【書評】三浦しをん『エレジーは流れない』 社会人でも自分が「何者」か分からず足掻いているのに、高校生がどうしろっていうんだ。
作者買いしている方が何人かいるのですが、そのうちの1人が三浦しをんさんです。待ちに待った長編小説でした。買うっきゃないよね。
しをんさんは、キャラ造形が本当に上手で、あたかも現実の人物が掛け合ってるかのように、会話を繰り広げるのが凄いところ。
本作の主人公、穂積 怜(ほずみ れい)は高校生。同級生が、将来のことを薄々と考えているのに、何をしたら良いのかが分からない、典型的なモラトリアム期を過ごしていた。
母親の仕事を継ぐのか、はたまた大学に進むのか。
選択肢が多いのは良いことだけれど、それはそれで悩みの種。
p.251
「夢なんかひとっつもない! ただ毎日なるべく平穏に生きてきたいだけなのに、なにが将来だクソが! なんで歌とか漫画とか大人とかはすぐ夢の話すんだよ、夢も希望もないのがそんなに悪いのかー!!!」
それなのに、大人は勝手なもんだ。
「お前のことを思って……」なんて、アドバイスしたりして。
自分自身がなりたかった姿を、勝手に投影しているだけなんだろう?
高校生の話ではあるんですが、そのまま社会人の自分にも当てはまるところがあるな、と感じました。
3年は同じ仕事を続けろだの、結婚しろだの、「人にアドバイスすることしかできないんですか?」って言いたくなってしまうことがある。人は人でしょと。
社会人になってしまった私からしてみれば、「純粋に夢を追いかけるという選択肢がある」ことは羨ましい。
段々と自分の限界に気付いてしまうし、責任も出てきて、係累全てを断ち切ることは難しくなる。
私にも、自分のお店を構えたいという夢がありますが、あまり先延ばしにすると、自分じゃどうしようもない範疇になりそう。
やるべきことは多いのに、時間がない。
精一杯、毎日を生きなきゃな。
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