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奥深い森と濃い霧の朝に、偽カメラマン、再び
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東南アジアで一眼レフを肩から下げて歩いていると、稀にこう言われることがある
ー日本人のプロカメラマンの方でしょうか?
これまで中国やヴェトナム、セブ島(フィリピン)、そしてここインドネシアでも言われ続け、その回数は優に10回は越えているのかも知れない
そうした場合、「いいえ、違いますよ」とは、実はなかなか言えないものなのだ
相手から尋ねられた時点ですでに相手は期待に胸を膨らませ、そうした問いを投げ掛けてくる相手はほとんど100%、撮影して欲しいと、容易に思えるからだ
それがわたしにもわかりきっているからこそ
「ええ。そうですよ」と、優しい嘘をつかざるを得ない状況がうまれるのだ
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今朝は昨夜から泊まっている山の中のホテルを早朝から散歩していると、敷地内のチャペルで美しい新郎新婦に遭遇した
イスラム風のウエディングドレスが珍しく、加えて美しい女性でもあったので手摺にもたれてぼんやりと眺めていると、その新婦にこう言われた
ーもしよろしければ写真を・・・
そのはにかんだような照れた言い方にとても好感が持て、快く了承させて頂き、早朝から【撮影会】
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新郎とWAのアカウントを交換し、写真データは追って送りますと伝えると、新郎新婦が口を揃えて
ー近いうちに是非、うちに遊びにお越しください。食事でもしましょう
どうやら料理人の夫婦で、手作りの料理を振る舞ってくれるらしい
苦笑しながら、ええ。いいですねと返答し、朝食に向かうために踵を返したときに、胸が小さく痛んだ
それが仮に社交辞令だったとしても、あるいは、実際に連絡を頂戴しても、彼らの家に遊びに行くことはないだろうということが、自分自身でわかりきっているからだ