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短編文学的エッセイ 【Sea of Junk、ガラクタの海にて】

世の中には、無数のものがあふれている。そして、そのほとんどは「ガラクタ」だ。少し厳しい言い方だが、それが現実だ。スタージョンの法則、つまり「9割はガラクタである」という考え方に出会ったとき、僕は一瞬で腑に落ちた。なぜなら、この法則は現代社会で生きるうえで非常に役立つ指針となるからだ。

膨大な情報や作品が溢れる現代では、すべてを追いかけるのは不可能だし、無駄でもある。だからこそ、この9割を切り捨て、1割の本当に価値あるものに集中することが大切だ。この考えに基づけば、たとえ他人が絶賛する作品でも、自分にとってピンと来ないなら、それは「ガラクタ」として切り捨てることができる。それに対して、何も後悔する必要はないのだ。この法則を知ってから、僕の生き方はずいぶんと楽になった。

僕自身、この法則を日常生活に取り入れている。本を読むときは数ページだけ試し、惹かれなければ読み進めない。映画も30分間観て興味が湧かなければ途中でやめる。音楽もイントロだけ聴いてピンとこなければ、次の曲にスキップする。こうやって自分にとっての「10パーセント」を探し、限られた時間とエネルギーを本当に大切にするものに注ぎ込むのだ。また、自分の感覚を信じ、合わないものは合わないと認めることが、ストレスを減らすためにも重要なのだ。

しかし、このエッセイを書くにあたり、もう少し考えてみると、9割を「ガラクタ」と簡単に切り捨てることには注意が必要かもしれない。ガラクタの中にも、ほんのわずかな光が隠れている場合があるからだ。何かを早急に見限ることで、その中に潜んでいる可能性を見逃す危険性もある。たとえば、初めて聴いた音楽が一見退屈でも、何度か聴くうちにその魅力に気づくことがある。また、ある時期には合わなかった作品が、後になって心に響くようになることもある。つまり、私たちの判断や価値観は時とともに変わりうるということだ。

スタージョンの法則が持つ真理は強力だが、それに頼りすぎると、逆に世界を狭める危険性も孕んでいる。僕たちは、ガラクタに見えるものにも目を向け、それが本当に価値がないのかを考える柔軟さを持つべきだろう。たとえば、すぐには魅力が伝わらないアートや音楽、あるいは複雑で理解しにくい小説でも、時間をかけて味わうことで深い感動が得られることがあるかもしれない。だから、何かを切り捨てる際には慎重であるべきだ。

それでも、現代社会では、圧倒的な情報量と向き合わざるを得ない。限られた時間とエネルギーの中で、どこに集中するかは大きな課題だ。だからこそ、僕たちは自分の感覚を信じて、重要なものとそうでないものを見極めるスキルを磨いていく必要がある。そのスキルを持ちながらも、あまりにも早く結論を出さず、時にはガラクタの中から宝石を見つける柔軟性も忘れてはいけない。

結局、スタージョンの法則は、単なる「9割はガラクタ」という冷たい現実を教えるだけでなく、その中から自分にとって何が本当に価値があるかを見つけ出すためのフィルターとして活用すべきなのだ。自分に合わないものを切り捨てつつ、同時に新たな発見の可能性も残しておく。そうすることで、より豊かな人生を送ることができるだろう。

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