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#410 チームのキャパシティビルディングには、とにかく実践の場数を増やすしかない
いかがお過ごしでしょうか。林でございます。
先日、メンタルタフネスの高いチームを作るために、マネジメント視点で理解しておくべきこととして、発生した問題に対するメンバーの捉え方はかなり差が出るので、とにかく打ち合わせとかではない場で、日々のフラットなコミュニケーションの頻度を上げて、何にストレスを感じているのかを把握することが大切という話をしました。また、問題に対するストレスレベルは、個人の性格というよりむしろ、問題に対する対処の選択肢をイメージできるかどうか。イメージできないと脳がフリーズしてしまうので、普段から選択肢を持たせるための働きかけを意識的に取り組んでいることをご紹介しました。
今日は、こちらのチャプター4を聞いて、また違った視点で、チームとしていかにキャパシティビルディングしていくか、という点で気付きがあったので、自分の経験とも照らし合わせながら、改めて意識していきたいことをまとめます。
模擬的ではダメ、とにかく実践の場に立たせる
まず、自身の経験からも本当に重要だと感じたのが、「超実践的なアプローチ」を通じて、いざ追い込まれた時に集中力を発揮できる状態にしておくことです。
私はこの話を聞いた時に、「いつからお客さんとのコミュニケーションの場に新人を立たせるか」というテーマを思い出しました。
私は、新入社員として入社してから数年、メンタル面では非常に軟弱だったと振り返っています。その要因の一つが「自分が小さくても何かの事案の責任者として、お客さんと対峙すること」の経験が圧倒的に不足していたからです。
私が新入社員で配属されたプロジェクトは、当時社内でも注目されていたいわゆる「炎上プロジェクト」で、お客さんとの関係性も決して良いとは言えず、開発委託先との関係性もお互い信頼関係を全く築けていない状態でした。
とにかく失敗が許されない空気がすごくて、特にお客さんとの打ち合わせでは、曖昧なこと一つも言えず、下手に言葉を発したら後で「余計なこと言うな」と上司からお叱りを受けるような環境でした。
そのため、自分の言葉でお客さんに何かを説明する場を持てたのは、確か入社して4年目くらいになってからでした。1〜3年目の時は、社内では事業部門トップの人に向けて説明の場を持つことはあれど、とにかく客先に出る機会が圧倒的に不足しており、お客さんは何を考えているのか、客先ではどのような振る舞いをすべきなのか、全く分かっていませんでした。
さらには、自分と年齢の近い先輩が数人いて、自分は何重にも重なった防波堤の奥に存在しているような感じでした。
だから何かトラブルがあっても、まずは先輩Aが対処して、先輩Aがいない、あるいは別件対応などでどうしても対応できない時に先輩B、先輩Bがダメなら先輩C、先輩Cもダメならようやく自分、といった感じだったので、まぁ自分がトラブル対応に当事者として直面する機会なんてほぼありませんでした。
このように、実際にトラブル対応の矢面に立つとか、お客さんへの説明責任を自分が果たす、みたいな場の「困難な状況に向き合う場数」がないと、いつまで経っても成長しないんですね。
私は、そのプロジェクトの後に東南アジアの仕事に異動となるのですが、能力値が高まっていった実感があるのも、そこからです。
「修羅場を潜る回数」が人の成長を決める
東南アジアの仕事を担当する部署の異動先面談で、はじめに私が上司に希望したのは「お客さん対応を中心に対応させて欲しい」ということでした。
それまでのプロジェクトでお客さんの存在がかなり遠く感じていたことと、やはりお客さんあってのビジネスなので、お客さんと相対する場面にこそ成長の機会があると考えていたからです。それまで、お客さん向けの説明対応などを持たずに過ごした自分に対する引け目のようなものも感じていたのも理由です。
異動先で出会った上司が、私の記事でも何度か登場している社内でも有名な超厳しい上司だったわけですが、異動してから1週間後に早速東南アジアの現地に赴いて、自分でシステム仕様を説明する機会が与えられました。
異動先で担当しているシステムは、それまでの自分が担当していたシステムとは全く別の領域のものだったため、仕様は1から勉強し直しです。しかも、それまでは国内のプロジェクトを担当していたので、英語を話す機会なんて全くありませんでしたが、設計書も資料も全て英語。先方も東南アジア現地の人なので、コミュニケーションも全て英語です。
「あぁ早速修羅場が来た」と思いました。1週間で100枚以上の英語の設計書を読み解き、仕様を自分で理解して、まだ見ぬお客さんに対してどういう順番で何を見せながら説明するのが良いか、必死で考えました。
新規のプロジェクトが立ち上がったばかりの状況で、誰も仕様のフォローをしてくれる人なんていませんから、自分が聞かれたことに答えられないと、お客さんとの信頼関係の構築も失敗します。終電まで仕事をして、家に帰りながらも関連する本を読みました。出張での行きのフライトでも一息つける暇はなく、必死で説明する資料を読み込んで、内容の理解に努めました。
その後も、異動して2ヶ月以内で計4回ほど出張してお客さん説明の場があり、朝の9時半ごろから夕方17時ごろまで、1日中お客さんに英語でシステムの仕様を説明し、先方からの質問にない知識を振り絞って答えるということを繰り返しました。
中途半端な回答をすると横にいる上司から叱られますし、1日中英語で真剣勝負のやり取りをするので、夕方打ち合わせが終わった頃にはグッタリでした。
心理的負荷が高い状況が続きましたが、自分のシステム仕様に対する知識も圧倒的にこの期間に身につけて、お客さんとの強い信頼関係が構築できた期間でした。明らかに「修羅場を潜りまくった場数」により、早期に異動先の部署で立ち上がることができました。
今振り返ると、上司の度量がすごかった
入社してはじめに配属されたプロジェクトと、東南アジアのプロジェクトの違いは、もちろん当時の背景・状況の違いはあれど、マネジメントの度量の違いが指摘できます。
「経験が未熟な若手の客先デビューはまだ早い」と、いつまでも自分が自身が矢面に立つ場数の経験を持てないと、成長の機会が阻害されていることになります。
さすがにいきなり大問題の事態の収拾にあたれというのはハードルが高いですが、そのようなレベルではない小規模の案件でさえ、「若手にはまだ早い」で引っ込めたままでは、チームのキャパシティも上がりません。
このような原体験があるので、私のチームメンバーには、1年目であろうとお客さん先の説明の機会を積極的に作っています。メンバーが同期と話すと「もうお客さん先に言ってるの?」と驚かれることも少なくないようです。
もちろん上手くいかないこともあるし、メンバーは「緊張でなかなか寝付けませんでした」と話すこともありますが、致命的なものでないのであればむしろ失敗をしたほうがいいのです。
「自分が担当している仕事を自分の言葉で話す」くらいの負荷には耐えられないと、とても問題発生時にやり抜くチームキャパシティは得られません。
マネジメントとしても、何かあればお客さんからお叱りを受けるかもしれないし、予期せぬトラブルに繋がるかもしれないから、新人に任せることには抵抗があるのは理解できますが、それでもその覚悟はしないとメンバーは育ちません。
問われているのは、マネージャー側の覚悟です。
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