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主義と主義のあわい
わたしが2回くしゃみをしたら、返事をするように誰かのくしゃみが聞こえた。
今日は、「あたたかい梨ジュース」というのを注文してみた。コハク色のそれは、白い湯気を出しながらつやつや光っている。
この時期は、まだ5時にもなっていないのにあたりが暗い。
最近は、また、本を読んでいる。
家がない人たちと、その人たちのもとに通いつめる女性の話を読んだ。
タイトルには「フェミニズム」という言葉が入っていたけれど、最後までそれがなんなのか、あまり分からなかった。自分が分かっているかどうかが分からなかった。
それでも、そんな本を読んだのだと人に伝える機会があった。その人は、つぶやいた。
「どうしてそんなことをするんだろうと思ってしまうようなひどい人もいる中で、ホームレスやフェミニズムについての本を日常的に読んでいる人もいる。そのことになんというか……救われます」
わたしは、自分がよく分からない
フェミニズムについてなにを思うか
自分がフェミニストなのか
わからない
それでも本を読んでいて引き出される
気分のよくない、苦い記憶があって
それが誰かのせいなのか
自分にとってのなんなのか
わからない
梨ジュースの湯気ををずっと見ていられる自分と
あの人を少し救うことができた自分が
同じ1人の中で一緒に生きていることが
わからない
貧しくも生き抜いた、かつての開拓移民を知る。生活の知恵や力強さに魅了され、鳥肌が立つ。
その開拓移民たちによって、ながく続いた生活を変えなければならなかった人びとを知る。どれほど奴らを恨んだか。恨んだとしても、圧倒的な力の差を前にしたらどうしようもないこと。
あの人は、自分を捨てた母親を憎んだ。
その母親もまた、苦しい貧しい生活の中でなんとか踏ん張っていた。
昔話に出てくる鬼は、本当に村を荒らしたかったのか。荒らすつもりがあったとして、それはなぜだろう。
鬼とは一体、誰のことだろう。
大きな国が、南の島で核実験をした。
南の島の人たちは、被ばくした。
大きな国の軍人たちも、被ばくした。
軍人たちは、適切に治療を受け、早々に回復して職務に戻る。それはよかった、ひと安心だ。家族はさぞ心配しただろう。
南の島の人たちは、治療を受けられない。回復が遅く、苦しみは続く。
軍人の回復をよろこぶ気持ちと、命の重さに差をつけることを非難する気持ち。わたしの中に、ただ2つある。
あなたを大嫌いなわたしと、あなたを幸せにすると誓うわたし。
わたしの中に、ふたりいる。