見出し画像

短編文学的エッセイ 【チロルチョコ、余白の甘さ】

君の家に泊まった朝、僕は仕事に出かける準備をしていた。そのとき、君が6個のチロルチョコを持たせてくれた。普段、僕はあまりこういったお菓子を口にしないし、実際にその時食べるかどうかも分からなかった。しかし、可愛らしいハロウィンの装いをしたその小さなチョコレートたちに、思わず微笑んだ。

「行ってきます」「行ってらっしゃい」

交わした言葉は、まるでこの日常を優しく包み込んでいるかのようだった。電車に揺られながら、いつも通りの職場へ向かう。曇り空が心に影を落とし、何か重たいものを感じていた。

夕方の休憩が訪れ、身体が少し疲れているのを実感した。連勤の影響かもしれない。いつものようにファミリーマートに足を運び、ホットコーヒーのSサイズを注文する。習慣は、心の安定剤のように僕を支えてくれる。

休憩室で一息つくと、ふと思った。「何かお菓子でも買えば良かったな」と。その瞬間、君のチロルチョコが頭に浮かんだ。カバンの中で静かに待っている彼らを想像すると、小さな幸運が訪れたような気持ちになり、まるで君がこの瞬間を見越していたかのように感じた。

感謝の気持ちを胸に、チョコを取り出す。小さなパッケージを開けると、甘い香りが広がり、目の前に現れたのは単なるお菓子ではなく、君の愛情が詰まった一口だった。一口運ぶと、しっとりとしたチョコレートとクリーミーな中身が舌の上で溶け合い、疲れた体にスッと糖が染み渡っていく。君の優しさが僕のエネルギーへと変換されているようだった。

これこそが、日常の中の小さな幸せかもしれない。小さなチロルチョコを味わいながら、僕は日々の労働や生活を思い返す。君がくれたこのチョコは、単なるお菓子を超え、心を支えてくれる存在だった。その瞬間、少しだけ疲れが和らいだように感じた。

この小さな甘さの中に、君とのつながりが詰まっている。何気ない日常の中に、愛情の形を見つけることができる。それは、仕事の疲れを忘れさせてくれる瞬間でもある。チロルチョコを1個ずつ噛みしめながら、僕はその味わいに感謝し、君の存在を心に描いた。

ありがとう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?