 その道をずっと進んだ先には、小さな砂漠があった。表面がなめらか。あの砂の山は、なにに使うんだろう?

          NotoNote #1|かほく

          北海道余市町をたずねて

          自分にゆかりのある土地を、もっと知らなきゃけないんじゃないか いつからか、そう思うようになっていた。 世界中には、誰かが生きた証が無数に残されている。意識的に残したものも、そうじゃないものも、数多の証が埋まっている。 そこで1人の人間(あるいは人間たち)が生きていたという証はなんだって尊く、大切にしたい。しかし世界中すべての土地をまわって、人びとが生きた証を認めていくのは不可能だ。とても残念だけど命が足りない。 それならせめて、私とつながっている土地のことは、私がきち

          北海道余市町をたずねて

          月かげ

          夜が  あなたを変えてしまう 夜が  わたしを変えてしまう 暗闇に 染みわたる 心の にごり 月が 見つけてくれたなら やさしく 見つめてくれたなら きっと すこし 正気に戻る 月のない夜は 早く眠ろう 私たちは 理性を信じすぎた

          彼女とあいぼう

          5月のよく晴れた日 大きな影と、小さな影が2つ、緑のトンネルをのぼってきます。 
かに山で遊んだ帰りでしょうか。 「あれ、ねえ、ぱぱ。声がするよ」
 「本当だ。木から降りられなくなったんだね」 大きな影がまわりの竹を伝い、するすると木を登っていきます。 あっという間に声がするところへ辿り着き、声の主を助けてあげました。 小さな影たちは、思いがけない素敵な出会いにたいそう喜びました。 大きな方の小さな影は、10歳の少女でした。 彼女はいつか、魔女になりたいと思ってい

          彼女とあいぼう

          2023.12|いちばん思いがけない〈場〉

          12月 〈東京ドキュメンタリー映画祭〉の2日目、《戦争の「声なき声」》に行ってみた。 12個の中で、いちばん思いがけない〈場〉だった。 新宿の東口から5分ほど歩いたところに、ケイズシネマというミニシアターがある。ここでは毎年12月に〈東京ドキュメンタリー映画祭〉が開かれる。 約2週間にわたって、短編・長編さまざまな映画が上映される。 社会やそこで生きる人びとに目をこらし、丁寧に描き上げる作品ばかりで、どれを見ようか迷ってしまう。 迷ったあげく、私は2日目の《戦争の「声

          2023.12|いちばん思いがけない〈場〉

          2023.11|いちばん馴染んだ〈場〉

          クラフトビレッジ西小山で開催されたトークセッション〈双葉郡との関係の結び方〉に行ってみた。 12個の中で、この1年を通していちばん私に馴染んだ〈場〉だった。 いや、企画のテーマを踏まえるなら、「馴染んでしまった〈場〉」と言えるかもしれない。 〈双葉郡との関係の結び方〉は、3月の〈しゅたいって?〉と同じ場所で開催され、同じ方が主催していた。 3月と同じように、カレーも食べられた。 ただ内容は以前と異なり、主催者の方が長らく関わってきた双葉郡についてのものだった。 葛尾村の

          2023.11|いちばん馴染んだ〈場〉

          2023.10|いちばん物語りたくなる〈場〉

          10月 下北沢の書店B&Bで開催された、トークイベント〈本の扉をあけて 山下紘加と語る読書の喜び〉に行ってみた。 12個の中で、いちばん物語りたくなる〈場〉だった。 ともだちってなんだろうともだちに嫉妬することって、ありますか? ともだちに依存しているな、と思ったことは? 今回のイベントには、小説家の山下紘加さんが登壇されていた。山下さんが、新刊『煩悩』を発刊したのがきっかけのようだった。 『煩悩』は、山下さん自身と中学時代のともだちとの関係をもとに書いた小説なんだ

          2023.10|いちばん物語りたくなる〈場〉

          2023.9|いちばん大学に近い〈場〉

          9月 代官山T-SITEで、『言語の本質』の出版を記念して開催されたトークイベント〈言語の本質を探す旅〉に行ってみた。 12個の中で、いちばん4年間の大学の学びに近い〈場〉だった。 『言語の本質』は、2023年5月に中公新書から出版されたばかりの本である。著者は、認知科学や発達心理学を専門とする今井むつみさんと、認知・真理言語学を専門とする秋田喜美さん。 トークセッションではこの2名に千葉雅也さんが加わり、千葉さんが著者のおふたりにいろいろな問いかけをするかたちで進んで

          2023.9|いちばん大学に近い〈場〉

          2023.8|いちばん勇気を出した〈場〉

          8月 沖縄県立芸術大学で開催された、リサーチ型プロジェクト〈message in a bottle〉に行ってみた。 12個の中で、いちばん勇気を出した〈場〉だった。 〈message in a bottle〉は、島/沖縄にクローズアップした多角的なリサーチをし、それに基づく展示を制作するプログラムである。 主催者は沖縄県立芸術大学の阪田清子先生で、2名の講師を招いてそれぞれのプログラムを開講するかたちだった。 2名の講師は、アーティストの儀間朝龍さんと瀬尾夏美さん。

          2023.8|いちばん勇気を出した〈場〉

          2023.7|いちばん影響を受けた〈場〉

          7月 一般社団法人NOOKの拠点 Studio04で行われた、アートプロジェクト〈とある窓〉の顔合わせに行ってみた。 12個の中で、今年の私がいちばん影響を受けた〈場〉だった。 NOOK(のおく)は、東日本大震災以降、仙台を拠点として災禍にまつわる記録を続けてきた団体である。 また、記録をもとに表現したり、ワークショップを開催したりしている。 そして2022年に東京の大島に拠点をうつし、新たなアートプロジェクト「カロクリサイクル」を始めた。 〈とある窓〉も「カロクリサイ

          2023.7|いちばん影響を受けた〈場〉

          2023. 6月|いちばんカオスな〈場〉

          6月 六本木ヒルズ森タワーで開催された、地方移住をサポートするイベント〈ツナゲナイト〉に行ってみた。 12個の中で、(私が移住希望者ではなかったために)いちばんカオスな〈場〉だった。 〈ツナゲナイト〉は、地方移住を支援する雑誌・Webメディア「複住(ふくじゅう)スタイル」が、地方のリアルな魅力の発信や人びとをつなげることを目的に始めたイベントである。 幅広いライフスタイルの選択肢を知りたい人や、ローカルな暮らしに関心がある都内在住者をターゲットに、地域への移住・多拠点生

          2023. 6月|いちばんカオスな〈場〉