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連載《教え子33~塾講師と生徒~淡くてほんのり苦い物語~》 休日出勤-2
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温かいものが頬に登ってきた。
たちまち胸が弾んだ。
心は宙に舞い上がるようだった。
繰り返すが、とても愛おしいと思った。
休日の校舎。
俺と彩子以外は誰もいない。
来る者もいない。
普段は賑やかなのに今は二人の心臓をドキドキ打つ音しか聞こえない。
ちょっと強めに彩子を抱き締めたら、彩子も抱き締め返してきた。
力を緩め、腕を離し、両手で彩子の頬を包んだ。
中指を
連載《教え子24~塾講師と生徒~淡くてほんのり苦い物語》「高校入試対策講座 最終日」
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毎年、この講座の最終日は身が引き締まる。
残念ながら、最下位の公立高校へ進む学力を得られなかった生徒は厳然といる。
そのような生徒には、併願した私立の過去問をやらせて、半ば個人指導的な方法を取っていく。
生徒のの顔を見ると、絶望感と諦めない気持ちは半々読み取れるものだ。
今まで手塩にかけて指導してきた生徒には何がなんでも第一志望の公立高校へ行ってほしい。
だから、授業後
連載《教え子23~塾講師と生徒~淡くてほんのり苦い物語》「彩子の考える“進学とは”を知って、『大人だな~』と感心する」
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もう中学校では、担任の先生が生徒一人ひとりの内申書を志望校へ提出する時期に入った。
俺はまだ、彩子の志望する霞ヶ丘高校は彩子の成績から相応しくないと思っていた。
俺は、前回課した宿題については、採点までやってくるように躾ている。
何故なら、お金を払って受ける授業でのんびり答え合わせなどやっていられないから。
採点して、“合ってはいたのだが、何故○だったのか”、“何故×だっ
連載《教え子22~塾講師と生徒~淡くてほんのり苦い物語》「自習」
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入試対策講習も半ばを過ぎると、そろそろ過去問を大問題別に分類したテキスト(当然自作)を配らねばならない。
というのも、生徒たちは中学校の定期テストを受けながら塾の講習に参加しているわけで、まだ教科書を全て学習していない。
だから、塾としては入試対策と言いつつも内申点に関わる定期テストを見過ごすわけにはいかないわけで、前半は内申点対策と言って良い。
学校にもよるが、内申点に関わる定期
連載《教え子21~塾講師と生徒~淡くてほんのり苦い物語》「入試対策講習」
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高校入試対策講習は、二学期中間テストが終わってすぐに始まる。
もちろん彩子は5科目とも90点台を超える結果を残した。
「玉城さん、ちょっと職員室に来てください」
塾長が彩子を呼んだ。彩子は少しだけ躊躇して俺の顔を見た。俺は(安心して)という表情で見返した。彩子は少しだけ安心した様子で中に入っていった。
「ねえ、玉城さん。あなたが受けているクラスのことなんだけどね」
「はい」
「もう